真夜中に突然の津波警報発令。(私はテレビも見ない、スマホも持っていないからこの事を知ったのは今日の朝方だった)

それに従ってこの寒さの中、避難した方々はさぞ大変だったろうが、11年前の津波を思い起こした人は真面目に避難したことだろう。

それでも大事に至らなくてよかった。

特に今日共通一次の試験を受ける受験生はこの警報で眠れなくて最悪の状態で試験に臨んだかもしれない。

といってもトンガの島の被害状況は不明のままだが、相当の被害を被っている可能性もある。

 

しかし、なんだかトンチンカンな気象庁。

集中豪雨も大地震もよく分からない気象庁が、今回トンガの海底火山噴火により日本に押し寄せた「津波」は「津波」じゃないけど、警報の種類がないから、取りあえず「津波警報・注意報」を出しただけで津波を発生させる地震に起因してないから「津波じゃない」って言い張っているようだ。

 

スポニチ

気象庁 トンガ沖噴火による潮位変化は「津波ではない」と見解

トンガ沖の噴火は日本時間の15日午後1時ごろ発生。同庁は当初、噴火が発生したトンガから日本列島の間の海域で大きな津波が観測されなかったことから、日本への影響を「若干の海面変動の可能性はあるが、被害の心配はない」との情報を発表した。15日夜にかけて太平洋沿岸部で1メートル近い潮位変化が観測されたため、一転して警報と注意報を出した。潮位変化の第1波は午後7時58分、東京都の小笠原諸島・父島で観測し各地に広がった。トンガに近い海域の潮位変化は数十センチ程度だった。 
 気象庁の担当者は「潮位変化の津波かどうかまだ不明です。今回の潮位変化には津波の特徴というのが見られませんでした。我々は通常の津波なら理論的に到着時間というのが予想出来ます。

当然、今回もその到着予定時刻に津波が到着するものと観測していたところ、予想の2時間半前に潮位変化が観測されてしまった。それによって我々はこれは津波じゃないんじゃないかということを考えました。本来、原因とされる火山から海を順番に伝搬してきて、日本に到達するというのが妥当なんですけど、途中の様子でほとんど振幅がありませんでした。このことから日本で観測された潮位変化は、どうも津波ではなさそうだと我々としては考えています」とコメント。
 “津波”ではないとしながらも警報を出したことについて「今回我々はこのような特異な海面変動、潮位変化というのをとっさに伝える手段というのがなかったので、津波警報・注意報という枠組みで皆さんにお知らせしたということになります」と説明した。

(中略)

今回のような海面変動が何故起き方というメカニズムについて分からないことが多い状況だということをご理解ください」と“異例の事態”に困惑している様子。
 今後については「大気圧の急激な変化が潮位変化の前に見られておりまして、これが直接どのように関係しているのかということを調査することになると思います。今回の経験を元によりよい対応が出来るように検討していきたいです」と答えた。

(引用終り)

 

朝日新聞

「…日本国内で潮位の変化が観測され始めた15日午後8時ごろ、国内各地で気圧が約2ヘクトパスカル上昇していたという。「噴火に伴う気圧変動だと現時点では考えている」と宮岡企画官。だが、海面の動きとの関係については「詳しいことは調査したい」と述べるにとどめた。

 気圧の上昇による海面変動だとすると、通常の地震による津波とは異なる現象と考えられる。この現象は津波と言えるのかどうか問われた宮岡企画官は「そう言ってよいか、ちょっとわからない」。事実、会見で配られた資料の表題は、「大規模噴火に伴う潮位変化について」と書かれていた。

 海面にどんな変化が出てくるか、気象庁も予想がつかない。そもそも普通の津波ではないものに津波警報を出していいものか。宮岡企画官は「是非もふくめ、検討に時間を要した」と語った。」

(引用終り)

 

この朝日新聞の記事を読むと、気象庁のバカっぷりがよくわかる。

つまり、地震によるものじゃないから津波じゃない。「津波のようなもの」が押し寄せているのは確かだが、津波じゃない。だから津波警報は出せない、という派と、いや津波でなくても津波警報を出すべきだという派が侃々諤々(かんかんがくがく)長い時間議論していたようだ。

 

本当にお役所的だと笑ってしまうが、津波でなくても津波警報を出すべき派が漸く勝って警報を発出した。

被害が少なかったからいいようなものの、「津波のようなもの」が押し寄せているのは確かだが、津波じゃないから津波警報は出せない派というよくあるルール順守の頑固役人が勝っていたら、また一番のトップがその考えに賛同していたら、警報は出さなかっただろうし、出しても異常潮位上昇が見られる程度の注意報しか出さなかった可能性がある。そしていわゆる津波が思ったより大きかったらかなりの被害が発生したことだろう。

しかし気象庁は責任回避がうまいというより責任を負いたくないというDNAから、大げさに捉えられてもいいから津波警報を出すべき派の理屈が勝ったように思われる。今回はそれでよかったが。

 

しかし、常識的に考えてこれは「津波」だろう。

トンガ火山噴火による気圧低下とか空振とかでいわゆる「津波」現象を説明して「津波」でない未知なる「津波のようなもの」とあいまいにしているが、火山噴火や地震を理解していないことから来ているのではないのか。

 

そもそも気圧低下とか空振もトンガ火山の噴火に起因している。何だか訳の分からない理由で気圧低下とか空振が生じた訳ではない。つまり、トンガ火山の噴火、トンガの海底火山の噴火をどう見るかだ。

 

石田昭氏の提唱する地震爆発論からすれば、地下深くで起きた爆発現象が「地震」であり、地表近くの海底で起きた爆発現象が「海底火山の噴火」、陸地の山で爆発したものが「火山の噴火」である。

つまり、すべては同一の爆発現象であり、どこで爆発したかの違いで地震と呼ばれたり、火山噴火と呼ばれたりするのである。

 

しかし、気象庁は地震の原因を、活断層のずれとプレートの跳ね上がり(プレートテクトニクス)しか認めていないから、海底火山の噴火を地震現象とは認めない。そして、トンガ火山の噴火をプレート跳ね上がりに起因しているとみなさなかったようだから、今回の「津波のようなもの」の原因を特定できなかった。つまり「津波」は発生しなかったと結論してしまったのである。

しかし、津波が地殻内の地震によって起きるものと定義するなら、今回のトンガ火山噴火もいわゆる地震の形を変えたものなのだから、堂々と「津波」と捉えて構わないのである。

 

今回の事象が気象庁の地震に対する考え方を変えるきっかけになるとは到底思わない。地震学会の定説気象学は確固たる過ち見直す気などさらさらないからである。単に今回の海底火山噴火による津波らしきものを説明する「お話」を作るだけで終わりとなるだけである。

 

気象庁が困っている「津波でないもの」に津波警報は出せないがどうしようかという答えは簡単だ。

津波警報・注意報の「津波」のなかに「なお、気圧低下及び空振に起因する異常潮位変化も含む」と書き加えればいいだけの話である。