少し前にABEMAテレビの番組(「NewsBAR橋下」12.18)に辛坊治郎がゲストで出て、橋下徹を相手に財政や国債について偉そうに語っていた。

 

 

そこで気付いたのは、酒を飲みながらのラフな対談形式だが、辛坊がふんぞり返り、橋下徹が前かがみで辛坊の話を神妙に聞き入っていたことだ、

このことから察するに、橋下徹より辛坊治郎のほうが偉い、つまり橋下は辛坊に頭が上がらない関係にあるように見えた。恐らく、関西で橋下が有名に(初めて世に出たのは日テレ「行列のできる相談所」ではあったものの)なって市長や府知事になって応援してくれたのは辛抱であり、後援会会長のような立場で辛坊は偉そうにしていたのかもしれない。

 

さて、辛坊が偉そうに吼えた中身がヤフーニュースに紹介されている。

 

「俺の意見は極端で、全国民に対して毎年10万バラ撒けと。名目は“消費税還元だ”と言えと。そうすれば、例えば3人家族の世帯が年収330万円だった場合、全額を消費に回せば消費税は30万円になるが、全員に10万円ずつ配っていれば、その世帯は消費税0%になる。もちろん高額所得の人ほど10%に近づくわけだけど、消費税には逆進性があるとか、貧乏な人でも高所得者でも同じ税率だから不公平だという批判は間違っていると思う

と持論を展開した辛坊氏。

さらに

“日本はいくら国債を発行しても大丈夫だ。どんどん国債を発行してお金を作ってバラ撒くよ”と言っている政治家は恥知らず以外の何物でもないと思うし、すごく腹が立つ。国民が使う金は、ちゃんと税金として国民から取り立てればいいじゃないかと。

国債だといったって、借金には間違いないわけで、将来、国民が何らかの形で返さないといけないものだ。

“政府のバランスシート上、国債は負債になるけれど、日銀のバランスシート上は資産になるから、政府と日銀が一体だと考えれば資産と負債でバランスする。だからゼロになる”みたいな議論もあるんだけど、完全なまやかしだ。

 今やっているのは、政府がお札を刷るのにかなり近いことで、これは財政法5条で禁止されていることだ。どうしてもやりたいというなら、“ちゃんと財政法を改正するので、やらせてください。責任は我々政治家が取ります”と言えばいい。政府紙幣発行と同じような、脱法行為に近いことでやり続けて、それを恥じない政治家は許しがたい」。

 勢いの止まらない辛坊氏は

「結果、明らかに通貨が毀損されている。統計上の物価はほんのちょっとしか上がってないけれど、100円ショップに行って糸ようじを買ってみると、こないだは100本100円だったのが、今は70本で100円だ。つまり3割の値上げになっている。お菓子の量だってそうだよ。こないだは30万円ぐらいで売っていたロレックスの時計が、今は100万円を軽く突破している。

物価が上がらない限りお札を刷って借金しても大丈夫だ”というMMT理論があるが、発祥の地のアメリカでは過去40年間で最高の物価上昇率になっている。

バイデン政権は火消し躍起になっているが、ついこの間まで、どうしたら物価を2%上げられるかという議論をしていたのが、あっという間に火が着いて収拾がつかなくなっている。長い人類の歴史を見れば、人間はやっぱり欲の塊だから、物価は必ず上がり始めるし、上がり始めたら止まらない。日本もそうならないという保障はどこにもない」

と訴えた。

こうした主張に、橋下氏は

「アメリカはこれから連邦準備制度の仕組みでインフレを抑えにいくし、賃金も上がっているじゃないか。インフレと賃金が連動すればいいと思う。それから、確かに国債を発行すれば借金にはなるし、やり過ぎはダメだが、政府には通貨発行権があって、経済の規模に応じて紙幣の量を発行できる。そして一部の人が資本家になっているから格差、格差と言われているだけであって、経済成長を目指すという資本主義の考え方に基づけば、貯蓄よりも投資で、広く国民が株を持つ国にならないといけない」

と指摘。

 すると辛坊氏は

「いやいや、アメリカではそうやって物価が上がらなくなっているでしょうと。日本が同じ状況になって喜ぶのは借金している大企業と政府だけで、爪に火を灯すような生活をしながら頑張って貯蓄している人たちが困ることになる。もしやるんだったら徹底的にやれ、できるもんならやってみろと思う。現役世代は毎月、年金の掛け金をどれだけ払わされているんだと。それも政府が札を刷ってくれるなら、いっそのこともう税金を取るなと。年金の掛け金も医療保険も、全部ただにしろと」

と反論。

橋下氏は

「景気を浮揚させるためにワンショットで借金を増やして現金をバラ撒くのはありだと思う。しかしそれをツーショット、スリーショット、フォーショット…とやっていったら大変な問題になる。併せて改革をし、改めるところは改めて、無駄な部分はどんどん無くさないといけない。大阪でも、とにかく小さな所の税金の使い方を見直して、血管の目詰まりを掃除した後に、景気対策のために現金を流す必要があれば流そうということだった。ただし、地方ではお札を刷れない。

今の国会議員はとにかく国債を発行して、財政出動だと言う。一定程度は理解するが、改革をして無駄なところは削らないと。それが全くないことは腹立たしく思う

と応じた。(後略)」

(引用終り)

 

この対談に対し、三橋貴明氏は反論してブログを書く。

因みに、この辛坊治郎は経済について何も分かっていないのに、日本経済について兄貴(住友銀行、投資コンサル等)の指導を受けながら何冊も本を書いている。

辛坊最初の本「日本経済の真実―ある日、この国は破産します」(2010)は、新自由主義・財政破綻論のプロパガンダ本だ。

アマゾン・カスタマーレビューには

「個人攻撃本のようなものです。具体的には三橋さんでしょうか」

「この本を読んで、彼に対する評価は、高いから最底辺まで落ちました」

と批判されているが、当時のこの本の新聞広告に、財政は破綻しないという三橋貴明氏を(名指しはしていないが)「クルクルパー」と罵倒していた。

私はそれを見て、「お前こそ、バカなクルクルパーではないか」と憤ったものであった。

 

三橋貴明氏の反論ブログの題は

「よくもまあ、ここまで平気で「嘘」を主張できるものだ」(2012112.24)

 

「辛坊治郎。こいつは、一体、何を言っているのだろうか。本当にわからない。
 というか、よくもまあ、ここまで平気で「嘘」を主張できるものだ。変な意味で、感心してしまう。
「“消費税還元だ”と言って、全国民に毎年10万円をバラ撒け」「MMT理論、やれるならやってみろ」辛坊治郎氏

 

まずは、国民一人当たり10万円を給付することと、消費税の逆進性の有無は何の関係もありません。
というか、落ち着いて考えてみなよ、辛坊治郎。
A家:年収330万円 消費性向100% 支払い消費税33万円 消費税対年収比率10%
B家:年収1億円 消費性向10% 支払い消費税100万円 消費税対年収比率1%

 

年収が上がり、消費性向が下がると、消費税対年収比率が低下するから「逆進性」が高いと言っているわけです。小学生でも理解できるでしょ。

税金の逆進性とは、「所得が大きいほど、税率が下がる」状況を意味するのであって、言葉の定義からお勉強し直した方が良いのでは?
累進課税って、分かる? 累進課税は、所得が大きいほど、税率が上がるわけで、格差縮小に貢献する。消費税は、逆。分からない?

 

「国債だといったって、借金には間違いないわけで、将来、国民が何らかの形で返さないといけないものだ」と、主張するならば、↓この事実をどう思う。
 

①【1872年-2015年 政府債務の金額及び実質残高(2015年基準)の推移(単位:億円)

 

  日本政府の債務残高(2015年時点)は名目の金額で1872年の3740万倍、実質でも1885年の546倍になっている。これ、単なる事実。
 

②日本政府(中央政府・地方自治体)の長期債務残高(左軸、兆円)インフレ率・長期金利(右軸、%)

 

 2020年度の政府の長期債務残高は、1970年度の166倍になっている。これ、単なる事実。
どうせ、辛坊治郎のことだから、政府の債務は貨幣であり、「借金」ではないことをデータで示されても、ヒステリックにわめきたてるだけなんだろうけど。


「将来、国民が何らかの形で返さないといけない」ならば、なぜ明治以降の債務が、その後、全く「返済」されずに増え続けているのか、説明してくれ
 ちなみに、理由は簡単。政府の長期債務と記録されているデータは、単なる「政府の貨幣発行の記録」に過ぎないためだよ。

 

「今やっているのは、政府がお札を刷るのにかなり近いことで、これは財政法5条で禁止されていることだ。」って、あの~、財政法五条、読んだことある?
『第五条 すべて、公債の発行については、日本銀行にこれを引き受けさせ、又、借入金の借入については、日本銀行からこれを借り入れてはならない。但し、特別の事由がある場合において、国会の議決を経た金額の範囲内では、この限りでない。』


どこに、「日本銀行は金融市場から国債を買いとってはならない」と、書かれているの?

というか、日銀は国債を買い取らないことには、貨幣(日銀当座預金)を発行できないのだが。
そんなに日銀の国債買取に不満があるならば、現金紙幣を使うのをやめたら? 

現金紙幣は、日銀が「国債を買いとる」ことで発行した日銀当座預金が、紙の形をとったものに過ぎないんだよ。


 などなど、上記は本ブログ読者にとっては「常識」だと思いますが、まだまだ貨幣、財政について正しい知識がなく、辛坊のようなヒステリックな財政破綻論者に騙される人は多いでしょう。

その種の人たちに本エントリーを紹介して頂き、「辛坊治郎が言っていることが、どれほど出鱈目なのか」について説明する際の事例、エビデンスにして下さい。


 改めて、辛坊治郎、よくもまあ、ここまで「嘘」を平気で主張できるものだ。本当に同じ人間なのか、率直に言って疑問に感じる。

(引用終り)

 

辛坊は昔三橋氏をクルクルパーと罵倒した。今回は三橋氏が逆襲して、辛坊を「嘘つき」と罵倒している。さあ辛坊よ、どうするか。

この辛坊に対する反論を辛坊は恐らく理解出来ないと思う。そしてどこかで三橋氏をクルクルパーと言って誤魔化すにちがいない。

この対談では、役にも立たない改革を繰り返すにしても橋下徹の方が数段まともだ。

 

この三橋氏の反論を理解するには、素人衆には余程幅広い知識と勉強してないと無理なのである。私も大きな声で「わかった」なんて言えない。「うっすらとわかる」としか言えない。

 

テーマが複数に及んでおり、一つ一つが常識を覆すものとなっているから、少しぐらい勉強してもなかなか追いつかないのである。

私も三橋氏や中野剛志氏、ネットならカリンゴン氏などやその他の著作、論文をかじってもうっすらと分かるのだが、他人に説明するまでは到底いかないのである。毎日MMTばかり考えている訳ではないので。(勉強しない言い訳ばかり!)

 

ましてやというか私も含めて、マスコミが垂れ流し、辛坊が主張する「借金は返すべきもの」「国債が膨れ上がれば財政は破綻し、インフレになる」「国の借金は将来世代へのツケの先送りだ」等々について、理路整然と説明できる人は少ないだろう。

 

しかし、ここ数年、三橋氏や中野剛志氏、藤井聡氏、西田昌司議員、カリンゴン氏等の努力によって、財政は破綻しない、日本円建て国債の債務不履行はあり得ない等々のことが普通の市民も理解し始めるようになった。

それはMMT理論のことであるが、中身はなかなか難しい。これまでの経済学上の常識(また素朴な常識も)を覆すからだ。

難しいのは、例えば「貨幣とは何か」「商品貨幣論(貨幣のプール論)と信用貨幣論」「貨幣は借用証書である」「国債発行の仕組み」「日銀当座預金の重要性」「マネタリーベースとマネーストックの違い」「負債のピラミッド」等々について、ちょっとやそっとでは理解できそうもない。

 

おバカな辛坊(MMTという言葉は知っているようだが、MMT批判の本しか読んでいない)はこんな概念を知る訳がないのである。知っていればもっとまともなことを言うはずだ。

 

私からするとこの内大事な概念は、つまりここを理解出来れば大体理解したことになるのではないかと思う項目は、「貨幣とは何か」「商品貨幣論(貨幣のプール論)と信用貨幣論」「国債発行の仕組み」「日銀当座預金の重要性」「負債のピラミッド」である。

 

特に日銀当座預金は普通お目にかからない代物で、経済学者もよくわかっていないようだ。例えば日銀の異次元緩和による金融緩和、日銀が国債買取してもなぜインフレにならないのか。お金が市中に出回らないのか。それは日銀当座預金を理解していればすぐにわかることだ、等々。

 

辛坊も対談の中でチラッとMMTに言及しているが、辛坊の勉強したのはMMT否定論者のもののはずで、MMTを理解する気が最初からない。だから正しい理解ができるわけがない。

ただ、辛坊の言説が為になることもある。

つまり、素人衆がこの財政破綻論になぜ絡め取られてしまうのか、のいい例を提供してくれていることである。

だから、クルクルパー辛坊の間違った言い分をキチンと理解することが、MMTを一般の人々に理解してもらうための道であるということである。

 

自分だけ分かったつもりになるのは不十分で、相手がどこに躓(つまづ)いているのかがわかることが大事なのだ。

そして理解が進んでくると知的快感に繋がっていく。

 

例えば今日の三橋ブログ(「新世紀のビッグ・ブラザーへ」)の題は次の通りだ。

「2022年を財政破綻論が撲滅された記念すべき年に」

 

この中で、日経新聞の来年度予算の評価記事を引用して、三橋氏は詐欺師の手法を使っていると説く。

「詐欺師の手法は、多数の真実の中に、少数の虚偽を含めるというものです。さすがに、大半を虚偽で染めてしまうと、全く信用されなくなってしまうため、「正しい情報の中に、肝心要の嘘を混ぜる」というのが常套手段です。」

と書いて日経新聞記事を引用する。

107兆円予算、財政膨張どこまで 市場の警戒感は薄く

 政府が24日に閣議決定した2022年度予算案は一般会計が過去最大の107兆円に膨らんだ。政府債務は国内総生産(GDP)比で世界最大。異次元の金融緩和による低金利の環境が財政拡張を支える構図がある。財政の信認は円の信認にもかかわる。微妙な均衡はどこまで保てるのか。(後略)』
『実際には、急な金利上昇(債券価格の下落)が起きるとの見方は少ない。』
『債務国ではない余裕もある。対外純債権は20年末時点で356.9兆円と30年連続で世界最大だった』
『さらに日銀が長期金利をゼロ%に誘導する長短金利操作を続けている。』
『近年注目された現代貨幣理論(MMT)によれば、自国通貨建てで資金調達できる政府は過度なインフレが起きない限り、債務の増大を懸念する必要はない。』
と、(政府債務対GDP比率が世界最大だから、何なのだ?という話は置いておいて)正しい情報を示しつつ、
『世界銀行の20年リポートによると、国債は海外民間投資家の保有比率が20%を超えると価格急落(金利急上昇)の懸念が高まる。
 と、外貨建て国債と自国通貨建て国債の区別をしない「嘘」を混ぜる

昨日も書きましたが、日本銀行は自分の負債を「書く(打つ)」ことで、日本国債を買い取ることができる。資産で資産(国債)を買うしかないプレーヤーが、「負債を書く」だけで国債を買い取れる化け物に立ち向かえるはずがありません。

何しろ、日銀は国債を買う際に、「資金調達」の必要が無いのです。(日銀以外の全てのプレーヤーは、国債を買うために資金(資産)を調達する必要があります)

『通貨が大量に発行されている今の均衡が崩れれば金利の急騰や円安の加速を招きかねない。』
 日本銀行が発行した通貨は、日銀当座預金。我々、民間経済とは「違う世界」の貨幣です。(正直、民間経済に流通しない貨幣(日銀当座預金)を「通貨」と呼んでいいのか疑問があります)

(トラ注 日銀は国債を買う際に、「資金調達」の必要が無いってのは、普通は何言っているかわからない。信用貨幣論、信用創造論の理解が必要となる。
 

 さらりと嘘を織り交ぜ、
『財政の信認は円の信認にもかかわる』
『この数字だけみれば「円離れ」が起きてもおかしくない』
『インフレを制御できるかは誰も証明できていない』
『BNPパリバ証券の河野龍太郎氏は「危機のマグマがたまっている」とみる』
 と、恐怖プロパガンダで読者を煽る

相変わらずの日経新聞なのですが、この種の「詐欺師的手法」の財政破綻論に煽られ、世論を醸成され、我が国は凋落の一途を辿っている。
というか、河野龍太郎、「危機のマグマ」ってなんだ? なぜ、破綻論者は「黒ひげ危機一髪」「タイタニック号」などと、現実のデータと無関係な例を持ち出し、危機を煽るのでしょう。
 実際、危機ではないため、データで危機感を煽ることができないためです。

 

2021年は、間もなく終わります。正直、過去十数年で、最も「財政破綻論の嘘」が拡散した一年だったとは思いますが、まだまだ破綻論者たちは強い。
 とはいえ、自民党に財政政策検討本部ができたことは、確かに大きな前進です。2022年こそ、諸悪の根源、財政破綻論が最終的に撲滅された記念すべき年としましょう。」

(引用終り)

 

三橋氏が「まだまだ破綻論者たちは強い」と言っているのは、破綻論者の「破綻」が目に見えて明らかになっても、マスコミや一般国民はその破綻した財政破綻論をまだ信じ続けているからであろう。

私も財政破綻論は破綻していると思いながら、キチンと説明できないとは忸怩たる思いで一杯だ。

この財政破綻論が日本のみ世界で不況に取り残されて30年も経つわけで、国民の身近な問題になっているにも関わらず勉強していないというのは、私たちの責任でもあるわけだ。

 

来年はもう少し三橋氏のブログやMMT派の論文を理解出来るようになりたい。そして、辛坊のような経済を何も知らないバカの言うことを簡単に論破できるようになるべく頑張るつもりである。

 

来年は、もしできたら体系的ではないが、MMT理論や財政破綻論批判のエッセンスを理解出来た範囲、又は面白いと思ったことをブログにメモとして書いていきたい。