T1 T2 FLAIRの見分け方はグラデュエーションの法則です。 | 医師国家試験対策予備校講師のブログ

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一緒に勉強しながら、頑張っていきましょう。

頭部MRIの見方です。

 
基本は
 
水 = 脳脊髄液 を見ます。
 
脳脊髄液は脳室や脳の表面にあります。
 
 
T1なら黒
 
T2なら白です。
 
 
話が難しいのは
 
MRIにはT1 、T2の他に
 
拡散強調画像やFLAIRなんてのもあるからです。
 
 
 
 
 
 
ではこの問題はどうでしょう? 
 
古い問題ですが、
 
99 D 103 です。
 
 
 
 
T1強調画像を選べという、そのものずばりの問題です。
 
 
② は CTですね。
 
これはわかりますか?
 
それ以外は全てMRIです。
 
④ だけ脳脊髄液が白いから、T2です。
 
⑤ は、周りがぼやけています。
 
拡散強調画像( DWI )の特徴です。
 
発症後数時間 早期の脳梗塞を調べるのに使います。
 
 
 
ここまではいいとして、
 
 
脳脊髄液が黒い、① と ③で迷いますね。
 
 
① と ③ どちらかが、T1で、どちらかがFLAIRです。
 
どう判別しましょう。
 
 
ここで僕が考えたのが
 
 
グラデュエーションの法則です。
 
 
 
脳脊髄液がある脳表近辺を見てください。
 
外側から
 
脳脊髄液
 
脳の灰白質
 
脳の白質
 
ですね。
 
 
この3つに含まれてる水の量を考えてください。
 
脳脊髄液は水そのもの
 
脳の灰白質は、脳細胞があるところですね。
 
だからかなりの水を含んでいます。
 
一番内側の白質は
 
神経線維( 軸索 )です。
 
軸索は脂質で出来た髄鞘に包まれているので、
 
脂肪が多く
 
水は少ししかありません。
 
ちなみに白質の 白 は脂肪が多く、肉眼的に白く見えるからです。
 
 
 
そうすると
 
一番外側に位置する脳脊髄液
    ↓
脳の灰白質
    ↓
  白質
 
と中の方にいくに従って
 
水が少なくなります。
 
 
これがグラデュエーションです。
 
 水の含有量がグラデュエーションをなしているのです。
 
 
 
そうすると、MRIを撮ったとき、
 
この水分量のグラデュエーションが
 
画像に反映されます。
 
 
T1なら水が黒いので
 
脳脊髄液は真っ黒
 
脳灰白質は灰色
 
白質は白になるのです。
 
外側から、黒 → 白への(  内側から 白 → 黒への )グラデュエーションになるはずです。
 
 
こうなっているのが、① です。
 
 
 
 
 
 
 
シルビウス裂のあたりや、前頭葉の前の脳脊髄液の辺りを見れば分かります。
 
 
① がT1だったのです。
 
( ちなみにこのグラデュエーションの法則は、T2でも勿論成り立ちます。
④ を見てください。
脳表は白く、灰白質は灰色、白質は黒ですね。  水の含有率にグラデュエーションがあることが話の元になっているので、T1もT2でも成り立ちますよ。 )
 
 
一方、③はどうでしょう?
 
グラデュエーションになっていますか?
 
同じところを見ると、
 
脳脊髄液は黒
 
灰白質は白
 
白質は灰色
 
と、グラデュエーションになっていませんね。
 
 
だから、T1ではないのです。
 
 
ではこれは何なんでしょう?
 
T1かFLAIRと言った、FLAIRの方なのです。
 
 
FLAIR フレアー とは、fluid attenuated IR の略です。
 
attenuateは弱めるという意味です。IRは画像の取り方です。
 
だから水の信号を弱めたIR法の画像ということです。
 
 
要は、水を黒くした画像。
 
 
水を黒くしたということは、もともと水が白かったということを暗に言っているのです。
 
 
だから元はT2の画像だったんです。
 
 
そしてこれをベースにして、水を黒く変化させたということです。
 
 
だからグラデュエーションが無くなったのです。
 
FLAIRは本来なら脳脊髄液は白かったのです。
 
脳脊髄液の信号を弱くして黒にしたので
 
グラデュエーションの法則が崩れたのです。
 
 
では何のためになるの?
 
それは、脳脊髄液を抑制して黒くすると
 
脳脊髄液に接している脳表や脳室の部分が分かりやすくなるからです。
 
これら部分を見たいためにFLAIRを作るのです。
 
 
まとめ
 
T1  脳脊髄液が黒
 
T2  脳脊髄液が白
 
T1 T2とも脳表の辺りはグラデュエーションの法則に従う。
 
法則に従わないのが、
 
FLAIR
 
FLAIRはT2をベースにして、水を抑制して黒くしています。
 
 
以上です。