昔、若者の悪ふざけが行き過ぎて、わざわざツイッターその他に投稿して炎上し(注)、バカッターという言葉が流行った。彼らは損害賠償させられたり、バイトを首になったりして社会問題になったが、最近はそういう話題を聞くことも少なくなったと思っていた。

 

(注)炎上事例

おでんツンツン事件 コンビニのおでんを指でツンツンと触っている動画

・くら寿司ゴミ箱事件 バイト店員が生魚をゴミ箱に放り込み、その生魚を拾って調理

大戸屋バイトテロ事件 バイト従業員が下半身を脱いで局部にお盆を当てたり商品のプリンを口に入れている動画

・ブロンコビリーバイトテロ事件 バイトの男性店員が冷凍庫の中に入り、その様子を撮影

 

過去事例を見れば、ほとんどの人が「ああ、あのことか」と思い出すだろう。何故かこういうことが集中的に起きたような気がする。

その結果、店が閉店したり、株価が下がったりと企業側は大迷惑を被り社会問題化して、彼らに厳罰をということで大いに盛り上がった。

 

今回もその再演なのだが、スシローや浜寿司等での若者の「ぺろぺろ」や「ワサビ乗せ」などの行為は、過去のバカッターと比べればかわいいもんだという気がする。

しかし、社会に免疫力が付いたのか、些細なことでもそれに対するバッシングはこれまで以上のような気がする。

また、テレビがわざわざ大きく扱って火災を拡大したような気もする。

 

スシローは最近の不祥事もあってか、業績が落ち込んでいるところで、こんなバカなことが世間に広まったから、怒り心頭で、いたずらの子と親の謝罪も受け入れず、警察に被害届を出し、損害賠償も請求するという。スシローの株価は暴落し168億円の含み損が発生したとか。

行為自体は大したことはないものだが、影響は大きいので、刑事としては微罪、民事としては相当の額の損害賠償を請求されるだろう。一罰百戒を狙っているからだ。

 

こういう場合、米国では懲罰的損害賠償が請求されるという。怖くていたずらなんて出来なくなることを狙っているらしい。米国は暴力犯罪にはとても寛容のようだが、こういう案件は厳しいらしい。なんだか本末転倒で、少し狂っているかも。
 

行為自体は大したことはないが、影響は大きい案件はどう対応すべきなのか厄介だ。

つまり、法的には微罪で、社会的には大罪。それも少年の場合は「悪ふざけ」で済まされていいものか。もし「ごめん」で許されるなら、この手の「犯罪」は無くなることはない。お店のほうは泣き寝入りしかないのか。

 

例えば、人の体をちょっと押しただけで倒れた。これだけを考えるなら大したことはない。
しかしホーム上で押して線路に落ちたら、あるいは車の通る道路側に倒れたら…
考えるだけで怖い。つまり行為自体の大小より結果の大きさ、影響の大きさが問題になってくる。
微罪の行為で店側に大損害が出る時代に突入してしまったのである。

ということで、テレビも社会も「厳罰」を求める方向で意見がまとまっていったようだ。

 

しかし、社会には必ずバランスを取ろうという力が働いて、こんな程度のことに厳罰はかわいそうじゃないか、という声が出てくる。

先に引用した数年前のバイトテロ、バカッターの時は、バイトが首になっても損害賠償をかなり請求されても、これらの若者を擁護する声は出なかったような気がする。

というのも、この悪ふざけをする者たちが、いかにもワルで同情を引かない奴らだったからかもしれない。

 

今回はというと、YouTubeを見れば、今でもぺろぺろ男の顔など丸出しで見ることができるのだが、金髪のかわいい顔の高校生だ。ワサビ乗せの男などはイケメンの部類だ。そして、あまり悪意が感じられず、ほんのいたずらといった感じだ。

 

そのためか知らないが、おそらく行為と罰のバランスが悪いと擁護する識者が出始めた。

例えば、長谷川豊元アナウンサー。

「もー ゲンコツ3発と皿磨き1週間くらいで許してあげなよー

めんどくさい世の中だなー

相手、子供だろ」

 

例えば、「わかしん」こと慶大特任准教授の若新雄純氏。テレ朝のコメンテーターとして出ているが、あまりレベルが高いとは言えないコメンテーター。

彼がちょっとピント外れな擁護論を述べたらしい。「Abema Prime(アベプラ)」で。

若新雄純氏、スシロー問題“袋叩き”の風潮に私見「あなたは過去にミスをしたことがないと言えるのか?」

若新氏は、これらの件について「ツイッターとか見てて、すごいって思うのは“なんて、ひどいヤツだ!そして、近くのスシローには行けない”って、本当の被害者であるスシローのことはかばってなくて。誰もが通ってきたかもしれない、人間としての弱さとか、愚かさと付き合うのが下手だなって思いましたね」とコメントする。
 また「そんなことを言っていて、あなたは過去何年間かさかのぼられても、くだらないミスと、失敗を“絶対にやったことない”って言えるのかなとは、ちょっと思いますけどね」とも語っていた。」

(引用終わり)

 

ネットはもう食いついて、「あなたは過去何年間かさかのぼられても、くだらないミスと、失敗を“絶対にやったことない”って言えるのか」って、このスシローのペロペロは「ミス」なのか、と。

普通の人間は、過去何年間かさかのぼられても「やってないよ」、と断言できるだろう。こんなバカなことをやるのは、まさに「常識知らずのバカ」しかやらないからだ。

 

「ばかしん」じゃなかった「わかしん」の擁護論は、全く擁護になっていないのである。

「人間としての弱さとか、愚かさと付き合うのが下手だな」って、なんでお前なんぞに説教されなくちゃいかんのだと言いたくなる。下手なのはお前の屁理屈のほうだろう。

この言い方はみんな知っているよ。聖書から引用しているんだよね。

イエス「罪なき者だけがこの女に石を投げよ」(ヨハネによる福音書)

つまり、教養をひけらかすためだけにこのぺろぺろネタを使った疑いがある。残念でした。

 

こんなアホコメンテーターより、ユーチューバーのヒカル(全然知らないが)のほうがまともなコメントをしている。

 

「ヒカルは「SNSって怖いよな」と今回の問題の経過を指摘。「問題行動起こした奴も悪いから罰を受ける世の中になって欲しいと思うんやけど」としたうえで、「罰の受け方がいまはネット上で罰受けるみたいな形になってる」と語った。

「法律的に罰せられるんじゃなくてネット上で処刑されてる。あれよくないと思う。国が罰するべき。卒アルとか公開されたりするのはおかしい」と指摘した。

「何年かでも捕まるとかやったら、そんなことならへんと思う」と語り、「そういうのがないから、ネットの人間が俺たちが裁くしかないと裁く。3年捕まるより実名報道されて卒アル晒されたほうがダメージでかいと思う。法規制されるべき」と訴えた。」

(引用終わり)

 

ヒカルはネットの特徴をよく捉え、ネットの怖さも指摘している。「ネット上で処刑されてる。あれよくないと思う」と。

ネットがなぜそんなことをするか、についても「そういうのがないから、ネットの人間が俺たちが裁くしかないと裁く」と解析する。そしてやりすぎるなら、「法規制されるべき」とする。

 

ここが難しいところだ。

まさに法的には微罪で、社会的には大罪という問題。ただ、ネットがまたまた正義警察になって暴れまくるのはやりすぎで、それこそネット側も微罪では済まなくなる。

 

大きい罰(法的ではなく)を下さないと類似犯の防止はできない。悪ふざけで許してしまえば、企業側は類似犯にもう対抗策は不可能になってしまうのだ。

しかもホリエモンがさらに危惧する犯罪を指摘する。

 

「実業家・堀江貴文氏が1日付でユーチューブに動画投稿。回転寿司チェーン「スシロー」が客による迷惑行為及び動画撮影の被害を被った件に関連して、警鐘を発した。 

 堀江氏は「一番怖いのは」として、被害企業の株価下落だと指摘した。

空売りって行為があって、空売り出して、株価が200円下がったら、その200円分が利益になっちゃう。普通は素人は買いからはいるけど、プロは結構売りから入る」と説明した。 

 全国で相次ぐ強盗事件の闇バイト募集のような形式で、「5万円やるから回転寿司でぺろぺろして、動画アップしろ」と指示して、元締めがあらかじめ空売りしているケースも起こりうるとした。 

 安易な闇バイト応募を「善悪とか、その後自分がどうなるか分からずにやっちゃうばかがいっぱいいる」と指摘。

上場外食産業のお店で、なんらかの迷惑行為なんて、特殊詐欺のスキーム考えてる奴とか、いまいろんな方法考えてると思う。空売りを仕掛けようとしてバイトテロとか客のネットテロを画策している悪い奴らもたくさんいるのかな」と述べた。 

 対抗手段は被害企業の迷惑行為に対する「厳正対処」で、「これがトレンドになってくるのかな」と語った。」

 

この特殊詐欺グループはとっても頭がいいのだ。フィリピンに逃げて強盗殺人を指示するルフィーらは犯罪に関しては正に玄人で優秀、儲けるためには何でもやる連中だ。

彼らがホリエモンのいうような「空売り」を仕掛ければどれだけ利益を上げられることか想像だに恐ろしい。グリコ森永恐喝事件も「空売り」が目的ではなかったか。

 

私も一罰百戒はやむを得ないことと思う。これは学校での特殊授業で扱うべき問題なのかもしれない。

なにしろ、若気の至りとか悪ふざけとか単なるいたずらが人生を(親兄弟も含めて)台無しにする可能性があるのだから。