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医師国家試験対策予備校講師のブログ

卒後15数年目の医師です。医師国家試験合格を目指す人に役立つ内容をまとめていきます。特に国試浪人生、現役生でも勉強が遅れている人の助けになるようにまとめを書いています。
一緒に勉強しながら、頑張っていきましょう。

久しぶりのブログ更新となります。

 

私は春から勤務する病院が変わり、

 

私も業務の一部でコロナ患者さんに対応もしています。

 

新しい環境でようやく仕事に慣れてきましたし、

 

世の中も、一時期恐れられていた程の危機的状況にはならずに、

 

少し落ち着いてきました。

 

 

 

コロナ禍の中、医学生の皆さんも生活や勉強に苦労されていると思います。

 

特に来年度の医師国家試験を控えている方の中には、

 

勉強のペースがうまく掴めていない方もいらっしゃると思います。

 

 

これまでブログを通して、

 

国家試験の過去問や日々の疑問点について

 

個別でお問い合わせをいただき、

 

解答させて頂くことがことが度々ありました。

 

 

そこで改めて専用のお問い合わせ先を作りました。

 

 

お問い合わせ

 

 

このお問い合わせフォームをご利用ください。

 

直ぐには解答できないかもしれませんが、

 

頂いた質問には出来るだけ丁寧にお答えしようと思います。

 

 

なお今のところ、国家試験の過去問専用と考えていますが、

 

もし卒業試験などの学校の試験問題や、

 

模擬試験の問題などで困っていらっしゃれば、

 

出来るだけ対応したいと思っています。

 

とりあえず上のお問い合わせフォームで送ってください。

 

国試以外の問題だと、

 

問題文をどうやって送ってもらって、

 

私と共有するかというのが重要になります。

 

お問い合わせいただいて、その方法も含めて考えたいと思います。

 

 

なお、

 

お問い合わせ頂いた疑問点は

 

もし了解いただけるなら

 

疑問点と解答をブログに掲載したいと思います。

 

もちろん匿名です。

 

大学の試験を扱う場合は大学名は掲載します。

 

ブログに載せることで、

 

他の読者さんも共有できれば、勉強になると思います。

 

是非ご協力くださいね。

 

 

 

それではどんどんお問い合わせください。

 

待っています。

 

 

( 患者さんからの相談や、

病院実習での担当患者さんについて疑問点などは、

お答えできませんのでご容赦ください。)

 

今回は感染症です。

みんなが大嫌いな範囲です。

学生も医者もみんな嫌いです。

でも国試でも出ますし、研修医になって働き出すと真っ先に直面します。

では始めましょう。

感染症の考え方は、まず患者の特徴を元にして起炎菌・抗生剤を考えます。

同じ臓器の感染症でも患者の特徴によって、起炎菌は変わります。

起炎菌が変われば必然的に抗生剤も変わります。


患者(元気な人 or 入院患者 etc )

臓器(病名)

起炎菌

抗生剤

の4つの軸で考えましょう。

以下に出来るだけ一対一対応に近い形で覚えられるもので、救急外来でよく出会う感染症について処方例を含めて書きました。

(処方例についてはあくまで一例です。もっと良い処方例もあるかもしれませんし、実際にこの通り処方した場合に起こる責任は負いかねますのでご了承ください。あくまで私用の備忘録程度です。学生の方は処方例は省いてください。)


⚫︎梅毒 
(抗生剤)
ペニシリン or アモキシシリン

(例)
商品名 サワシリン錠250mg
1回2錠 1日3回 4週間内服



⚫︎A群β溶連菌感染の咽頭炎
(抗生剤)
ペニシリン
マクロライド

(例)
商品名 バイシリンG
80万単位 1日4回 10日間点滴

商品名クラリシッド200mg
2錠 分2 10日間内服

咽頭炎はほとんどがウイルス性でありますが、Centor’s score と迅速検査にてA群β溶連菌を判断して抗生剤治療を行います。

リウマチ熱を予防するために10日間治療を行います。

EBウイルスによる伝染性単核球症の場合、アンピシリンやアモキシシリンを投与すると、薬疹が出るので注意が必要です。



市中肺炎
⚫︎細菌性肺炎
(起炎菌)
肺炎球菌 
インフルエンザ菌 
モラキセラ
(抗生剤)
セフトリアキソン 
スルバクタム・アンピシリン

(例)
商品名 ロセフィン
1〜2g 1日1回点滴

商品名 ユナシン
1.5〜3g 1日3回点滴



⚫︎非定型肺炎
(起炎菌)
マイコプラズマ 
クラミジア 
レジオネラ
(抗生剤)
マクロライド
ニューキノロン

(例)
マイコプラズマ肺炎・レジオネラ肺炎を外来で治療する場合
商品名ジスロマック成人用ドライシロップ
1回2g単回内服

レジオネラ肺炎を含めた非定型肺炎を外来で治療する場合
商品名ジスロマック 500mg
1回 1錠 1日 1回内服


ちなみに市中肺炎をみて、もし細菌性や非定型肺炎のどちらかがわからない場合ならば、
βラクタム系+マクロライドの併用や
ニューキノロン単剤で治療を行います。

(ニューキノロンは単剤で、肺炎球菌などの細菌性肺炎の代表的起炎菌と非定型肺炎の起炎菌の両方をカバーします。)

(例)
商品名 オーグメンチン配合錠 250mg
6錠 分3
商品名 ジスロマック成人用ドライシロップ
1回2g単回内服
or
商品名 クラリス 200mg
2錠 分2


クラビット 500mg
1錠 分1
 


⚫︎尿路感染症
(起炎菌)
大腸菌 
Proteus mirabilis 
クレブシエラ
(抗生剤)
セフトリアキソン

カルバペネム(ESBL というβラクタマーゼ産生する大腸菌やクレブシエラを疑う場合ですが、覚えなくていいでしょう。)

(例)
商品名 ロセフィン
1〜2g 1日1回点滴
商品名 メロペン
1g 1日3回点滴



皮膚感染
⚫︎丹毒
(起炎菌)
A群溶連菌(発赤 光沢 ねっ感があり、浮腫状です。 境界も明瞭です。)
一部ブドウ球菌の場合もあります。
(抗生剤)
ペニシリン
セファゾリン(第1世代セフェム)

(例)
商品名 サワシリン250mg
6錠分3内服

商品名 セファメジン
1g 1日3回点滴

商品名 ケフレックス(経口用の第1世代セフェム)
1000〜2000mg分4内服



⚫︎蜂窩織炎なら
(起炎菌)
ブドウ球菌
(抗生剤)
セファゾリン

(例)
商品名 セファメジン
2g 1日 3回点滴



●軟部組織感染症
(起炎菌)
Clostridium perfringens(狭義のガス壊疽)
A群β溶連菌(劇症型A群β溶連菌感染症  )
Vibrio vulnificus(劇症型の壊死性筋膜炎 肝硬変患者の海水暴露に多い)
MSSA MRSA(トキシック・ショック症候群)
嫌気性菌  大腸菌 (広義のガス壊疽)
(抗生剤)
ペニシリン
ダラシン
バンコマイシン
カルバペネムなどを併用します。

(例)
商品名 メロペン
1g 1日 3日 点滴
商品名 ダラシン 
600mg 1日3回 点滴
商品名 バンコマイシン
Ccr × 15mgを1日2回点滴



⚫︎中耳炎
(起炎菌)
肺炎球菌 
モラキセラ
インフルエンザ菌
(抗生剤)
肺炎球菌をターゲットにしてアモキシシリンで始めることが多いです。
中等度以上の症例で抗生剤を使います。


⚫︎淋菌感染
(抗生剤)
セフトリアキソン

(例)
商品名ロセフィン
1g 単回点滴



⚫︎クラミジア感染
(抗生剤)
マクロライド  
テトラサイクリン 
ニューキノロン

(例)
商品名 ジスロマック成人用ドライシロップ
2g 1日 単回内服

商品名 クラビット500mg
1錠 1日 1回内服 7日



嫌かもしれませんが、少しずつ覚えてください。



今回は高張性低ナトリウム血症について。

某大学の卒業試験で実際に出題されたものです。



高張性低ナトリウム血症になるのはどれか?

1 腎不全
2 高血糖
3 SIADH
4 副腎皮質不全
5 ネフローゼ症候群




選択肢から、まず低ナトリウムになりそうな疾患を選んで、それから高張になるのは・・・・と考えた生徒が多かったのではないでしょうか。

でも、そう解くのではないのです。

そもそも、

低ナトリウムなのに、高張って変じゃないですか。

そう思いません?

血漿浸透圧の式を思い出してくださいよ。

Na × 2  + BUN / 2.8 + BS / 18でしたね。

ナトリウムが低いのにトータルとしての血漿浸透圧が高いということは、

BUNまたはBSがものすごく高いということになりますね。

ナトリウムの低さを、補って余りあるほどBUNやBSが高いということです。

そうすると

高血糖や腎不全が当てはまりそうです。

高血糖ではまさにBSが、腎不全ではBUNが上がりますから。

では答えはどちらでしょう。

答えは高血糖です。

なぜ腎不全がダメなのか?

それは、BUNが上がったとしても、

せいぜい5倍くらいだからです。

例えば BUN 14m g / dl が腎不全で 56 mg / dl になったとしましょう。

この場合、BUNは4倍の上昇です。

そうすると、BUN / 2.8 は、5から20に上がります。

15の上昇ですね。

でも Na は2倍になるので

トータルとしては血漿浸透圧は下がり安いですね。

(もしNaが8以上に下がれば、BUNの上昇の分を相殺してしましますから。)

一方、高血糖はどうでしょう。

血糖値は10倍くらい上昇するっことはあり得ます。

糖尿病性ケトアシドーシスや高血糖高浸透圧症候群では、血糖値が90 mg / dl が900 mg / dl になることはあり得ますから。

そうすると BS /18 は、5から50になりますね。

45の上昇です。

BUNに比べて上昇幅が大きいのです。

そうすると、ナトリウムがある程度低下したとしてもトータルとしての血漿浸透圧は上昇することがありえるのです。

だから高血糖では、

高張性低ナトリウム血症とういう状態が起こり得るのです。


以上、血漿浸透圧の式から少し(?)数学的に説明しました。




ですが、この高張性低ナトリウム血症を出題した先生は、低ナトリウム血症の鑑別という観点で考えさせようとしたと思います。


低ナトリウム血症の患者を見た時、まず偽性低ナトリウム血症を鑑別しないといけないというルールがあるからです。

この偽性低ナトリウム血症とは、

検査値の上でだけ低ナトリウムになっている状態のことを言います。

この偽性低ナトリウム血症の中に、

高張性低ナトリウム血症が含まれるのです。


ではなぜ見かけ上、ナトリウムが下がっているのでしょうか。

それは浸透圧を作り出す物質(浸透圧物質)が血中に異常に含まれているからです。

浸透圧物質の一例には、もちろん糖があります。


高血糖になると、浸透圧が上がり周りから血管内に水を引っ張ります。

そうすると血管内のボリュームが増えて、ナトリウムが相対的に薄まります。

つまりナトリウムが下がっているのが、ナトリウムの喪失ではなく、他の浸透圧物質のせいだというので、偽性という名前が付いています。

高血糖のために浸透圧が上がり、見かけ上ナトリウムが下がって見えるという状態という訳です。



この状態のことを問うているのが、この卒試の問題なのです。

低ナトリウム血症だけど、血漿浸透圧を計算すると決しって低くなっていない場合(むしろ浸透圧が上昇している場合もあり)が、偽性低ナトリウム血症ですね。

そもそもナトリウムが低いのに血漿浸透圧が高いって変だなという感覚が大事です。

この感覚からの解離しているのが、偽性低ナトリウム血症だとも言えます。

ちなみに他の選択肢の疾患は、低ナトリウムになり、浸透圧も低下します。


以上です。