前回の続きです。
『急がない頻脈』についてです。
急がない頻脈とは、意識レベル低下や血圧低下などがない循環動態の安定した頻脈です。
血圧がいくら以上なら大丈夫とか、心拍数がいくら以下なら循環動体が安定していて安心できるなど
一概には言えません。
ざっくり言うなら、血圧は90以上、心拍数は150、160以下位でしょうか。
血圧は普段の血圧にも寄りますが、血圧が90あれば安心できます。
心拍数も200近くなると、循環が不安定になりやすいので、心拍数150、160ならまだ焦らず対処できます。
心拍数が200近くになると心臓は、空打ちになってしまい血圧低下が著しくなります。
空打ちとは、頻脈のせいで拡張期が極端に短くなり、心室に静脈灌流を溜め切らずに、
収縮するので一回拍出量が低下し、血圧が下がることです。
ここで注意してほしいのが、
急がなくていい頻脈は、『今の所』急がなくていい頻脈です。
決して明日まで放置という訳にはいけません。
『急ぐ頻脈』程ではないにしても、止める必要があります。
今は『急がなくていい頻脈』でも、循環が不安定になる可能性もありますし、
VTやVFといった心室性の不整脈になる可能性もあります。
(心室性の不整脈は、上室性の不整脈より怖いです。)
心拍数が高いままだと心不全、肺水腫になる可能性もあります。
いますぐ電気ショックは必要ではなく、薬剤で治療するという意味で
『急がない頻脈』なのです。
個別の治療は、頻脈波形というもう一つの軸で考えていきます。
・narrow QRS でリズム整なら
発作性上室性頻脈を考えて、
頚動脈洞マッサージや
ATP(アデホス®︎)10mg静注 効果がなければ、さらに20mg静注
生食の後押しを忘れずに。
・narrow QRS でリズム不整なら
心房細動を考えて
レートコントロール目的でジキタリス、Ca拮抗薬、ベータ遮断薬の投与を行います。
ただし、心機能低下症例ではジキタリス以外は血圧低下を招くので注意が必要である。
ジゴシン®︎0.25mg ゆっくり静注
ワソラン®︎5mg ゆっくり静注
オノアクト®︎
リズムコントロールは、抗凝固療法を行って心エコーで血栓の有無を調べてから。
なぜなら、心臓内に血栓があると洞調律に戻った時に血栓が飛んで行く可能性があるためです。
・wide QRS でリズム整なら心室頻拍を考えて
リドカインやアミオダロン
リドカイン®︎50mg
アンカロン®︎150mg
・wide QRS でリズム不整なら
WPW症候群に生じた発作性心房細動(pseudo VT)を考えて
プロカインアミドやジソピラミドなどのⅠ群
効果がなければ、電気ショックを行います。
アミサリン®︎100mg ゆっくり静注
以上です。