心不全はよく聞かれる病名ですが、どんな病気かはわかりにくいと思います。

 

 私達の心臓は24時間休みなく働き、全身に血液を送ってくれています。この心臓のポンプとしての働きが低下した状態が心不全です。ちなみに日本循環器学会では、一般の方に対する定義として「心不全とは、心臓が悪いため息切れやむくみが起こり、だんだん悪くなり、生命を縮める病気」としています。日本人の死因の中で心疾患は、悪性新生物(がん)に次いで2番目となっています。その中でも心不全は心疾患の中で最も死亡数が多い病気となっています。

 

 この心不全の患者さんが現在世界中で増加し、日本でも約120万人の患者さんがいると推計されています。また更に年間30万人以上が新たに発症しているとの報告もあり、心不全パンデミックと呼ばれています。

 

 それでは心不全となるとどのような症状がでてくるのでしょうか。まず息切れです。これは心臓から十分な血液を送り出さなくなり、酸素や栄養が不足し、また肺に水がたまりやすくなることから起こります。その他の症状として手足のむくみや体重の急激な増加、夜間の呼吸困難や咳、夜間頻尿、全身倦怠感などです。

 

 心不全は放置しますと徐々に進行しますので、予防と早期治療が重要です。高血圧や糖尿病など生活習慣病のある方は早めの対応で心不全を予防できます。また、狭心症や心筋梗塞、心臓弁膜症、不整脈など心臓疾患のある方は、適切な治療をすることにより心不全の進行を予防できます。

 

 心不全は予防も治療も可能な病気です。新しい治療薬も次々と開発されています。持病のある方などは定期的に心臓検診を受け、心不全のステージを進行させないようにしましょう。血液検査で簡単に分かるBNPというマーカーが心不全の重症度の目安になります。息切れやむくみなどの症状がありましたら、早めに内科や循環器科でご相談ください。