トンガの海底火山噴火の規模はかなり巨大だ。その被害の全容がわからないが、今日のニュースでは津波の原因追及もさることながら、フィリピン・ピナツボ火山の1991年噴火に比して、冷夏の心配をしていた。
朝日新聞
南太平洋のトンガ諸島で発生した大規模な海底火山の噴火について、防災科学技術研究所火山研究推進センターの中田節也センター長(火山地質学)は「噴煙が最大2万メートル(20キロ)近く、半径260キロにも広がっており、1991年のフィリピン・ピナトゥボ火山の噴火と似ている。噴火規模を0~8で示す火山爆発指数(VEI)も同じ6程度の可能性がある」と指摘した。
ピナトゥボ火山の噴火では、噴出物が成層圏に大量に放出され、太陽の光が遮られて世界的に気温が下がった。2年後には記録的な冷夏となり、日本では米が大凶作となってタイ米を緊急輸入する事態になった。
(引用終り)
なんかおかしくないか。
記事は全く正しいし、フィリピン・ピナツボ火山の1991年噴火によって「2年後には記録的な冷夏となり、日本では米が大凶作となってタイ米を緊急輸入」したことはよく覚えている。
だから何もおかしいところはないんだが、最近のバカげた脱炭素、つまり地球温暖化を心配する環境団体やマスコミからすれば、こんな書き方はおかしいだろう、と言いたいんだ。
つまり、彼らグレタやグリーン団体や地球温暖化防止のため脱炭素を推進するレジ袋進次郎達の立場からすれば、「トンガ海底火山の噴火による被害は問題ではあるが、地球温暖化防止という観点からすれば「とてもよいこと」と言うべきなのである。
去年秋のCOP26では1.5度平均気温を低下させないといけないと決めたではないか。
本当は6年前に採択されたパリ協定では気温上昇を2度未満に保ち、1.5度は努力目標とされていたが、各国の思惑もあり、結果として、世界の平均気温の上昇を1.5度に抑える努力を追求することを決意するとされ、そのためにこの10年間での行動を加速する必要があると決めたばかりだ。
そんな厳しい目標を到達させるのは容易なことじゃない。というか全く無駄なことでやる必要もないのだが。
そんな中での今回のトンガ海底火山の大噴火だ。前のフィリピン・ピナツボ火山の1991年噴火で地球温暖化が防止されたのである。だから、今回のトンガ海底火山の大噴火について、喜ばないといけない。
「ピナツボ火山の噴火で2年後には記録的な冷夏となり、日本では米が大凶作となった」ことなんぞ、世界を救う地球温暖化防止にとっては「小さな事」なんだ、と朝日新聞は喜んで書かないといけない。
ピナツボ火山噴火後のCO2量の変化を見てみると、減っているのである。だから今回のトンガ噴火でも当然CO2は減るのである。
おお、火山噴火のお蔭で寒冷化してCO2も減った。脱炭素の努力をしなくても脱炭素が達成された!と喜ぶべきなのだ。
寒冷化のメカニズムは、火山噴火により噴出した火山ガスには、大量の硫化水素と二酸化硫黄が含まれており、それらが太陽光を受けて且つ水と合体すると小さな粒、硫酸エアロゾルに変化し地球の周りを覆ってしまう。この硫酸エアロゾルは太陽光をはじく性質があるので、地球に太陽の光が届きにくくなり、温まりにくくなり、寒冷化するのである。
ただし、ある情報によれば、二酸化硫黄の噴出がピナツボ火山噴火のときよりはかなり少ないのではと言われている。今後調べないとわからないが、ピナツボ火山噴火のときのような記録的な冷夏とはならないかもしれないと。
しかし、それでも大噴火であるのは間違いないし、かなり太陽光が遮られて地球の寒冷化に何らかの影響は避けられないと思われる。
しかし、ここで困ったことが起きてしまった。
地球温暖化の元凶であるCO2は人間の活動によるものだったのに、ピナツボ火山噴火で自然にCO2が減ってしまった。だから今回のトンガ火山の噴火でもCO2は減少するだろう。
さて、CO2の増加は人間活動に起因するんじゃなかったのか。
ここでエントロピー学者で地球温暖化CO2説に反対している槌田敦氏の論文から引用しよう。
「…CO2 温暖化説(人間原因説)にとって,もっと都合の悪い事実は,CO2 濃度の測定結果そのものに現れている.
フィリピンのピナツボ火山が噴火(1991年)した後2 年間、大気中のCO2 濃度は増えていない.1991~3 年に人間は化石燃料の使用を中止したわけではないから、人間原因説をとるならば、人間の排出したCO2 の全量が行方不明となり、この説は完全に否定される.
この現象を理解するには,人間が排出したCO2 を含め,余分のCO2 はすべて海水などに吸収されたと考えればよい.しかし,そうするとそれ以外の年の大気中のCO2 の増加も人間のせいとは言えなくなる.」
この文の前のほうで槌田敦はCO2と温度の関係を説明している。
「…南極ヴォストークでの氷片の分析により、過去22万年にわたって気温の変化と大気中のCO2とメタンの濃度変化が測定され、CO2やメタンの濃度の高い時期には、気温も高いことが示された。
当初この測定結果は、CO2 濃度が気温を決める主因であることを示すものと考えられた。そこで、CO2 濃度が原因で気温が変わり、気温が変わった結果メタン濃度が変わったと説明されてきた。
しかし,そのような説明をすることは無理である.
太古では気温上昇の原因となるCO2濃度の増加の理由が説明できないからである。そこで、太古では気温が原因で、CO2濃度やメタン濃度はともに結果であると説明するほかなかった。
けれども、産業革命の後、人間の排出するCO2が増えて、それが大気中に溜まった結果、その原因と結果が「逆転」して、CO2濃度の上昇が気温の上昇を引き起こしたと説明されるようになった。
この説明は,次のキーリングらによる研究結果で支持されるとした。
すなわち,1960年から1987年までの化石燃料の燃焼で排出したCO2の量の58%が大気中に溜まるとすると、大気中のCO2濃度と極めてよく一致する。後に測定点を7年間延ばし、化石燃料の使用により排出されるCO2の55.9%が大気中に溜まると訂正された。
この化石燃料などの使用量とCO2濃度の測定値の見事な対応に多くの人々は感激した。
そのひとり、有名な経済学者宇沢弘文は、1988年発表の図を見て、「このことだけからでも、化石燃料の燃焼によって、大気中に放出されるCO2のうち、58%が大気中に残って、残りの42%が海や森林に吸収されるという結論を出すことができるように思われます」と書いている。
このようにして、化石燃料の使用が大気中のCO2濃度を上昇させ、その結果気温が上昇したと多数の気象学者が認め、多くの人々に受け入れられ、CO2 温暖化説は通説となったのである。
しかし、人間活動には浮き沈みがある。1980年からの世界的な不況とエネルギー転換によって化石燃料からのCO2 発生量は鈍化した。1980年までの化石燃料などの消費により発生するCO2の増加量は年あたり1.4億トンであったが、1980年以降の増加量は0.7億トンと半分になった。1990年以降はそれよりも少ない。
これに対して、大気中のCO2 濃度の増加率は、1980年では年あたり1.3ppmであったが、1990 年では1.55ppm、2000年では1.8ppmと急上昇している。つまり、人間の排出するCO2 と大気中のCO2 濃度は関係なかったのである。
このように人間の排出するCO2の年あたりの増加量が減っても、これには関係なく大気中のCO2 濃度の年あたりの増加率は増えるのであるから、京都議定書によりCO2 削減の努力をしたところで、大気中のCO2 濃度を減らすことにはならないことが分かる。(後略)」
この槌田敦氏の説明によると、人間の排出するCO2が減っても、これには関係なく大気中のCO2 濃度の増加率は増えているということは、人間の産業・経済活動の結果CO2が増加して 温暖化するという説(人間原因説)は間違いだということがわかる。
また、ピナツボ火山の噴火によってCO2は減った訳だが、CO2はどこに消えたのか。
それは、ヘンリーの法則で簡単にわかることだ。
ヘンリーの法則とは、圧力を掛けたら掛けた分だけ気体は溶媒に溶けるということと温度が低下すればするほど気体は溶媒に溶けるという法則だ。
ハイボールを作るための炭酸水はヘンリーの法則によって作られている訳だ。つまり冷たくして圧力でCO2を溶かしたものが炭酸水だ。冷たいほど炭酸が多く含まれている。
海洋も炭酸水と同じ働きをしており、暖かくなれば海洋に溶けたCO2が大気中の吐き出され、寒くなれば、大気中のCO2は海洋に溶け込むのである。
ピナツボ火山の噴火によって太陽の光が遮られ、寒冷化してCO2は海洋に溶けて大気中のCO2は減ったのである。
つまり、CO2が増加した結果地球が温暖化したのではなく、地球が温暖化(原因)しているので、CO2が増加(結果)しているのである。現代の地球温暖化CO2説は結果と原因が逆なのである。
今回のトンガ火山の噴火でもそれが今後立証されるはずである。
だから、本当に地球温暖化を心配している勢力は、今度のトンガ火山の噴火を歓迎すべきなのだ。
しかし、そんな声は聞こえてこない。
なぜなら、彼らは地球温暖化の防止など全く関心がない。脱炭素なども当然関心がない。関心があるのは、それを主張することである目的が達成されるかどうかだけだ。
彼らとは二つの勢力のことだ。
ひとつは、共産主義運動が弱体化したため、環境保護運動を隠れ蓑にした共産主義者たちだ。彼らは地球温暖化防止を旗印に、世界を意のままに動かし、世界を破壊、つまり革命を起こすことが目的だ。
もう一つは、資本家勢力で、地球温暖化防止、脱炭素が儲かりそうだとわかった(グリーン投資)ので、左翼と一緒になって地球温暖化防止・脱炭素を叫ぶようになった。
いわば同床異夢だ。
従って、彼らは地球温暖化防止の実現には何の興味もない。寒冷化することを喜ばないといけないが、そんなことには全く関心がないのだ。
しかし、本当は地球温暖化は今少しずつ寒冷化に向かっていて、寒冷化が如何に地球にとって温暖化より大きな被害をもたらすかを憂慮すべきなのである。
脱炭素なんぞに無駄な金を使っている暇はないはずなのだ。
その証拠に、今回のトンガ火山の噴火で、ピナツボ火山噴火で冷夏、凶作を思い出したのは自然の発想、つまり温暖化より断然寒冷化のほうが経済・社会生活に影響を与えることを知っていることの証明なのである。
なのに、地球温暖化防止、脱炭素というと喜々として騙される。かなりの知識人でも騙される。
今回のトンガ火山の噴火をきっかけに、冷夏・寒冷化の意味をじっくり考えることになればいいのだが。
なお、昔の話だが、BS日テレで久米宏司会の「久米書店」という本の紹介番組をやっていた。
あるときのゲストは、親中・反日経営者で有名な伊藤忠元会長、元中国大使の丹羽宇一郎で、「人類と地球の大問題 真の安全保障を考える」(PHP新書)を紹介していた。
この本の終りのほうでトンデモナイことが紹介されていた。
地球温暖化対策が上手くいかないので、各国のCO2排出削減に任せるのでなく、技術的に解決してしまおうという試みがあるらしい。まだ机上での考えだけのようだが、フィリピンのピナツボ火山の爆発で火山灰が大量に放出され、日光を遮った。すると、地球上のCO2が減少した。そうだ!地球温暖化対策に人工的に日光を遮ればいい。空中に大量にエアロゾルをまき散らして日光を遮ることで、地球を冷やすことができると。
これを読んでとんでもないことを考えるバカ学者がいるものだ、バカというより、マッドサイエンティストというべきだろうと感じた。こんな例を丹羽は得意げに紹介しているのである。これが「人類の英知」とでもいいたいのか。
伊藤忠ではこんなひどい経営者が偉そうにしていたのである。哀れな老人、害をまき散らす老人というしかない。