次々と事件は起きるので、もう忘れてしまった大口病院不審死事件が、いま看護婦を被告として裁判が進められていると報じられた。

しかし振り返ると、この事件5年も前のことで当初の事柄が全く忘れ去って報じられていない。

 

「横浜市の旧大口病院で20169月、入院患者3人の点滴に消毒液を混入して中毒死させたなどとして3件の殺人罪などに問われた元看護師の久保木愛弓(あゆみ)被告(34)は1日、横浜地裁の裁判員裁判(家令和典裁判長)の初公判で「すべて間違いありません」と起訴内容を認めた。弁護側は被告が事件当時、統合失調症による心神耗弱状態にあったとした。」

 

あたかも入院患者3人の点滴に消毒液を混入して中毒死させただけの事件のように見える。しかし、当時の関係者はそんな程度の事件ではなかったことを忘れていないはずだ。

 

少しだけ昔の事件の様子を「時事」は伝えている。

時事 2021.10.1

2016年9月に入院患者の男女3人が看護師に相次いで殺害された事件から約5年。現場となった旧大口病院は、事件後に中止した入院患者受け入れを一時再開したものの、現在は休診している。

事件があった同病院の4階では、同年7~9月に48人の患者が相次いで死亡した。容体が悪く回復の見込めない患者が多く入院しており、病院側は当初、事件とは疑わず、死亡患者の点滴の泡立ちに看護師が気付くまで警察に届け出ていなかった。
 事件発覚後の同年12月、病院は一般病床の入院受け入れを中止。17年12月には横浜はじめ病院に名称変更し、18年2月に入院受け入れを一部再開した。しかし、患者らの不安は拭い切れず、19年8月から休診が続いている。運営法人の代理人弁護士によると、再開のめどは立っていないという。

 

大口病院では3カ月の間に48人の患者が相次いで死亡しているのである。しかも、病院は全く問題視せず異常な事態とした通報によって事件が発覚したのである。

ではなぜ入院患者3人の殺害事件としか報道されないのか。

 

当時の週刊朝日

20人以上の殺人が裏付けられれば、国内の犯罪史上もっとも多い毒殺事件となる」

 ここまで捜査が長引いた理由について、捜査関係者はこう明かす。

「発生直後から重要参考人としてマークし、早々に事情聴取を始めていたが、決定的な証拠がなく、身柄を取れなかった。鑑定で久保木容疑者の看護服のポケットからヂアミトールの成分が検出されたのが、16年の暮れ。ただこれもシフトに入っている人間だから決定的ではなかった。」

つまり大量の不審死に証拠が見つからなかったのであろう。

しかし、それでは48人の大量の不審死は解決したとはいえない。

(引用終り)

 

私も昔この事件をブログ記事として書いた。

 

大口病院事件は二人の殺人事件ではなく、最大48人の大量殺人の可能性も?2016103()

 

 以下はネットのニュース。
「横浜市神奈川区の大口病院で入院患者が中毒死した点滴連続殺人事件で、4階病棟では県警の捜査が入った9月20日以降、亡くなった患者がいないことが1日、捜査関係者への取材で分かった。

 7月1日から事件発覚までの約3カ月間には、被害者の2人を含む計48人が死亡、1日に複数人が亡くなる日もあった。神奈川署特別捜査本部は、事件と関連している可能性もあるとみて、経緯などを調べている。

  (中略)
  同病院では20日以降、9月30日に別の階で入院患者が亡くなったが、4階での死亡例はないという。事件発覚時、同フロアには港北区の男性を含む18人が入院しており、その後一部は転院するなどし、新たな入院患者は受け入れていない。別の階で亡くなった患者は司法解剖して不審な点がないか調べている。
 一方、4階で入院患者が死亡するケースは7月以降に増えており、1日に複数人が亡くなる日も相次いでいた。いずれも病死と診断し、警察に届け出ることはなかった。ただ、遺体の大半は火葬されるなどして残っていないという。
 同病院の高橋洋一院長は死亡者数について「やや多い」との認識を示しつつ、「院内感染を疑って実際に検査したが、問題は見つからなかった」などと説明。症状が重い終末期の高齢患者を多く受け入れている性格上、他病院に比べ死亡率は高いとの見方を示す。(後略)」

 

「病院の高橋洋一院長は死亡者数について「やや多い」との認識を示した」とのことだが、この院長がかなり怪しい。犯人という意味でなく、病院に異常が起きていることを知りつつ、何らかの理由で放置していたことだ。

院内感染を疑ったなら、保健所に届けるべきだし、その可能が無くなったなら、なおさら大量死亡の原因を疑わないとおかしい。

 

 新聞記者も阿呆だと思うのは、48人の死亡者数について「やや多い」と述べた院長に何の追及質問をしていないということだ。

 3か月に48人だから、月平均16人の死亡だ、2日に一人死亡だ。この人数が多いか少ないかは、記者が一言質問を追加すれば異常か異常でないかすぐわかることだ。

「6月までの3か月間の死亡者数は何人ですか」又は「6月以前の月平均死亡者数は何人ですか」と。

 何でこんな簡単な質問ができないのか。つまり48人の死亡を勝手に院長のいうとおり「ああこの病院は高齢患者が多いから、他の病院に比べ多いのか。3か月なら3040人の患者が死亡しているのかな」と勝手に判断したのである。新入社員もやらない思い込み判断ではないか。

 

  6月以前と比べてその後3か月の死亡数が極端に多いとその場で判断できたなら、事件の様相は早い時点から異なってきたし、そのように報道できたのではないか。

  その後ほとんど患者が死んでいないのは、新規入院もないこともあるが、大量殺人の可能性も出てきたのだから、6月以前の平均患者死亡数がこれまで以上に重要になったのだ。

もし私の憶測通り、6月以前の患者死亡数が少なく、院長の言う「やや多い」が全くの嘘で「とてつもなく異常な死亡数」ということがわかったなら、もう一度院長に会見を要求すべきなのだ。

  あの院長。最初の会見から何か変だった。あまりに冷静で他人事のような受け答えだった。何か知っていて、隠そうとしている風だった。

その証拠にまだ初記者会見にもかかわらず、3人の弁護士を従えていた。

 普通、事件についてまだ社会的に指弾されてもない段階で、あんなに弁護士を従えての会見はないだろう。余計な言質を取られたくないために、弁護士に記者質問を制御してもらいたかったのではないか。

(中略)

 今回の事件はどういう関係の人か知らないが、異常事態の告発から始まった。横浜市へ告発したが、何も動かない。病院は何もする気がない。ついにしびれを切らしての警察への告発で事件が発覚した。

  横浜市の職員は恐らくいつもの職務怠慢の結果、告発のフォローという重要なことをしていない。病院は今から考えると、組織的隠ぺいに図って事実を表に出そうとしなかった。上手くいけば有耶無耶のうちに終わらせられると高をくくったのかもしれない。

 

  そのまま事件が発覚しなければ、大量殺人はその後も進行し、「大口病院は死神のいる病院」と有名になって、別の意味で名を上げたことだろう。あの院長の責任は重い。犯罪に加担したと同じくらい重いものだろう。

 

   神奈川県警は事件を解決することができるのだろうか。もしできないとすると、大口病院は診療を再開するのだろうか。再開したら、犯人が近くにいることはわかっているのだから、いつ殺されるのかとびくびくして入院を続けるのだろうか。高齢患者がその後亡くなった場合、殺人か病死か毎回警察が介入するのだろうか。

 こんな病院が社会に存続できるのだろうか。残念ながらそんな病院は世間が許さないだろう。

 全く日本の犯罪史上まれに見る殺人事件といえる。一刻も早い解決が望まれる。」

 (引用終り)

 

この記事を書いた時は点滴で中毒死させた看護婦の存在はわかっていない。内部犯行は間違いないのだが、大量死の事件性を誤魔化そうとした院長の異常さをこのブログで指摘している。もし院長がそのまま知らん顔していれば、 死者は更に増えたと思われるからだ。

私はこのブログで新聞記者の杜撰さも指摘しているが、新聞記者は今も同じで自分の頭を使って考えようとしない。

この当時は今ほどネットやYouTubeが発達していなかったのであろう。今なら、YouTubeが徹底的に病院を追及して、犯人捜しをするに違いない。

佳代を詐欺罪で告発したことはどこのマスコミも報じないが、これはマスコミの意図はよくわかることだが、この大口病院事件は単に3人殺害した看護婦の裁判を報じるのでなく、過去の事件そのものも併せて報じないと、この大口病院の事件の異常性が見えてこない。たった5年で忘れてしまうのだから。

 

48人の不審死事件はまさに「コールドケース」(未解決事件)なのである。