新「なるほどメモ」その6(小さい船なら海賊?)

「ある海賊が捕えられて、かのアレクサンドロス大王に述べた答えは全く適切で真実をうがっている。

すなわち、大王が海賊に「海を荒らすのはどういうつもりか」と問うたとき、海賊はすこしも臆すところなく、「陛下が全世界を荒らすのと同じです。ただ、私は小さい船でするので盗賊と呼ばれ、陛下は大艦隊でなさるので、大王と呼ばれるだけです」と答えたのである。」

(アウグスティヌス「神の国」より)

アレクサンドロス大王

今読んでいる「世界史を動かした思想家たちの格闘」茂木誠(大和書房)からの引用です。

一応「なるほど」なんですが、特別ビックリするようなことが書かれているわけではありません。

でも、この海賊の大王に対する返答を読んで3つのことを思い浮かべました。

 

古くはヒトラーの「大衆は小さな嘘より大きな嘘にだまされやすい」という有名な言葉です。

「大きい」というだけでみな騙されるわけで、「嘘」まで大きいほうがいい。

ネットで調べたら、次のようにヒトラーは書いているとのこと。

「国民大衆の心は小さな嘘よりも大きな嘘の犠牲となりやすいからである。というのは、かれら自身、もちろんしばしば小さな嘘をつくのだが、しかし大きな嘘をつくのはなにしろあまりにも気恥ずかしく感じてしまうからである。」

なるほどね、と感心してしまいました。しかしそのお蔭で小心で正直者は大きな罪を犯さないで済んでいる訳です。

 

次に思い浮かべたのは、NISAの拡大方針です。

「政府は「資産所得倍増プラン」の実現に向けて、個人投資家を対象にした優遇税制「NISA」の投資額を、今後5年間で56兆円規模に倍増させることなどを柱とする具体案をまとめました。

その柱は、個人投資家を対象に株式や投資信託の売却益などを、一定の範囲内で非課税とする「NISA」の拡充です。今後5年間で「NISA」の口座数を3400万に、資産の購入額を56兆円に、いずれも現在から倍増させることを目指します。」

 

 

貯蓄を投資に向けるということですが、株式や投資信託をいくら購入しても経済の活性化にはつながらないし、売却益を非課税としてそれを需要に振り向けると考えているとするなら、全く迂遠な施策で日暮れて途遠しでしょう。

 

それより問題はこの投資による元金は保証されないということです、当たり前ですが。

つまり売却益が非課税になって喜ぶ以上に元本の毀損の可能性が大いにあるのに、それについて政府は知らん顔です。甘い話にはご用心、であります。

 

これがなんで「小さい船なら海賊」の逸話に関係するかといえば、つい最近、結婚詐欺である男が捕まったのですが、その理由は…。

 

「銀行マンを装い、マッチングアプリで知り合った女性に、ウソの投資話をもちかけ、現金250万円をだまし取った疑いで、57歳の男が逮捕された。男は、”結婚”をほのめかして、言葉巧みに女性から金を引っ張り出していたという。

「大手銀行に勤務している。資産運用で金を増やしてあげられる」などとウソの投資話をもちかけ、現金250万円をだまし取った疑いが持たれている。」

 

「資産運用で金を増やしてあげられる」と結婚詐欺をしたわけですが、結婚詐欺男の資産運用話は「詐欺」として捕まるのですが、政府が国民を騙す投資話は「資産所得倍増プラン」として良きこととしてニュースになるのです。

つまり、アレクサンドロス大王の大艦隊による略奪なら海賊にはならないというわけです。

 

やはり話は「大きい」ほど人を騙しても問題にならないということですね。

 

さて、3つ目はウクライナ戦争のプロパガンダ。

これは毎回私がブログで指摘していますから、余り説明する必要はないでしょう。

ゼレンスキーの大嘘も、英米大手メディアがマネーロンダリングならぬ「嘘ロンダリング」を堂々としてくれますから、ゼレンスキーのやった虐殺も原発砲撃もみんなロシアの仕業になってしまうのです。ヒトラーの大きな嘘と同じでしょう。