あまり野球は好きじゃないし、ましてや大リーグなんてどうでもいい。大谷翔平がエンジェルスで頑張っていても、 NHKテレビが毎回中継することか、あの兜かっこ悪いからもうやめろよ、なんて減らず口ばかり叩いていたから、今回の1000億円契約も肘の故障で使い物になるか分かったもんじゃないのに、ドジャーズもよくそんな契約をするもんだと他人事としてしか見ていなかった。

 

しかし、契約の中身が明らかになったというネットの記事をみて、単純な1000億円契約じゃないようで、大谷に有利ともいえない内容だということが薄っすらと見えてきた。

 

 

大南淳のX

大谷翔平のドジャースとの契約総額は7億ドル(約1015億円)。これは2017年にメッシがバルセロナと結んだ6.74億ドル(約977億円)を超え、世界スポーツ史上最高額の歴史的契約

 

テレビではこの1000億円を時間換算してみたりと如何に巨額契約かをはやし立てていた。それを聞いて、大谷はいくら今素晴らしい成績を残したからといって、今後10年間も続くわけないだろうに。しかも肘の手術で今までと同じように活躍できるとは限らないのに、なんでプロで金に汚い米国人がそんな大盤振る舞いするんだろうか、と訝しんでいたが。

 

ネットで見た記事は、「ドラスタ」と「世に倦む日々」というnote記事だ。

世に倦む日々」は契約内容を次のように書く。

 

 

「…まず第一に、プレーする10年間の年俸総額を2000万ドルに押さえ、残りの6億8000万ドルを2034年から2043年までの10年間に後払いにした問題である。今度の契約の重要な特徴だが、マスコミはこれを異常に美化し、大谷翔平の自己犠牲だの、ド軍への貢献精神だのと宣伝しまくっている。果たしてその評価は妥当なのか。私には不思議でならない。客観的に、ド軍は現役引退した元選手に10年間にわたって毎年6800万ドル支払う義務を負うのだ。」

(引用終わり)

 

ドラスタ

 

「…しかし、契約内容の詳細が明かされると、これがまた大きな波紋を呼ぶことになります。

なんと、7億ドルのうち6.8億ドルを後払いとし、ドジャース在籍の10年間は年間200万ドル(1ドル=150円とすると3億円)でプレイする契約になっているそうです!

この目的は、ドジャース球団の名目上の金銭負担を軽減するためです。

そして、今回の大谷選手の契約金の繰延払いは、チームの総年俸を下げる効果があります。
…大谷選手が繰り延べる6.8億ドルは、将来の価値で計算すると4.4億ドル程度と見積もられ、それを10分割した4,400万ドルが、年俸200万ドルに加算されます。
つまり、大谷選手がドジャースに在籍する10年間は、年俸4,600万ドルの選手として扱われます。
単純に7億ドルを10で割った7,000万ドルから比べると、大幅なディスカウントです。

なお、換算値に直したとしても、10年総額4.6億ドル/年俸4,600万ドルはどちらもMLB史上最高額という契約設計になっています。

…向こう10年間、大谷選手は200万ドル/年という控え選手以下の年俸でプレーすることになります。後払いにより総額7億ドルもらえることは当然確定しているのですが、インフレによる通貨価値の低下や資産運用の機会損失などによってかなりの損をしています。

(引用終わり)

 

大リーグの契約方法は複雑でよくわからないが、要は最初テレビがはやし立てていたような、年俸100億円では全くなく、年200万ドル日本円で約3億円、「ドラスタ」氏に言わせれば、「控え選手以下の年俸でプレーすることに」なるという。ただ、「ドラスタ」氏が解説する「大谷選手が繰り延べる6.8億ドルは、将来の価値で計算すると4.4億ドル程度と見積もられ、それを10分割した4,400万ドルが、年俸200万ドルに加算されます。つまり、大谷選手がドジャースに在籍する10年間は、年俸4,600万ドルの選手として扱われます。」というのはどういうことなのか、よくわからない。

年俸4,600万ドルの選手として扱われるなら、約65億円ですごい契約額だが。

 

世に倦む日々」氏のいう後払いは、6億8000万ドルを2034年から2043年までの10年間に後払いにしたと言っている。つまり、10年間3億円で働いて、恐らく大谷が引退した後毎年6800万ドル(約97億円)を年金みたいに支給してもらうみたいだ。

世に倦む日々」氏はドジャースに疑問を呈してか、

「ド軍は現役引退した元選手に10年間にわたって毎年6800万ドル支払う義務を負うのだ。」とか「6800万ドルは(ドジャースの年俸総額)25%の巨費となる。こんな巨額の資金を、引退した過去の選手のため、その年の戦力とは無縁の一個人のために、10年間も延々と供与し続けないといけない。」

と不思議がる。そして

「マスコミが言うように、2024年から2033年までの10年間は、ド軍の戦力補強のために有意味な契約と言えるかもしれない。だが、その後の10年間に重い負担が背負い込まされていて、基本的にツケが後回しされているだけだ。」

のように書いて、ドジャースは何考えてんだと言わんばかりだ。

 

しかし、そのあとの比較が馬鹿げている。「世に倦む日々」氏はいつもいいことを鋭く抉(えぐ)っているのだが、財政問題になるとまるで無知を露呈してしまう。

「日本の財政の赤字国債と同じであり、歳出の国債費払いと同じである。今年度の政府予算・一般会計における国債費の支出割合は22%。この借金返済のために他の予算支出が圧迫され、社会保障費や教育費が削られる要因になっている。消費増税を説得する口実になっている。

果たしてドジャースは、10年後大谷翔平への毎年6800万ドルの支払いが、各年の戦力補強や全体のペイロールの足枷にならない規模まで、球団収益を増大させ年俸予算を拡大させることができるのだろうか。」

 

日本政府とドジャースの財政状況を一緒に論じてどうするんだよ。政府の財政に関して全く無知だから素人のザイム真理教そのままで家計・企業と政府を混同してしまっている。余計なこと言わなきゃいいのに、こりゃダメだ。

 

また、この繰延条項を取り入れることは、ドジャースが贅沢税(チーム年俸総額が一定の基準額を超えた場合にチームがリーグから徴収される金銭)をコントロールし、ほかの戦力を獲得する余力を残すために、大谷サイドが考えた案だという。

 

そして、契約期間途中に破棄できるオプトアウト条項が含まれていたことも明らかになった。「キーマン条項」とも呼ばれるもので、マーク・ウォルター・オーナー、アンドルー・フリードマン編成本部長のいずれかが役職を退いた場合に、権利行使が可能となる。

この条項はあるとかないとか報道されていたが、大谷自身が「ある」と明言しているようだ。

 大谷「みんなが同じ方向を向いているというのが大事だと思っているので。ロサンゼルス・ドジャースに入団すると同時に、メインの二方と契約するという形ですし、そこがもし崩れるのであれば、この契約自体も崩れることになる」とフロントへの信頼感を口にした、とのことだが、ちょっと甘すぎじゃないのか、いかにも日本人的だ。「信頼」なんていうがアメリカ人には通用しないだろう。

はしごに爆弾を仕掛けたようなもの。ドジャースが資金繰りに詰まって大谷の契約額が重荷になったら、オーナーか編成本部長を馘にすればいい。そのくらいのことは強欲アメリカ人はやるに決まっている。

 

そして、「世に倦む日々」氏は記事の中で非常に厳しい見方を示している。

大谷には悪いが、私もこの見方に同感だ。

 

「…史上初の7億ドル契約は、今は大谷翔平の勲章かもしれない。が、中身としては、30歳から39歳までの10年間、年7000万ドル分の活躍をする義務と期待を負わされたものだ。単年7000万ドルを契約する選手は、今後のMLBでも容易に出現しないだろう。果たして大谷翔平にその活躍が可能なのか。35歳過ぎても、二刀流で年7000万ドルに見合う活躍と貢献ができるのか。

もしその義務履行が不可能になった場合、どうするのだろう。自分から年俸の減額を申し出て契約を修正するのだろうか。

そのとき、アメリカの国民とメディアはどう言うだろう。日本人のようにやさしくは接するまい。身の程知らずに天狗になって7億ドル契約して失敗したとか、二度も手術した身で7億ドル契約は傲慢だったとか、資本主義的な冷徹な基準で選択の失敗の結論を下すはずだ。掌返しで厳しく処断される。

対象が叩きやすいアジア人で、反論や抵抗が返ってこないアメリカ盲従の日本人でもあり、人格の否定と侮辱にまで及ぶかもしれない。井川慶はその刑を受けた。

LAでの会見を見ていると、アメリカの記者は冷静で、大谷翔平を過剰に持ち上げる態度で一列に揃ってはいない。肘の手術の真相を問い、競合球団との交渉の内実に踏み込む質問を発していた。彼らは、MLBが強引に推進する大谷翔平の神聖化に与しておらず、ジャーナリズムの批判精神を保っている。

活躍できなくなったとき、契約を途中変更すれば、債権を放棄すれば、それで済むという問題ではないのだ。(双方とも)失敗の危険性が高すぎる契約を結んだと言わざるを得ない。

MLBの論理や周囲(水原一平)の欲望と誘導に合わせすぎた、肥満と沸騰の極みのアメリカ資本主義に迎合した、純真で清冽なスポーツ選手らしくない歪んだ決断だったと思う。」

(引用終わり)

 

世に倦む日々」の最新の記事(2023.12.20)は次のように書いている。これにも同感だ。

 

 

「さて、ここで思い出すのは、堀内恒夫が監督だった2004年の巨人軍の「史上最強打線」である。

前年オフに近鉄からローズを、ダイエーから小久保祐紀を獲得。清原和博、江藤智、ペタジーニと合わせて、他球団で4番を打った主力5人が揃う過剰に豪華な強力打線が編成された。生え抜きの高橋由伸と阿部慎之助もいる。

結局、ペナントの成績は3位で終わった。翌05年も巨人軍は低迷、Bクラス5位の屈辱となり、堀内恒夫は引責辞任に追い込まれる。

なぜ昔の巨人の失敗例を敢えて紹介するかというと、今回のドジャースの意思決定が似ているからだ。

MVP受賞者でリーグ屈指の強打者であるベッツとフリーマンが揃う打線に、3人目のMVP打者の大谷翔平を7億ドルで獲得して押し込んだ。ここまで打線を重装備する必要があるだろうか。

本来、今オフでドジャースが補強をめざしたのは投手である。だから、大谷翔平が後払いにして浮いたマネーで山本由伸を狙うとか言っている。(トラ注 ドジャースは山本と契約したとのこと)

大型のスター選手ばかり派手に打線に並べると、バランスを失って堀内巨人の蹉跌の二の舞になるのではないか。

そういう不安を抱くファンも少なくあるまい。

ド軍が本当に欲したのは、投手大谷の戦力だったのだろう。が、右肘故障で思惑が外れ、外れながらも本人の希望があり、MLBの戦略と差配があり、7億ドルで大谷翔平を取るという選択しかなかったというのが真相ではないか。

ブルージェイズが手を挙げたのは、それが演出用のダミーの役割演技だと承知していたからであり、マスコミが報じた1080億円は見せ金で、そんな大金を本気で準備するつもりなど毛頭なかったのだ。

ドジャースも6億8000万ドルを後払いにすれば、この先10年間の負担はなくて済む。疑って言えば、63歳のウォルターは10年後の球団経営は考えてないのだ。10年後は誰かにオーナーの座を渡し、引退してビジネスの現場から離れているのだろう。

客観的に大谷翔平は故障の多い選手である。過去10年間のプロ生活のうち、半分の期間は怪我で出場できず活躍できていない。二刀流挑戦の負荷がそうさせた。首脳陣からすれば、戦力を安定的に計算しにくい選手である。

私は、エンゼルスに残る選択が正しかったと思う。

理由は、アナハイムの球団とファンはドジャースほど勝利へのコミットと緊張感が強くなく、のんびりホンワカした気質だからである。その球団とファンのおおらかな性格と配慮が、大谷翔平に二刀流のトライアンドエラーを許し、見守って育ててくれる環境を提供してくれた。

別の見方をすれば、彼の5年間の我儘を認めてくれた。アナハイムに残り、恩義のあるエンゼルスを地区優勝に導く戦力になることが、大谷翔平の正しい選択だったと確信する。

(引用終わり)

 

大谷が弱小チームから強いチームに移籍して優勝したいというのもわかるけど、なんかちょっと無理し過ぎじゃないかとかんじるんだけどなぁ。