近年、国試で Ca と P が注目されているようです。 | 医師国家試験対策予備校講師のブログ

医師国家試験対策予備校講師のブログ

卒後15数年目の医師です。医師国家試験合格を目指す人に役立つ内容をまとめていきます。特に国試浪人生、現役生でも勉強が遅れている人の助けになるようにまとめを書いています。
一緒に勉強しながら、頑張っていきましょう。

悪性腫瘍でカルシウムが上昇する事があります。


特に高齢者の高カルシウム血症をみたら、悪性腫瘍を鑑別しないといけません。


カルシウムが上がる機序には主に2つあります。


① 腫瘍が骨転移して骨を溶かす


② 腫瘍がPTHに構造の似たPTHrP ( PTH related peptide ) を分泌する



① のタイプは

骨に転移しやすい乳癌や前立腺癌などです。

多発性骨髄腫もこのタイプです。

多発性骨髄腫には パンチアウト リージョンがあります。

パンチアウトアウト リージョンは骨転移というより骨病変です。

骨を溶かすのは同じです。

骨が溶けてカルシウムが高くなります。

カルシウムが高いので、PTHの出番はなくなり低下します。


② のタイプには

有名なのでは、扁平上皮癌 成人T細胞性白血病があります。

扁平上皮癌は肺癌や食道癌 頭頸部癌です。

そのほかにも
腎細胞癌 膀胱癌 悪性リンパ腫 慢性骨髄性白血病の急性転化などでも起こります。

このような癌はPTHrP( ニセモノ )を作ります。

ニセモノPTHでも、骨のPTHレセプターに作用して、骨からカルシウムが出てきます。

副甲状腺からのPTH( ホンモノ )は、ニセモノのせいで出番がなくなり、低下しています。


ところで、カルシウムとリンは、とても関係が深いですね。

①と②でリンはどうなるのでしょう?

実は①と②で、リンの動きに違いが出ます。


①は骨が溶けるので、リンも上昇します。

骨はカルシウムとリンでできていますね。



一方②ではPTHrPの作用で、リンは低下します。

ホンモノのPTHでもカルシウムを上げて、リンを下げるのでしたね。


PTHの作用、大丈夫ですか?

ここで確認です。

PTHは、骨に作用してカルシウムを上げます。

このとき骨からリンも出てくるのですが、

PTHは腎でのリンの再吸収を抑制し排泄を増加させます。

腎に対する作用の方が相対的に強いので

PTHは血中のリンを下げるのです。




実際には①と②を鑑別するには、リンの値で鑑別しなくてもいいです。


①なら、レントゲンや骨シンチを撮れば骨転移がわかります。

②なら、PTHrPを測定すると高値です。



このようにして悪性腫瘍に伴う高カルシウムをみた場合、①か②を鑑別できます。




最後に

②のタイプの高カルシウム血症を

腫瘍性液性因子性高カルシウム血症 ( HHM )と言います。

111B25でこの名前が出ました。

初めてではないでしょうか。

腫瘍が液( PTHrP )を出して高カルシウムになる ということです。

難しい名前ですが、文字から病態がわかるようにしておきましょう。

国試で要求されていますから。泣


以上です。