旧の「なるほどメモ」のネタがほとんどなくなったので、今後は新「なるほどメモ」を。
新「なるほどメモ」その1(「落穂は拾わない」)
「落穂拾いというのがありますね。ヨーロッパでも農家は落穂を拾わず、わざと残しておくんですね。それを拾うのは、村はずれに仮小屋など建てて住んでいて、下働きをしている登録農民でない者です。ミレーの「落穂拾い」に出てくるのも、そういう人間ですね。最下層の農民を救うために、絶対、落穂は拾わない。これが中世登録農民の心意気です。(会田雄次)」
(「日本史の黒幕」会田雄次・小松左京・山崎正和(中公文庫)より)
ミレーの有名な絵画「落穂拾い」が何を表しているのかの解説になっているのだが、意外と知られていないかもしれない。
「農家は落穂を拾わず、わざと残しておくんですね。これが中世登録農民の心意気です。」というのを読んで、私はいつも気に入らない市役所の資源回収係に「ミレーの絵画「落穂拾い」の意味を知れ」と言いたくなるのである。
というのは、アルミ缶の収集がかなり前から厳しくなって、アルミ缶を持ち去るのは泥棒だ、と市役所が文句を言うようになったからだ。もちろん車でやってきて、ごそっとアルミ缶を持ち帰るのは論外だが、普通は、アルミ缶の収集はホームレスにとって命をつなぐ現金収入の手段なのだ。
昔は、ホームレスが自転車の荷台にアルミ缶を入れた大きな袋を積んで走っていた姿をよく見かけたが、今はほとんど見なくなった。市役所の監視が厳しくなったからであろう。
しかし、アルミ缶の収集によって得られる現金などわずかなものだ。ということは、市役所も同様資源回収で得られる現金もわずかなものなのである。しかしホームレスにとっては貴重な現金収入だった。
そのわずかなものを争って、ホームレスの生活の糧を妨げてどうしようというのか。
現代の市役所は中世の農家にも劣るのである。
「ヨーロッパでも農家は落穂を拾わず、わざと残しておくんですね。それを拾うのは、村はずれに仮小屋など建てて住んでいて、下働きをしている登録農民でない者です。ミレーの「落穂拾い」に出てくるのも、そういう人間ですね。最下層の農民を救うために、絶対、落穂は拾わない。」
しかし、現代の市役所は、自分の出した資源でもないくせに少しの金欲しさに、最下層のホームレスの生活の糧を奪うために、絶対、アルミ缶を拾わせないのである。
ズルして生活保護を掠め取っているものもいる。しかし、ホームレスはアルミ缶を自らの労働で集めて生活の糧にしている。どちらが悪い奴か。市役所はよく考えて、アルミ缶を収集せず、わざと残しておくという心意気を示したらどうなのか、と思うのである。