虫垂炎と憩室炎 | 医師国家試験対策予備校講師のブログ

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卒後15数年目の医師です。医師国家試験合格を目指す人に役立つ内容をまとめていきます。特に国試浪人生、現役生でも勉強が遅れている人の助けになるようにまとめを書いています。
一緒に勉強しながら、頑張っていきましょう。

今回は111A48です。 

 
 

正答率74%です。
合否を分けた問題です。
 
大腸憩室炎と診断させ治療法を問うている問題です。
 
 
 
ここでの要点は
 
◉ 大腸憩室炎の典型的な症状を確認しましょう。  
 
◉ 大腸憩室炎の画像をマスターしましょう。
 
ということです。 
 
 
 
 
まず大腸憩室炎の典型的な症状ですが、腹痛ですね。そして多くは発熱も伴います。
 
でも下血はありません。 
 
下血は憩室出血という別の病気です。
 
大腸憩室炎で下血は普通ありませんよ。
 
虚血性腸炎のように急に痛み出して下血するというパターンでもありません。
 
 
   
整理すると
 
⚫︎ 大腸憩室炎は腹痛と発熱があり、下血はありません。
 
 
⚫︎ 大腸憩室出血は下血だけで腹痛や発熱はありません。ただ下血だけダラダラと出るという感じです。
 
⚫︎ 虚血性腸炎は腹痛の後の下血です。
 
 
ですから現病歴だけで大体の鑑別はできます。
 
 
 
 
でも大腸憩室炎で困るのが、急性虫垂炎との鑑別です。
 
日本人の大腸憩室炎は上行結腸に起こることが多いので、その場合急性虫垂炎との鑑別が重要になるのです。
 
どちらも右側の腹痛と発熱ですから。
 
 
腹部の触診で、McBurney点を押さえてみましょう。
 
ここに圧痛があるのがもちろん虫垂炎です。
( 虫垂炎でも極初期は、漠然とした心窩部だったりします。)
 
上行結腸の憩室炎はもう少し頭側や側腹部に圧痛点があったりします。

 
注意深く触診して最強の圧痛点を探せば、” 虫垂炎にしては少し変だな “ って分かります。

 
でも上行結腸の回盲部に近い憩室炎では、虫垂と場所が近いので症状がとても似ています。
 
また、虫垂が上行結腸の横を肝臓の方まで上がっている場合もあります。
( 虫垂は盲腸の先に付いたヒゲみたいなものだから、可動性があるのです。)

 
その場合は虫垂炎でもMcBurney点より頭側に圧痛点があり、上行結腸の憩室炎かと間違います。
 
 
 
やはり最終的な鑑別にはCTによる画像診断が必要になってきます。
 
 
 
 

 
では111A48のCTです。
 
まず水平断面です。
 
 
 
患者のヘソが分かりますか?
 
お腹の正中の少し凹んでいるところです。
 
 
ヘソが写っているのでお腹の真ん中のスライスです。
 
虫垂炎にしては少し変です。上過ぎです。
 
 
虫垂炎なら腸骨( 骨盤 )が見えるような下の方のスライスです。
 
 
そしてこのCTには、上行結腸が写っています。

径も太くないですし、周りの脂肪組織も綺麗ですから正常です。
 
分かりますか?
 
ちなみに下降結腸も分かりますか?左側にある腸管です。

これも正常です。
 
 
上行結腸が写っていて、その腹側正中寄りに青で囲った炎症のある腸があります。
 
 
虫垂がこんな上までやってくることはないでしょう。
 
 
糞石があるから虫垂炎じゃないか!? と言うかもしれません。
 
 
糞石( 高吸収域 )は、憩室炎でも虫垂炎でも認めることがありますよ。
 
虫垂炎では虫垂の根元に糞石がはまり込んで発症することが多いですし、憩室にはまり込んでも炎症を起こします。
 
 
これがもし虫垂の根部にはまり込んだ糞石ならこの腸は盲腸になります。
 
盲腸がここにあることは絶対ないですよね。
 
 
 
次に冠状断です。

 
 
 
場所は肝彎曲部分の横行結腸あたりです。
 
 
やっぱり虫垂の位置としてはおかしいです。
 
 
この図にMcBurney点を書きました。
 

実際の炎症のある場所は随分頭側で、McBurney点から離れてますね。
 


こう考えると、横行結腸の憩室炎が正しいですね。

そうすると治療法は

抗菌薬の投与です。


憩室炎で手術適応になるのは、

穿孔/穿通といった穴が開いたり、周囲に膿瘍を作った場合です。

 
 
 
このように理詰めで言われても、虫垂炎に思えたのだから仕方ないという人のために画像を集めてみました。
 
 
 
 
 
虫垂炎の画像です。
 
国試の過去問より 107A44です。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
虫垂の根部に糞石があります。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 研修医になれば、“ 虫垂炎疑い ” をちょくちょく見ます。

虫垂をCTで同定するポイントは

①上行結腸を回盲部の方に追っていき

②回腸末端が分岐したところのすぐ下( 尾側 )から虫垂が始まります。

③虫垂はもちろん盲端なので、ほかの腸管に連続しないことを確認します。


こうやって虫垂を同定します。

そして糞石の有無や、虫垂の腫大、周囲の炎症所見を探します。





以上です。