特に高齢者の高カルシウム血症をみたら、悪性腫瘍を鑑別しないといけません。
カルシウムが上がる機序には主に2つあります。
① 腫瘍が骨転移して骨を溶かす
② 腫瘍がPTHに構造の似たPTHrP ( PTH related peptide ) を分泌する
① のタイプは
骨に転移しやすい乳癌や前立腺癌などです。
多発性骨髄腫もこのタイプです。
多発性骨髄腫には パンチアウト リージョンがあります。
パンチアウトアウト リージョンは骨転移というより骨病変です。
骨を溶かすのは同じです。
骨が溶けてカルシウムが高くなります。
カルシウムが高いので、PTHの出番はなくなり低下します。
② のタイプには
有名なのでは、扁平上皮癌 成人T細胞性白血病があります。
扁平上皮癌は肺癌や食道癌 頭頸部癌です。
そのほかにも
腎細胞癌 膀胱癌 悪性リンパ腫 慢性骨髄性白血病の急性転化などでも起こります。
このような癌はPTHrP( ニセモノ )を作ります。
ニセモノPTHでも、骨のPTHレセプターに作用して、骨からカルシウムが出てきます。
副甲状腺からのPTH( ホンモノ )は、ニセモノのせいで出番がなくなり、低下しています。
ところで、カルシウムとリンは、とても関係が深いですね。
①と②でリンはどうなるのでしょう?
実は①と②で、リンの動きに違いが出ます。
①は骨が溶けるので、リンも上昇します。
骨はカルシウムとリンでできていますね。
一方②ではPTHrPの作用で、リンは低下します。
ホンモノのPTHでもカルシウムを上げて、リンを下げるのでしたね。
PTHの作用、大丈夫ですか?
ここで確認です。
PTHは、骨に作用してカルシウムを上げます。
このとき骨からリンも出てくるのですが、
PTHは腎でのリンの再吸収を抑制し排泄を増加させます。
腎に対する作用の方が相対的に強いので
PTHは血中のリンを下げるのです。
実際には①と②を鑑別するには、リンの値で鑑別しなくてもいいです。
①なら、レントゲンや骨シンチを撮れば骨転移がわかります。
②なら、PTHrPを測定すると高値です。
このようにして悪性腫瘍に伴う高カルシウムをみた場合、①か②を鑑別できます。
最後に
②のタイプの高カルシウム血症を
腫瘍性液性因子性高カルシウム血症 ( HHM )と言います。
111B25でこの名前が出ました。
初めてではないでしょうか。
腫瘍が液( PTHrP )を出して高カルシウムになる ということです。
難しい名前ですが、文字から病態がわかるようにしておきましょう。
国試で要求されていますから。泣
以上です。