ミクロとマクロの混同がここにも。

AIが普及するとホワイトカラーが不要、つまり失職するという。こりゃ大変だと、将来どうすると不安が煽られ、対策書、啓発書が書店に並びサラリーマンが買うらしい。

 

国際政治評論家宮崎正弘氏のメルマガ(2024.1.12)がそんな将来を伝える。

 

時給20ドルでもまともに働かない人間に替わってロボット導入

  時給2ドルロボットが本格投入されると3億人が失職する計算になる

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或るアメリカ人工場責任者の弁。

「ロボットに休憩時間は不要。病気になったり、不満たらたらな愚痴も言わない。モノを盗むこともありません。しかも稼働が本格化すれば時給2ドルくらいで働くのです。」

ただし電池の寿命がきたら動かない。部品がはずれたら機械は故障する。

 

 

 

日本の時給は令和六年一月現在、一時間あたり全国平均が980円くらい。東京で深夜コンビニだと1800円あたりが相場だからロボットがいかに安いか!

アメリカでは最低賃金が11ドル。カリフォルニア州では時給20ドルでも人がこない。

 

米シンクタンクの報告書では「世界の業務の18%がコンピューター化される。その影響は新興国市場よりも先進国でより深刻になる」と予測している。なにしろAI搭載の機械が配備されるとホワイトカラーの三割は失職するといわれる時代である。

 

マックは厨房をのぞいて、店内に従業員のいない店を出した。すでに無人のコンビニが世界に拡がりを見せている。たとえばアマゾンは投資先のアジルティロボッティックスが開発した倉庫ロボットを公開した。従来の商品の摘出、拠点への運搬、梱包、ベルトコンベアでの仕向地別の区分け作業、トラックへの荷積みの過程をさらに効率化した。

 

不思議に思いませんか。早朝に発注した書籍が夕方にはちゃんと届く。段ボールの梱包には三枚ほどのラベルが貼ってあるが、顧客住所氏名、受注番号と配達区域別の小さな別のラベルが貼られていて、これを機械が読み取るのだと判定できる。

だが、ロボットの稼働は倉庫内に限られ、トラック輸送とその後の配達は人力である。近代と現代と近未来が同居している。宅配や荷物運搬をドローンで行う実験もされているが、目の前の能登地震で、孤立した集落への輸送はヘリコプターと人力、ボランティアが頼りで災害ロボットはまだまだ遠い未来のことである。

(引用終わり)

 

宮崎正弘氏は、ロボットが普及するといったってまだ一部分だけじゃないか、ロボットの影響なんて限定的だと言いたいようで、全くその通りだと思うのだが、もう少し社会への影響度合いを分析してほしかった。

 

しかし、AIといいロボットといい、IT化、機械化は急速に進む可能性がある。

スーパーのレジは自動化といって客にレジ打ちをやらせて、従業員は削減される。どこが自動化なんだ。

 

昔、公衆電話が自動化された。交換手に相手番号を伝えてつないでもらったのが、自動ダイヤル化されたのだ。私に言わせれば自動化は電話局のみで、お客がダイヤルを回すのだから自動化でもなんでもない。交換手がつないでくれていた時の方がお客にとって「自動」だったのに。

日本初の公衆電話 「自働電話」と書かれている。「動」でなく「働」

「働く」のはあんただよ!と言っている。お客をバカにして。今はスーパーも。

 

ことほどさように、サービス低下なんてそっちのけでコスト節減に走る。

ロボット化も人件費節減のために各企業は今後できるところはみんなロボット化するだろう。

それが世界的に普及すると3億人が失職する計算になるのだろう。

しかし、3億人が失職すると3億人分の給料が消えてなくなるのだ。職業転換なんて簡単にできはしない。

給与を払う必要がなくなるのは、ミクロつまり企業にとっては合理的で有利だが、その給与って需要の元なんじゃないのか。3億人分の需要が消えてなくなるのだ。

お前さんの作った製品・商品は誰が買うっていうのか。

雇用が減った分だけマクロでは需要が減少するんだが、分かっているんだろうか。

 

もう一度言う。ロボット化して消えた従業員の職業転換なんて簡単にできはしないのだ。

つまり需要減のデフレ、不景気につながるのは目に見えている。

ミクロでは合理的な行為がマクロではとんでもないマイナスとなる。

経済学用語で「合成の誤謬」というものだ。「fallacy of composition」だな。

経営者も自分だけのことばかり考えずにトータルで考えてほしいものだね。

経済学者もマスコミも。