2013年 アメリカ・イギリス
☆監督・・・リドリー・スコット
☆キャスト・・マイケル・ファスベンダー、ペネロペ・クルス、キャメロン・ディアス、ハビエル・バルデム、ブラット・ピット、ブルーノ・ガンツ、ジョン・レグザイモ
予告篇からむちゃくちゃ気になっていましたねー。長い間楽しみにしていた作品を実際観れることに地味な興奮を覚えていた自分です(*^_^*)
あまり感想や評価は読まないようにしてました。と言ってもちょっとは見ちゃったけど...。評価がどうあれ、この豪華なキャストと謎めいた雰囲気を堪能できるだけでも価値があるってもんです。
冒頭から麻薬運びの準備の場面が淡々とはじまります。
カルテルのボスが誰で、とか、組織の全貌とか、詳細は明かされることなく話は進んでいきます。
むしろ、悪事の象徴としてのイメージカット、的な絵ヅラやシーンが流れていきます。
観客は、主人公のカウンセラーがビジネスとして一枚噛もうとしている「悪事」の存在を知ってればいい、というくらいの扱いと言うか。どういう風に彼が参加していくのか?という詳細についてはこの映画では問題視していないわけなのですね。
一方悪事に元から手を染めてるライナー(ハビエル・バルデム)とその彼女(?)マルキナ(キャメロン・ディアス)が荒野でシャンパン片手にチーターが2頭優雅に走り回る姿を眺めている。
彼らの派手な暮らしぶりはきらびやかで高級品に満ち溢れゴージャス。カウンセラーが悪の道に入ろうと決意するのにリッチな者同士の共感と更なる欲望へのきっかけとして彼らの存在が大きかったんだと思わせられます。
カウンセラーの恋人役がペネロペ・クルス。相変わらず美しいです(^_^;)意外におとなしめの役、でしたね。もっと悪女的な感じでかかわるのかと思いきや、世間の常識を代弁するようなまっとうな女性を演じていました。
なにより肩透かしを食ったのがハビエル・バルデムです!あのド派手な身なりに爆発した髪型!とくれば、どんだけ業の深いいっちゃったワルぶりなのか...と恐怖すら覚える期待(?)をしていたのに、実は彼こそワルの仮面をかぶった小市民、というか実に正常な男だったんです(^_^;)
むしろ彼がしきりに畏怖する理解をしようとしても出来ない愛人=マルキナ(キャメロン・ディアス)こそが底知れぬ闇を湛えた、かつ腰の座ったワルだったんですねえ((+_+))
しかしマルキナも彼女なりに真摯に常人の習慣を真似てみるべく教会へ告解をしになど行ってみるのですが、あまりに肝の据わった告白と態度に己の性的嗜好の告白はさわりすら聞いてもらえずじまいに終わるのでした。
麻薬取引の仲介に入って稼ぐ男としてブラッド・ピットが登場します。なかなか洒落たスーツにカウボーイハット姿で、業界の厳しさを熟知している彼は、この世界に入ってこようとするカウンセラーに対してしきりにその厳しさ・容赦のなさを語って見せるのです。
そんな真面目なお説教じみた話を何度もする仲介屋の態度にかすかに不安を覚えつつ、それでも副業として金儲けの側面に魅かれ裏稼業を持つことを決めてしまったカウンセラー。
彼は美しい恋人にやっとプロポーズをします。堅気の職業ではなかなか手にすることのない大粒ダイヤの指輪を贈りながら...。
ペネロペ扮する恋人は純粋に感動し、プロポーズを受け入れます。マルキナとプールサイドに寝そべりながら「指輪の値段知りたくない?」とマルキナに聞かれ「値段には興味ないわ」と答える。マルキナはかなり細かい鑑賞眼を持っているようでダイヤの評価基準の数字などを瞬時に判別してしまう。が、隣の幸福そうな女があまりにぽわん、としてるのが異様に気に障って苛立っていましたね(^_^;)彼女からしたら異星人に思えるくらい価値観も生きる世界も違い過ぎる世間知らずな女、なんですね。
カウンセラーは悪の一歩を踏み出した、という自覚すらほとんどないであろう時点で麻薬の移動途中での強奪容疑をかけられてしまいます。まったく自分のあずかり知らぬところで事態が進行しているのです。それでも、これまで何度も忠告されてきた通り、自分には弁解の余地も疑いを晴らすチャンスもなくいきなり命すら危ない危険な状況に陥ってしまったことを絶望とともに受け入れていて行きます。
このピンチにマルキナから即座に見捨てられたハビエルは逃げ出すも即座に組織に粛清されてしまい、
かねてから十分用心してきたブラッドはうまく逃げおおせたつもりで結局、殺人装置のワイヤーに首をまかれてエンド。
素人カウンセラーのファスベンダーは最後まで命は取られないものの、死んだ方がマシなくらい過酷な運命を突きつけられ苦悩によって廃人同然に追い込まれていきます。
妻への婚約指輪を買い入れた時の宝石商や、弁護士仲間など、様々な人が哲学的な言いまわしてカウンセラーに助言をするのですが、それらの言葉の意味を噛みしめて「一度決めてしまったことをなかったことには出来ない、という事の過酷さ」を観客もカウンセラーを通して味わっていきます。
それとともに恐ろしいのが麻薬密売組織の日常の描写です。
悪事でありながら、毎日のありふれた仕事のように汚水タンク車に麻薬の入ったドラム缶を沈めてメキシコからアメリカへと運ばれて行くのに、なぜか4っつ目のドラム缶にはどこかで始末した目障りな死体が入れられたまま。ゲームのごとく、意味もなく死体入りのタンク車が何度も同じルートを往復している、その状況が退屈なルーチンワークの中でちょっとしたおふざけ、みたいに扱われている気持ち悪さ。
カウンセラーの絶望的な心理描写と織りなして麻薬運びの終点でそれらのちょっとしたネタばらしが和気あいあいとされている売人同士の会話が異様なコントラストを見せているのです。巨大な麻薬マーケットの渦の中ではカウンセラーの人生など紙切れ一枚より軽く、裏切者の疑いをかけられてその償いをさせられた、というにすぎないのです。
やはりカウンセラーの価値基準とはあまりにかけ離れた異世界だったことでしょう。
マルキナはそんな一瞬の気のゆるみも命取りになるようなその異世界への野望を最後見せていました。彼女の冷徹さこそが本物の悪への必須条件なのでしょうかね。
ストーリーとしては分かりにくい感じですが、運命の過酷さ、後悔、など人間の業を表現することに主眼を置いた映画なので仕方がないのでしょう。ただ、これでもか、と容赦なく襲い掛かる絶望感に堪えて鑑賞するのは時と場合を選ぶかもしれません。
お気楽ご気楽なエンターテインメント大作ではない、ということは覚悟して観るべきでしょうね~(ー_ー)!!
