ほとんど小話ですが、別役実「もののけづくし」という本の中の「ふんべつ」という妖怪話のなかでのエピソード。ふんべつという妖怪が男に取り付いているのですが…。
 

世をはかなんで自殺しようと考え、死地を探し歩きながら空腹を覚え、もよりのうなぎ屋に入って「うな丼」を注文し、「上にしますか、並にしますか」と聞かれて、思わず「並でいいよ」と答えてしまったのである。
 この時はじめて彼は、「おや」と思うのだ。ポケットに、それだけの金がないわけではない。しかもそれは、もう死ぬのであるから残しておいてもしようがないものである。にもかかわらず、「並でいいよ」とはどういうことだろう。つまり、そのようにして彼は、彼自身と「ふんべつ」とのかすかな乖離を感じとる、というわけである。」

別役実「もののけづくし」より

     うな丼上
思わず「並でいいよ」と答えたのは、ふんべつという妖怪の仕業だというのだけれど、結構リアリティのある小話ではありませんか。女房にこれを話したら、大笑いとなりました。お金持ちにはわからない笑いかも?


これとは少し違いますが、フランスの小話でも同じような話が。
今やギロチンでクビをちょん切られようとしている死刑囚。執行人が「何かいうことはないか」と問うと、死刑囚「すみません。首のところにおできができているので、できたらそこを外してギロチンにかけていただけますか」と。

やっぱり、おできは触られると痛いからね。


死刑囚といえば、昔の本当の話(名古屋であった事件)だけれど、何人も人を殺して死刑を言い渡されたあと、犯人が看守に向かって言ったとか。
「もうすぐ自動車の免許が切れるんですけど、更新はどうしたら…」
これほんとの話。