最初からベテランだった人はいません。

 

 

ですから、どんな医師にも「初めての手術」があります。

 

医師になりたての先生なら当たり前ですよね。最初の頃は大体、指導医の先生に「この手術やってみないか?」といわれて執刀することになります。(指導医の先生は患者さんに、「私も指導しながらその場にいますし、危険そうなら私がすぐに変わりますので、研修医にあなたの手術をさせても良いか?」と聞いて、承諾が得られた患者さんにだけ、手術することになるはずです)
 

私は医師としての経験はすでに20年を超え、現在は年間250件以上の手術を執刀していますが、それでも初めて行う術式(手術法のことです。呪術廻戦じゃないですよ(笑))が勿論あります。

 

先日はある関節鏡(関節に使う内視鏡)での手術で、今までは経験していない術式でした。

 

患者さんは私の長年の知人で、症状から、その術式がよいだろうと考えていました。私自身には執刀経験がなかったため、他の病院に紹介しようと思っていたのですが、

 

「ぜひ先生にやってほしい。自分が実験台になってもいい」とまで言ってくれたためお引き受けしたのです。

 

そこで、私は自分の先輩のなかでこの手術の経験がある先生にお願いして、当日指導に来てもらいました。もちろんそれまでの間も、教科書、医学雑誌、論文、手術ビデオなどを何度も見返して準備してきました。

 

先日の記事にも書きましたが、私は先輩から「執刀前に手術は(イメージトレーニングで)2回終わらせておけ」と言われて育ちましたので、何度もシミュレーションして当日に臨みました。

 

結果的に非常にうまく手術を終わらせることができ、患者さんの症状も改善しています。

 

私は、自分の経験のない術式の時などは必ず「この方法がよいと思うけれど、私はやったことがない」と正直にお伝えしています。そんな時は紹介になることがほとんどですが、それでも、と言われたときには必死で準備して手術するようにしております。