今回は女性高血圧のリスクについてお話します。

 

 一般に女性は男性より丈夫で長生きすると考えられていますが、高血圧に関しては女性の方がよりセンシティブです。

 

 女性の高血圧の特徴は、まず治療抵抗性高血圧が多く、その結果、脳心血管病も同年代の男性と比べ多い傾向にあります。また女性では、降圧薬の副作用発現が男性の2倍多いとの報告もあります。女性は、男性に比べ高血圧の影響が強く表れると考えられ、慎重な対応が必要です。

 

 高血圧治療ガイドライン2019によると、正常血圧は120/80mmHg 未満と定義されました。120/80mmHgを超えて血圧が高くなるほど脳心血管病、慢性腎臓病などの罹患リスクおよび死亡リスクは高くなります。

 

 若い女性の高血圧では、特に二次性高血圧を考える必要があります。二次性高血圧の中でも原発性アルドステロン症、腎血管性高血圧、甲状腺機能異常などを考えて積極的な検査が必要です。もしこれらの原因疾患が見つかった場合、手術などの治療で高血圧の治癒が可能となります。

 

 妊娠に関連した高血圧は妊娠高血圧症候群と呼ばれています。160/110 mmHgを超えるような重症高血圧となれば、お母さんや赤ちゃんに大きな影響を与えることも考えられます。産科の先生や高血圧の専門家としっかり相談して対応しましょう。

 

 最後に妊娠中の高血圧のお薬についての注意があります。まず、ARB/ACEIなどのお薬は妊娠中は禁忌となります。妊娠前の女性もご注意下さい。次に妊娠中内服可能な降圧薬です。全妊娠期間で適応があるのが、メチルドパ、ラベタロール、ヒドララジンの3剤です。降圧力は弱めです。これらの薬で降圧不十分な場合、妊娠20週以降ではニフェジピンの徐放剤が使用可能となります。なお、授乳中はほとんどの薬が服用可能となっていますが、念のため主治医の先生とご相談ください。

 

 更年期以降の女性では、女性ホルモン低下により急速に血圧が上昇することがあります。40歳を過ぎましたら定期的な血圧測定をお願いします。