第七章 インフルエンザと軍隊 『海外におけるインフルエンザと軍隊』

 

地中海に展開した第2特務艦隊で少なくない感染者と死亡者を出していると思われるが資料として非常に少ないようです。 

 

 

 

 

特筆すべきはドイツと休戦協定を結んだロシアに対して1918年8月、日本はチョエコスロバキ軍救出という名目でシベリア出兵を行いました。

 

そして大正11(1922)年まで内外の批判を浴びながら兵を駐留させました。 

 

1918年10/24には早くも新聞紙上で「全戦線に悪疫流行、将卒患者1千余名に達す、例の流行性感冒の熱烈なものか」という記事を上げています。

 

矢矧以上の凄惨な状況であったかもしれません。 

 

1918年11/15には福岡第12師団の輜重兵(しちょうへい:輸送業務や輸送統制を行う兵站部門を担当する部隊)大隊長の談話として「2桁をこえる死者と3桁をこえる軍馬の死亡」を載せています。

 

戦死者よりも戦病死者が多いことを言外に漂わせています。 

 

1918年11/9には名古屋第3師団・大庭師団長の談話として「何分にも流行性感冒の多いのには困る。

 

一昨日も測図班の中尉がついに死亡した。」という記事を載せています。 

 

1918年1/22には宇都宮第14師団も「感冒患者続出し、中には肺炎を併発するものもでてきた」・「派軍の流感ますます増加せん」との報道があります。 

 

さらに1919年11/18には満州日々新聞が「シベリア軍死傷病者 我軍の損害すこぶる多大」としてシベリア出兵以来の損害を記事にしています。  

 

戦死者572名、戦傷者483名、病死者436名、患者53257名。 患者数はおそらくスペインかぜと思われます。 

 

速水先生は系統的な統計の資料がないため、記事頼りですが、野戦病院があふれていたことからも「矢矧」並かそれ以上の感染被害があったことをみごとにあぶり出しました。 

 

なお、新聞報道でこれほどの被害状況が赤裸々にされたのは、シベリア出兵が大正14(1925)年成立の治安維持法成立以前だったことと大正デモクラシーのまっただ中だったことが幸いしたようです。 

 

【=私の解説に興味をもったらぜひこの本を手にとって読んでほしい=】  

読み込めば読み込むほど現在の新型コロナ騒動は何が問題なのか我々が何をすべきなのかがわかると思います。

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 巻末には資料として軍艦「矢矧」の日誌の抜粋 【軍艦矢矧流行性感冒二関スル報告】が載っています! 

日本を襲ったスペイン・インフルエンザ「人間とウイルスの第一次世界戦争」=                             

                                速水 融 著:藤原書店

 

序章 ”忘れられた”史上最悪のインフルエンザ 第一章 スペイン・インフルエンザとウイルス       

 

第二章 インフルエンザ発生ー1918(大正7)年 春ー夏       

 

第三章 変異した新型ウイルスの襲来ー1918(大正7)年八月末以降      

 

第四章 全流行ー大正7(1918)年秋ー大正8(1919)年春      

 

第五章 後流行ー大正8(1919)年暮ー大正9(1920)年春      

 

第六章 統計の語るインフルエンザの猖獗       

 

第七章 インフルエンザと軍隊    「矢矧」事件        

最高級の資料/上陸許可後に直ちに罹患/緩慢な病勢進行と急速な感染拡大/        

 

すでに罹患していた「明石」の乗組員/マニラ到着後の安堵/        

 

死者続出の惨状/階級による差/症状に関する克明な記録/        

 

同じように襲われた他の軍艦・商船/「矢矧」の帰還/        

 

ピーク後も未感染者に活動場所を見いだすウイルス      

 

海外におけるインフルエンザと軍隊        

 

地中海派遣艦隊を襲ったインフルエンザ/シベリア派兵とインフルエンザ      

 

国内におけるインフルエンザと軍隊        

 

陸軍病院の状況/各師団の死亡者数/海軍病院の状況/新聞報道      

 

小括 

 

第八章 国内における流行の諸相     

 

第九章 外地における流行      

 

終章 総括・対策・教訓     

 

         速水 融 

 

【新型コロナウイルスデーターを読み解きましょう!】 

 

新型コロナウイルス感染 世界マップ:日本経済新聞

 

日本国内の感染者数(NHKまとめ)

 

新型コロナウイルス国内感染の状況:東洋経済

 

日本COVID-19対策ECMOnet COVID-19 重症患者状況の集計