美濃加茂市は愛知の北の人口約6万人弱の地方都市だ。特に名のある観光地もなく、東海地域に住んでいる人以外は知らないような全国的に有名な市ではない。

 

 

そんな小都市でバカな議会副議長のセクハラ行為によって全国ニュースとなった。

 

朝日新聞デジタルより

「岐阜県美濃加茂市議会の永田徳男副議長(71)が姉妹都市の豪州・ダボ市の市長の娘に対しセクハラを疑われる行為をしたことを受け、藤井浩人市長は8日、報道陣の取材に応じ「私からすると不適切極まりない」と述べ、永田副議長の行為を批判した。同席者が撮影した動画を確認し、不適切と判断したという。市によると、美濃加茂市とダボ市は1989年から姉妹都市の関係を結んでいる。

 今年は35周年となることから、ダボ市のマシュー・ディカーソン市長や家族、市議会議員らが美濃加茂市を訪問。4月3日に市主催の歓迎会を市内で開いたという。

同席者が撮影していた2次会の様子

 歓迎会後、訪問団がカラオケを希望していたことから、有志による2次会を市内のカラオケスナックで開催。その席で、2次会に参加した永田副議長は「ジョニー・B・グッド」「ヴィーナス」を踊りながら歌った。その際、永田副議長はソファに座っているダボ市長の娘の下腹部にマイクを近づけたという。

 訪問団の帰国後、関係者から「不適切な行為があった」との情報があり、問題が発覚した。2次会の様子は同席者が撮影しており、藤井市長が動画を確認したところ、永田副議長が市長の娘に歩み寄り、下腹部にマイクを近づけたように見えたという。(後略)」

 

最近は小さい市町村(東郷町など)のトップのパワハラ・セクハラが取り上げられ、マスコミはトップを辞職に追い込むことで「大事なこと」から目を背けさせることに奔走する。

今回のセクハラは田舎のバカ爺さん議員が調子に乗って羽目を外したのだが、相手が姉妹都市の市長の娘さんへのセクハラということで話題性があった。ただ恥ずかしいことをしてくれた、日本人としてダボ市民に申し訳ないと謝るしかない。

 

さて、このセクハラ事件について若い市長が説明していたが、40歳の藤井浩人市長だ。2013年の選挙で美濃加茂市長に選ばれ、当時28歳の全国最年少市長であった。

最近は若い市長が多く選出されているから今なら特別珍しくもないのだが、藤井市長はその直後からトンデモナイ冤罪で逮捕され、一審では無罪になりながら2017年に最高裁で有罪が確定し、公民権がはく奪されたのだが、その後再び美濃加茂市長に返り咲いて今に至っているのである。

 

 

この冤罪事件は警察・検察の権力乱用により起こされたものであるが、最高裁ですら有罪が確定したにも関わらず、美濃加茂市民は若き市長の無実を信じて市長として再選したのである。

このことは、東海地域にいればニュースとしてよく扱われたので知っている人も多いと思うが、全国的にはあまり知られていない事件だった。私は以前名古屋に住んでいたので、大いに関心があった。

 

この冤罪事件は弁護士郷原信郎氏がネットで何回にも亘って訴えたり、書物を出したりしたので関心のある方は郷原氏の言論で冤罪事件の推移を知った人も多いのではないか。

 

冤罪事件の概要を説明する前に、私は最高裁で有罪が確定した藤井氏を、にも関わらず再度市長に選んだ美濃加茂市民の成熟した市民意識を称賛したい。普通はマスコミや警察・検察の発表を鵜呑みにするから冤罪を主張しても信用しない。

例えばトランプ追い落としのためのデタラメ告訴を多くの日本人が信用してしまうのが普通なのだ。

にも拘わらず美濃加茂市民は藤井市長の行政手腕や人柄を信じて、マスコミや警察・検察の決めつけを排除したのである。これが民主主義というものではないだろうか。

 

どんな事件だったのか。

ニュースより。

「検察側によれば、藤井市長は美濃加茂市議時代の2013年4月、名古屋市の浄水設備販売会社「水源」の中林正善社長から、2度にわたって計30万円の現金を受け取りました。 現金は「水源」の浄水設備を、美濃加茂市内の中学校に導入させようと取り計らった見返りに受け取ったものだとして、検察は市長を受託収賄や事前収賄、あっせん利得処罰法(公職にある者等のあっせん行為による利得等の処罰に関する法律)違反の罪で昨年7月に起訴。昨年12月の公判で懲役1年6か月、追徴金30万円を求刑しています。

 一方の弁護側は、市長が浄水設備を「災害時の飲料水確保に役立つ」などとして導入に前向きだったことは認め、争点を現金の授受、「30万円を渡した」という中林社長の供述の信用性に絞りました。  現金授受があったとされる2回の会食とも、藤井市長と中林社長の他に共通の知人が同席していました。中林社長は「知人が席を外している間に、現金を入れた封筒を藤井市長に手渡した」などと供述していますが、知人は証人尋問で「席を外したことは一切ない」と証言。藤井市長本人も「中林社長と2人きりになった覚えはなく、現金も受け取っていない」と完全否定しています。

 中林社長は別の詐欺事件で、書類や印鑑を偽造して銀行などから計15件、4億円近くをだまし取ったことを認めています。検察は当初、そのうちの2件、約2100万円分についてのみ立件していました。藤井市長側の弁護団は、詐欺の常習犯であった中林社長の供述はそもそも信用できないとした上で、検察側が他の事件の立件を見送る代わりに、中林社長が虚偽の事件を作り上げ、検察に有利な供述を続けているのではと追及。検察側は「ありえない」と強く反発しています。

 中林社長は詐欺事件で今年1月に懲役4年の実刑判決を受けました。この中で藤井市長への30万円の賄賂が認められたことになりますが、市長自身の裁判とは別の証拠に基づき、別の裁判官が下した判決で、市長の裁判には直接影響しないものとされています。(後略)」

 

郷原弁護士はお金のやり取りがあったとされる部分をネットで次のように否定する。

「…この事件では、業者(中林社長、詐欺で起訴され勾留中)が、2013年4月2日に10万円、同月25日に20万円を藤井氏(当時は市議)に渡したとする会食の場には、常に、藤井氏にその業者を紹介した人物が同席していた。「現金を渡した」と供述する業者と、それを全面的に否定し潔白を訴える藤井市長との供述が対立する中で、この同席者は、藤井市長の任意聴取が開始されると同時に警察から連日長時間の過酷な取調べを受け、意識を失う程の状態にまで追い込まれながらも、一貫して業者と藤井市長との現金の授受を否定していることについては、前回のブログで書いた。

その同席者のタカミネ氏が、7月9日夜、ニコニコ生放送の番組に出演し、ジャーナリストの江川紹子氏のインタビューに答え、現金授受があったと中林(業者)が言っている2回の会食の場に同席した状況について、「中林と藤井氏が一緒にいた時間は、いずれも1時間足らず。その間、自分は席を外していないし、現金の授受は見ていない。」と明確に述べた。

それどころか、中林について「虚偽公文書作成や、他の金融機関からの融資詐欺など、起訴される可能性があるのに起訴されていない犯罪事実がある。」「中林は、某名古屋市議会議員に現金を渡したということも言っているが、その事実はないことがわかった。」などとも発言した。

被疑者(藤井市長)を勾留して捜査を続けている贈収賄事件に関して、事件の鍵を握る同席者が、公開の場で、現金の授受を明確に否定する証言を行っただけではなく、贈賄供述(中林)が、「ヤミ司法取引」による虚偽供述である疑いまで示唆するという、前代未聞の事態に至っている。」

 

「本件の争点は、実質的には、中林と被告人の供述が対立する現金の授受の有無に限られている。中林が詐欺罪で起訴され勾留中で、同席者の高峰氏が現金の授受がなかったと供述している以上、「罪証隠滅のおそれ」などない。ところが、検察官は、「罪証隠滅のおそれ」があるかのように仕立て上げ、藤井市長の保釈に強く反対しているのだ。

呆れてしまうのは、検察官が、被告人の取調べ態度に因縁をつけ、「供述が曖昧で、公判においてどのような主張をしてくるか不明」「供述調書作成にも応じていない」などと述べている点である。

取調べ担当検察官は、「いい加減に現金授受を認めろ」と迫るのみで、他の事項については具体的に聴取しようとせず、供述調書を作成しようとすらしないのは検察官の方なのである。要するに、身柄を拘束しておいて、何とか現金授受を認めさせようとしているだけなのだ。

弁護人から主任検察官に、「可能な限り思い出して説明する意思があるので、具体的な資料を示して取調べを行ってほしい」旨申し入れをしたほどである。しかし、藤井市長が、「中林とのメールなどについても、説明をしたいので示してほしい。」と言っても、取調べ検察官は「時間がない」と言って、その機会すら与えなかった。

藤井市長と中林との会食に同席していた高峰についても、検察官は保釈請求に対する意見書で、「供述を徐々に変遷させ弁護人の主張に沿った供述をするに至っている」として、「被告人を保釈した場合,被告人が前記高峰と自己に有利な内容で詳細な日裏合わせを行うことは必至である」などと言っているが、高峰氏は、当初、警察で、連日朝から晩まで過酷な取調べを受け、「金を渡したところを見ただろう」という追及を「見ていない」と否定し続けると、「中林が金を渡したところをお前が見ていないのであれば、席を外していたとしか考えられないではないか」と理詰めで迫られ、その旨の供述調書に署名しただけであり、それが全く意に反するものであることを、高峰氏は、その後の検察官の取調べでも明確に述べている。」

 

 

「しかし、この事件の証拠が希薄であるがゆえに、検察、警察にとっては、「人質司法」にすがることしか手段がないのか、検察官は、藤井市長の保釈に必死に抵抗している。前回、起訴直後に行った保釈請求に対する意見でも、「罪証隠滅のおそれ」があるかのように仕立て上げ、保釈に強く反対した。「被告人の供述が曖昧で、公判においてどのような主張をしてくるか不明」などとした上、特に、被告人が保釈され市長に復帰すれば、上司・部下の関係となる美濃加茂市の防災安全課長に対して、浄水プラントの導入を働きかけた事実について、自己に有利な働きかけを行うおそれがある点を、「罪証隠滅のおそれ」の具体的事由として強調していた。

このような事由を挙げて、検察官が強く反対すれば、任官間もなく経験の少ない裁判官に、それに反する判断を行うことが困難なのは自明の理である。

前回の保釈請求が却下されたのは、そういう「人質司法」の構造の下では、ある意味では、当然の結果とも言えるものであった。」

 

「検察は、なぜ、そんな無茶苦茶な主張までして藤井市長の保釈に反対するのか。

それは、検察が土俵際まで追い込まれているからだろう。

開示された証拠を見る限り、検察官請求証拠はあまりに希薄だ。中林の供述調書は、全く説明のつかない変遷だらけで、警察、検察の辻褄合わせの誘導が歴然としている。

しかも、中林が述べている「同席者がドリンクバーに席を立った間の現金授受」は、座ったテーブルとドリンクバーとが極めて近接している現場のファミリーレストランの状況からは、到底不可能だ。(このような全く信用性のない検察官調書の詳細な内容を、どういう経緯で入手したのかわからないが、現場の状況との不一致を無視して、詳細に掲載した新聞がある【8月13日付け朝日朝刊】。その見識を疑わざるを得ない。)

市長が保釈されたら、当然、記者会見を行うことになる。愛知県警の取調官の「こんなハナタレ小僧を選んだ美濃加茂市民の気がしれない」「美濃加茂を焼け野原にしてやる」などの美濃加茂市民を侮辱する暴言が、市長自身の口から明らかにされるかもしれない。そして、私が初回の接見で市長の潔白を確信したように、会見での市長の姿勢、表情、態度から、多くの人が潔白の印象を強めることになる。検察が最も恐れていることは、市長が保釈によって人前に出ることになり、世論が動かされることだろう。

検察がやっていることは、「藤井市長を人質に籠城している」に等しい。人質解放は、そのまま落城につながると考えているからだろう。

 

この郷原弁護士の記述を読んでいると、検察が何が何でも藤井市長を有罪に持ち込みたいという強い意志、冤罪にありがちな当たり前の法的手続きを踏もうとしない検察の強引さが見て取れる。

この場合、担当検事のみの意志なのか上司またはトップの意向なのかが問題になってくる。

今回の場合は最年少知事の贈収賄犯として検挙できたという手柄競争の一環それもトップが絡んだもののように見える。

そして検察は闇の司法取引までするに至った。引き続き郷原弁護士の言。

「藤井市長は、贈賄供述者から現金を受け取ったことは全くないと、収賄の事実を全面否認し、一貫して潔白を訴えている。我々弁護人の役割は、藤井市長が現金を受け取っておらず無実であることを明らかにすることであり、そのために、現金を渡したとの贈賄供述者の供述が信用できないことを立証していくことが必要となる。

贈賄供述に関しては、供述が不合理な変遷を重ねていること、供述内容と現場の状況とが一致しないこと、同席者の供述とも符合しないことなど信用性に重大な問題がある。

しかし、その問題は、単に「信用できない」ということだけではない。我々弁護人にとっては、贈賄供述者(中林)の虚偽自白の動機、なぜ藤井市長に現金を渡したなどというウソの贈賄自白をしたのかという点を解明することが最大の課題だと考えている。それは、藤井市長の潔白を信じるすべての人々が望んでいることである。

「ヤミ司法取引」の疑い

虚偽の贈賄自白の動機について、当初から注目していたのが、当初の逮捕事実の金融機関からの融資詐欺の立件・起訴に関して、警察・検察と贈賄供述者との間で、「ヤミ司法取引」が行われた疑いであった。

逮捕時の報道によれば、金融機関から受けた融資は4億円を超えるとのことであったが、実際に立件・起訴されているのはごく僅かに過ぎない。他の融資詐欺を不問にすることの見返りに、藤井市長に対する贈賄供述が引き出されたのではないかという疑いがあった。

その点を、弁護人側から、公判前整理手続で「予定主張」として提示し、主張関連証拠として、詐欺罪で逮捕された後の贈賄供述者の供述調書等すべての開示を請求したところ、検察官から証拠開示された。

開示された供述調書によると、贈賄供述者の融資詐欺は、関係機関の代表者印等を偽造、受注証明書、契約書等を偽造して、地方自治体、医療機関等から受注したように偽って銀行、信用金庫など10の金融機関から融資金を騙し取るという、この種の融資詐欺の中でも最も悪質なものであることがわかった。通常であれば、警察、検察等の捜査機関は、融資を行っていた金融機関すべてから被害届の提出を受けて、騙取した融資金の行方等を追及する等徹底した捜査を行うのが当然である。ところが、2月6日の最初の逮捕事実及び3月5日の再逮捕事実に係る2件の合計2100万円の融資詐欺及び有印公文書偽造・同行使の事実しか立件、起訴されていないことがわかった。

約4億円の融資には、騙し取った融資金の返済のために新たに融資詐欺を行った「借り換え分」も含まれているが、それだけ悪質な融資詐欺であれば、借り換え分も含めてすべて立件するのが通常の捜査・処理のはずだ。

れなのに、僅か2件の融資詐欺だけしか立件・起訴されず、その融資詐欺の捜査が終了する直前に、「藤井市長に対して賄賂を供与した」という内容の贈賄自白の上申書が作成されているのである。

そして、驚いたことに、立件・起訴されていない融資詐欺の中には、真実は、美濃加茂市小中学校への設置に向けて営業活動を行っているに過ぎないのに、既に、同市において設置が決定され、工事が発注されているように偽って、銀行から合計4000万円の融資を受けた事実が含まれていた。

藤井市長の事件で、贈賄供述者からの請託と内容とされたのが、美濃加茂市の小中学校への雨水浄化設備の設置の働きかけだったことからすると、この融資詐欺の事実は、贈収賄の犯罪が本当に行われたのだとすれば、動機にも密接に関連するもので、収賄事件の捜査の過程で捜査の対象にすることが不可欠のはずなのに、捜査された形跡が全くない。しかも、同融資申込みにおいては、美濃加茂市教育委員会委員長の公印が偽造され、同委員会名義の発注書が提出されており、市長が収賄で起訴されている美濃加茂市は、その有印公文書作成・同行使の事件についていえば被害者の立場にあることになる。

それに加えて、その4000万円の融資には、信用保証協会の保証付き融資が含まれており、融資詐欺にかかる被害は公的機関にまで及んでいる。公益的な観点からも積極的に捜査の対象にするのは当然だ。

このように贈賄供述者の融資詐欺に対して、通常の刑事事件ではあり得ない捜査・処理が行われた理由は何なのか。それは、贈賄自白を引き出したことと関係があるのではないか。それによって藤井市長に現金30万円を渡したなどという虚偽の贈賄自白が引き出されたのではないか。」

 

「ヤミ司法取引」なんぞは言語道断なのだが、何としてでも不正を犯してでも藤井市長を検察は有罪としたいのだ。つまり冤罪!

この冤罪事件は主犯は検察だが、従犯は中林である。この男が真実を話せば冤罪事件は起こらなかったのだ。この中林について、郷原弁護士が次のように書く。

「2014年10月1日、2日の両日、名古屋地裁で、藤井美濃加茂市長事件の贈賄供述者中林正善の証人尋問が行われた。この2日間の尋問で、中林の「詐欺師」たる本性が露わになったと言ってよいであろう。

1日目は、検察官の主尋問。

分厚い質問原稿をほとんど「棒読み」して質問する検察官と、よどみなく答える中林、まるで、芝居の「台詞合せ」のようだった。内容は、ほとんど、検察官調書と同じ。中林は、調書を丸暗記していたとしか思えない。

しかし、そのような「作り上げられた中林供述」ですら、その内容は、市議会議員への受託収賄の贈賄供述、市長への事前収賄の贈賄供述の体をなしていない。

そして、中林が、その「詐欺師」の本領を発揮したのが、1日目の主尋問の最後の場面であった。

検察官に、融資詐欺で勾留中に贈賄の自白を始めた理由について尋ねられ、

「担当刑事から、やってしまったことは消せないけど、ゼロになって帰ろうと言われたので、心から反省しようと思いました。全部話さないと本当の反省にはならないと思ったんです。一日でも早くゼロになって社会復帰したいと思って、すべてを話さなきゃいけないと決心しました。」

と話した後、何度も声を詰まらせながら、

「刑事さんから「うそつき父ちゃんじゃ娘さんに顔を合わせられないぞ、なんかあるんだったら全部話をしろ。」と言われて、贈賄のことを自分の方から話そうと思いました・・・」

などと、涙ながらに話したのである。

2日目の反対尋問では、弁護人の私から、まず、中林が行った犯罪の内容について確認した。

融資詐欺は、インターネットで業者に頼んで作ったハンコを使って、地方自治体の部門長や病院理事長とかの名義の文書を偽造し、架空工事をでっち上げて融資を受けた融資詐欺の被害額が数億円ある。

そして、それと同時期に、勤務先の病院で事務長の立場で合計1億5000万円を横領していた。一度途中で発覚し、それまでの横領額の一部を返済したあと、残りは分割返済することにして、そのまま病院に勤務していたが、しばらくしてまた横領を始め、年間5~6000万円ものお金を、借金の返済や、キャバクラやクラブでの豪遊代に使ったとのことだった。

これだけの多額の詐欺、横領の犯罪を立て続けに行ってきた中林が、「やったことを全部話して、反省して、ゼロからやり直そう」と考えて、贈賄の自白を行ったというのである。

そのことを確認した後、我々弁護人のほうから、中林の「詐欺師」の本性を示す「隠し玉」を突き付けた。

警察署の留置場で中林の隣の房にいたA氏が、名古屋拘置所に移監された後、まだ警察署にいる中林と文通を続けていたのだ。そのA氏は、中林の全く反省のない詐欺師ぶりに呆れ果て、美濃加茂市役所の藤井市長宛に手紙を送ってきてくれた。弁護団は、急遽、名古屋拘置所でA氏に接触し、証人尋問の前日に、中林の自筆の手紙を入手したものだった。

中林の手紙には、実は、起訴された2100万円分の詐欺以外は立件されず執行猶予になることを期待していたことが書かれていた。担当の検事からも、「絶対に藤井には負けないから、中林さん一緒に戦ってくださいね!」と言われ、良い情状を酌んでもらって、執行猶予になることを狙っていたが、藤井弁護団が4000万円の融資詐欺を告発したことで実刑が確実になったと弁護人から知らされ、落胆したことが書かれていた。

そして、中林は、自分の事件の裁判も終わっていないのに、外国人を店に紹介して上前をはねる人材派遣事業を目論み、手紙の中でA氏の内妻に資金管理の仕事を頼めないかと打診していた。

融資詐欺・贈賄で勾留中の身でありながら、抜け目なく、他人を手足に使って、いかがわしい事業を行うことを画策しているのである。

反対尋問の中で、私から、中林に、主な手紙の内容とその趣旨について一つひとつ確認した。

中林は、手紙の記載をほぼ認めた。前日の主尋問での贈賄自白の経緯について訊かれた時の涙が「詐欺師」独特の演技であったこと、そのような行為を平然と行う人間であることが、公判廷で明らかになったのである。

その後、藤井氏に現金を渡した理由、依頼の趣旨などについて訊いた。

4月2日のガスト美濃加茂店で10万円を渡した理由については、美濃加茂市への浄水プラント導入に関して、市議会議員だった藤井氏に、「議会で質問してもらいたい、役人に対して働きかけてもらいたいと思った」と述べているが、中林は、肝心の、議会での質問が浄水プラント導入にどのように結びつくのかについて全く説明できず、藤井氏に頼みたいことと市議会議員の職務がどのように関係するのかも、全くわかっていなかった。

中林は、4月25日の山家住吉店での20万円の趣旨、請託の内容についても、まともに答えられず、さらにボロボロになっていった。」

 

そして判決。

「2015年3月5日午後2時、名古屋地裁で、藤井浩人美濃加茂市長に対して、無罪の判決が言い渡された。昨年6月24日の逮捕の直後から、藤井市長の潔白を確信して、全力で弁護活動に臨んできた私にとって、待ち望んでいた判決そのものであった。」

 

しかし検察は控訴した。

「悪質極まりない4億円近くもの融資詐欺を行いながら、僅か2000万円余しか立件されていなかった「詐欺師」の贈賄供述を信じ、同席者の聴取すら行わないまま現職市長を呼び出して聴取に踏み切ったこと、逮捕して勾留請求を行ったこと、何ら新たな証拠もないのに起訴したこと、公判での弁護人の反証で賄賂授受の立証が完全に崩壊しているのに有罪論告を行ったこと、そして結果的に当然の無罪判決を受けたこと、この全てについて、もし、検察が控訴断念の決断をしていれば、名古屋地検の担当検察官の暴走と地検幹部の監督責任という、地検レベルの問題で済ますことも不可能ではなかったはずだ。

しかし、この「当然の無罪判決」に対する控訴を行ったことで、検察はそれまでの名古屋地検の暴走を、組織として認めただけではなく、市長を控訴審の被告人の立場に立たせることで美濃加茂市民に更なる不利益を生じさせ、市政に影響を及ぼす責任を、組織として背負い込むことになった。」

 

そして結果的に最高裁に行くとなぜか有罪になってしまったのである。

そして有罪が確定してしまい、市長などに立候補する公民権は3年間停止されてしまった。

しかし、藤井氏はその後再度美濃加茂市長選に立候補して雪辱を果たしたのであった。

もう一度言う。当然藤井浩人氏の不屈の闘志もさることながら、美濃加茂市民の見る目の確かさ素晴らしさは全国民に対しても称賛に値する。

マスコミや権力が如何に捻じ曲げようとしても市民の力、成熟した市民力があれば跳ねのけることができることを示したのだ。

 

美濃加茂市議会副議長のセクハラ問題しかマスコミは伝えないが、藤井市長の冤罪についてもっと触れてほしいものだ。Youtubeも頑張ってこのことを取り上げてほしいね。