血友病 まずは先天性 | 医師国家試験対策予備校講師のブログ

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卒後15数年目の医師です。医師国家試験合格を目指す人に役立つ内容をまとめていきます。特に国試浪人生、現役生でも勉強が遅れている人の助けになるようにまとめを書いています。
一緒に勉強しながら、頑張っていきましょう。

血友病のついて

 
 
血友病と言えば、先天性血友病です。
 
 
先天性血友病には血友病Aと血友病Bがあります。
 
それぞれ、第Ⅷ因子と第Ⅸ因子の活性が低下しています。
 
頻度的には血友病Aが多く、5:1です。
 
 
 
 
◼️ 遺伝形式
 
伴性劣性遺伝なので、男子にのみ発症し、
 
その母親は保因者です。
 
基本的に母親は無症状です。
 
 
 
 
 
◼️ 症状
 
血友病の症状は、もちろん出血傾向です。
 
血友病AとBに症状の差はありません。
 
 
 
凝固異常と言えば、
 
体の深い所の出血  深部出血ですね。
 
 
関節内出血  頭蓋内出血  筋肉内出血です。
 
 
皮下出血も起こります。
 
( ちなみに、皮膚の “ 点状出血 ” や “ 紫斑 ” は、血小板異常です。 )
 
 
幼児期以降、運動が活発になるため
 
この様な出血を起こしやすくなります。
 
そして、これを契機に病院を受診して血友病と診断されます。
 
 
 
関節内出血では
 
膝や肘関節に痛みや、腫脹、熱感などが出現します。
 
繰り返し関節内出血を起こすと、関節を破壊します。
 
患者のADLの低下の原因となります。
 
 
頭蓋内出血は、幼児では嘔吐や元気がないと言った症状のため、診断が難しいですが、
 
対応が遅れると死に繋がる場合もあります。
 
 
 
 
 
◼️ 検査
 
第Ⅷ因子 第Ⅸ因子は内因系です。
 
 ですからAPTTが延長です。
 
PTは第Ⅶ因子ですので、正常です。
 
 
血友病Aでは第Ⅷ因子の活性が、
 
血友病Bでは第Ⅸ因子の活性が低下しています。
 
 
 
もちろん血小板関係は正常です。
 
 
 
 
 
◼️ 治療
 
 
ないものを補充するのが基本です。
 
 
 
それ以外には
 
軽症の血友病Aには、デスモプレシン療法
 
 
インヒビターが出現した場合は、バイパス療法というものがあります。
 
 
 
 
① 補充療法
 
 
第Ⅷ因子や第Ⅸ因子の補充です。
 
 
定期的に点滴で投与したり、症状が出た時に点滴します。
 
問題点は、これらの凝固因子を投与している間に、凝固因子に対して抗体( インヒビター )が出来てしまうことです。
 
インヒビターが出来てしまうと、これらの凝固因子の働きを阻害してしまいます。
 
 
そうなると、いくらこれら凝固因子製剤を投与しても効果はありません。
 
 
不幸にもインヒビターが出来てしまった場合は、
 
後述するバイパス療法が必要になります。
 
 
 
 
② デスモプレシン療法
 
デスモプレシン( DDAVP )は、下垂体後葉の抗利尿ホルモン    バソプレシンを合成したものです。
 
デスモプレシンには血管内皮細胞から、
 
vWFと第Ⅷ因子を放出させる働きがあります。
 
 
ですから血友病Aに対してしか効果がありません。
 
 
さらに血友病Aでも軽症にしか効果が期待できません。
 
 
 
 
③ バイパス療法
 
 
補充療法中に、インヒビターが出来てしまうと、第Ⅷ因子や第Ⅸ因子を投与しても無効になります。
 
( インヒビターの量が少ない場合は、大量の凝固因子を投与して中和してしまうという手もある様ですが  )
 
 
 
この場合、第Ⅷ因子、第Ⅸ因子の補充は諦めて、これら抜きで凝固カスケードを進めないといけません。

 
その為に使われるのが、
 
活性化プロトロンビン複合体製剤と
 
遺伝子組み換え活性型凝固第Ⅶ因子製剤です。
 
 
気が遠くなる様な、長い名前ですね。



後者は、Ⅶaのことです。



前者の “ 複合体 ” いうのは、プロトロンビンやトロンビン、活性型第Ⅶ Ⅸ Ⅹ 因子など様々な凝固因子とその活性型を含んでいます。



だから簡単に言うと Ⅱa などの凝固因子詰め合わせって感じです。
 


Ⅶa やⅡa を使う、バイパス療法とはどんなものでしょうか。
 

 
凝固カスケードをよく見てください。

(  小さい字ですいません。 )
 
 
 
外因系も内因系も、合流して一緒になり  Ⅹ   Ⅴ  Ⅱ   Ⅰ    は共通です。
 
 
そしてこの凝固カスケードの最終目的は、フィブリノゲン Ⅰ  からフィブリン  Ⅰa  を作ることです。
 

つまりカスケードの一番下にある Ⅰa が目的地です。
 
 
そうすると、内因系の Ⅷ  や Ⅸ がなくても、
 
Ⅶa を投与すれば Ⅹ が活性化出来できてカスケードが下に流れて行きますし、
 
Ⅱa 複合体を投与すれば、含まれる因子達が働いて最終的に
 
Ⅰ を活性化出来そうですね。


 
こういう風に、問題となる Ⅷ や Ⅸ をすっ飛ばして、

目的地 Ⅰa まで行こうとするので、バイパス療法と呼ばれます。
 
 
 
 
 
 
この様に
 
( 先天性 )血友病の 遺伝  症状  検査  治療をまとめました。
 
 
治療は、まだ国試では出ていませんが、説明しました。
 
 
この治療の中で、重要なのはインヒビターです。
 
先天性血友病の補充療法で、インヒビターの出現する率は2割〜3割にも及びます。
 
また後天性血友病( 次の回に説明します。 )の原因ともなり、とても重要なので理解してください。
 
 
 
 
 
以上です。