今回のブログでは、最近オーディオ領域で注目されており、私自身も非常に音質が良いと感じているSFPポートを使った接続について考えてみようと思います。
SFP(Small Form-factor Pluggable)で使われるBase-Xとは何か
SFPポートを使った接続に多く使われるBase-Xは、Ethernet規格の一つで、Base-T(Twisted Pairケーブルベースの接続)が古い規格のケーブルを膨大な処理によって高速で駆動させていたのと異なり、元々高周波数をきれいに送ることができる光などのケーブルを用いて、後々の信号処理をできるだけ少なくするために開発された規格といえます。
SFP(Small Form-factor Pluggable)ポートを使った通信は、元々、光ケーブルでの接続のために開発されました。
実は光での伝送は電圧で伝送する場合に比べて様々な面ではるかに有利です。電圧での伝送はどうしても電線の持つ容量や抵抗、コイル成分に信号の品質自体が大きく影響を受け、また、隣り合った線では電磁結合が起きて、影響し合ってしまいます。
通常のLANケーブルでは4組のツイステッドペア銅線が密接して組み込まれており、1000Base-Tではそれぞれが全く別の信号を常に伝送していますから、クロストークの発生から逃れることはできません。
しかし、光ケーブルでの伝送は光の強弱で信号を送り、それは減衰はするにせよ、信号自体が乱れてしまうと言う事とはほぼ無縁です。そのため光通信では、実用上は電気信号のような波形歪みをほとんど受けず、復号が極めて容易です。
この優れた特性を持つ光通信のためのEthernet規格が、Base-Xと言われる規格です。現状でオーディオ用に使われている光メディアトランシーバや、DACケーブルはBase-Xを使っていると考えて良いと思います。
Base-TとBase-Xの違いとは何か
Base-TとBase-Xとの違いは、前者が物理的な限界が低いツイステッドペア銅線で乱れた信号を膨大な数の計算を行って値を推計しながら通信するという物理特性の限界をコンピュータの高速演算で補って何とか高速通信するという仕組み、一方、後者のBASE−Xは、物理的な限界が非常に高い光通信やインピーダンスマッチングやノイズ分離された同軸銅線ケーブルを使って、素直にデータをやりとりして高速通信を達成するための仕組み、と言って良いかと思います。
以下に、Base-T(通常LANケーブル)とBase-X(光、もしくはDACケーブル)の比較表を載せます。
| 観点 | Base-T(銅線LAN) | Base-X(光 / DAC) |
|---|---|---|
| 伝送媒体 | ツイステッドペア銅線 | 光ファイバ or 同軸(DAC) |
| 信号の乱れ | 非常に大きい | 非常に小さい |
| 必要なDSP | 大量(特に1000Base-T以上) | ほぼ不要 |
| PHY内部処理 | 推定・補正・復元が本体 | ほぼ素通し |
| 電源負荷変動 | 大きい | 極小 |
| オーディオ的含意 | ノイズ・ジッター源になりやすい | 影響源になりにくい |
上記の中で、DSPはDigital Signal Processingの略で、これが大きいと言うことは受信信号を復調する際の計算量が大きいという事を意味します。
このように光通信や物理的に厳密に作られた同軸銅線ケーブルを用いるDAC(Direct Attach Cable)を使うことを前提としているBase-Xのプロトコルは、元々、特性に優れた伝送ケーブルを用いることで、ほぼ直結に近い形でデータのやりとりが可能になっています。そのため、伝送の途中で信号波形が乱れがちなBase-Tに比べて、通信にかかる労力が遙かに少なくて済むのです。このことが音質に影響しているのでは無いかと私は考えています。
Base-Tの間にBase-Xを挟み込むと何が起きるのか
不思議な事に、ネットワーク伝送経路は単純な方が良いという原則は全くなり立ちません。どちらかというと、様々な機器で信号の整形を繰り返すというつもりでネットワーク機器を構成した方がオーディオ的には良い場合が多いです。
そこで、有効な方法の一つが、Base-Tの中にBase-Xの区間を入れる、と言う方法です。
例えば、
オーディオ用ハブのRJ45ポート→通常のLANケーブル→再生器機のRJ45ポート
と言う単純な接続よりも
オーディオ用ハブRJ45ポート→LANケーブル→メディアコンバータ→DACケーブル/光ケーブル→メディアコンバータ→LANケーブル→再生器機RJ45ポート
と言う複雑な接続の方が不思議な事に音が良くなる場合が多いのです。後者の構成では、
Base-T通信→Base-X通信→Base-T通信となっています。
この構成では、SFPポート部での物理的なGNDの分離や上流からの高周波ノイズ、コモンモードノイズの遮断といった電気的な利点に加えて、Base-X区間を挟むことで通信の条件が一度リセットされ、その後に送り出されるBase-T信号が理想に近い状態になると考えられます。その結果、後段機器のEthernet処理の負荷が軽減され、それが音質向上として感じられているのではないか、というのが私の考えです。
SFP間の接続でDACケーブルが良いことが多く、光ならシングルモードが良い理由
SFP間の接続で、少なくとも我が家の環境では短距離なら、多くの場合DACケーブルによる接続の方が解像感が高く、音の鮮度も高いと感じることが多いです。ですから現状でSFPを介した光接続を使っているのは、DELA S1→DMP-A10の間だけになってしまいました。DELA S1→DELA N5間、DELA S1→メディアコンバータ→Silent Angel Z1C間はともにAmphenolのDACケーブルを使っています。
DACケーブルを使う場合にもBase-Xの仕組みを使いますから、基本的には信号処理は最低限の処理のみで、ケーブル自体の物理特性を厳密に作り込むことで信号の品質保証をしています。
DACケーブルはそもそも電気信号を送っているので、光ケーブルを使う場合と違って、電気→光→電気という変換が生じません。ですから、受け入れ側での作業量は光接続に比べて圧倒的に少なくてすみます。光電気変換も、CDRによるクロック再生も必要なく、素直にそのままデータを受け取れば良いのです。
一方で光接続では、光信号を電気信号に変換しさらにクロックを再生する必要が出てきます。1000Base-Tなどよりは遙かに作業量は少ないのですが、それでもDACケーブルよりはかなり多くなり、電流変動の振れ幅も大きくなりがちです。
良く光接続では、マルチモードよりもシングルモードの方が音が良いと言われますが、これも動作自体がシングルモードの方が伝送条件が単純で、後処理が軽いからだ、と考えると納得がいきます。
いずれの場合も、データそのものが変化しているわけではなく、通信処理や電源負荷のあり方の違いが、音の印象に影響しているのではないかと考えています。
次回は、まとめとして、RoonやDirettaなどにも多少触れて見ようと思います。
