悪質クレーマー問題は昔から言いつくされているようだが、解決されたためしはなく、恐らく現場では今でも困っているお店や会社が多いのだろう。特にコロナ禍でイラつき、つまらないレジ袋有料化のために、よりバカげたクレームが頻発しているようだ。
そういう動きに対して、読売新聞の社説も悪質クレーム問題を取り上げたのだろう。問題意識はとてもいいことだが、いつもの読売社説らしく具体策もなく、通り一遍の言葉の羅列に終わっている。
私は現役会社員時代に顧客サービス関連の仕事を少ししていたので、クレーム問題には関心がある。
また、もう昔のことだが、名古屋の支社では、CS経営推進部という組織を立ち上げたこともある。
そのとき考えた悪質クレーマー対策の具体的提言を書いてみたい。
まずは読売新聞の社説から。
悪質クレーム 度を越した言動は慎みたい 2020/10/30
顧客からの苦情は、企業のサービス向上に役立つ貴重な意見だが、度を越した悪質な要求や言動は許されない。企業は組織として、従業員を守る対策を強化すべきだ。
客が店の従業員に威圧的な言動をとったり、理不尽な要求を繰り返したりする悪質なクレームが深刻な社会問題となっている。厚生労働省は来年度、企業向けの対応マニュアルをまとめる予定だ。
流通関連企業の労働組合が2017年、約5万人を対象に行った調査では、7割が顧客からの迷惑行為を経験していた。暴言や暴力、長時間にわたる執拗な叱責や土下座の強要、SNSでの中傷などの事例が報告されている。
こうした悪質クレームは、カスタマー(顧客)ハラスメントと呼ばれている。顧客の正当な訴えとの線引きが難しいこともあり、これまで十分な対応が取られてこなかったのが実情だ。
企業の取り組みを促す目的で、国がマニュアルを策定する意義は大きい。どのような行為が問題になるのか、分かりやすい判断基準を示してほしい。悪質なクレームに発展する原因や背景事情の分析を進めることも不可欠だ。
コロナ禍では、マスク越しで声が聞きづらいと店員をどなりつける例のほか、商品を届けに来た配達員に消毒スプレーを吹きかけたケースなどもあった。
感染拡大の不安やストレスを、店員にぶつけるのは筋違いだ。働く相手の立場を尊重して、接することを心がけたい。商品に不具合があるとして、100円ショップの店員を「刺し殺す」と脅した男は、脅迫罪で有罪になった。相手を不当に追い詰める行為は、刑事罰に問われる場合もあると認識せねばならない。悪質クレームが、対応した従業員らの心を深く傷つけていることを軽視してはなるまい。
顧客や取引先からの苦情などで精神障害となり、労災認定された人は19年度までの10年間で100人に上った。このうち35人が自殺している。深刻な事態である。
働く人の安全と健康を守るのは企業の責務だ。現場の担当者任せにせず、社内に相談窓口を整備して、対応を一元化することが大切だ。顧客との会話の録音・録画や、複数での接客も有効だろう。
企業側の対応のまずさが、苛立ちを招いている面もある。企業は顧客の苦情に誠実に向き合うべきだ。顧客の正当な訴えには真摯に耳を傾け、迅速な対応が必要であることは言うまでもない。
(引用終り)
この社説子、書いた中身に概ね間違いはないが、実際にクレームを受けた経験がないだろうし、クレームについて本気で考えている形跡が全く感じられない。おざなりな社説だ。
「感染拡大の不安やストレスを、店員にぶつけるのは筋違いだ。働く相手の立場を尊重して、接することを心がけたい。」
この言葉、誰に向けているのか。クレーマーに対してか。クレーマーに「店員にぶつけるのは筋違いだ。働く相手の立場を尊重して、接することを心がけたい」ってバカじゃないのか。「働く相手の立場を尊重」しないからクレーマーなんだろう。
「店員にぶつけるのは筋違いだ」っていうが、筋違いのことをやるのがクレーマーじゃないのか。そんな奴に、筋違いだ、とか相手の立場を尊重しろ、なんていって反省するクレーマーなんているのか。
まるで、中国が攻めてきたとき、話し合いをしようといえば戦争が防げると言った左翼のようなものだ。学術会議会員も話し合いで戦争は防げると言ったバカがいるらしいが。
「顧客の正当な訴えとの線引きが難しいこともあり、これまで十分な対応が取られてこなかったのが実情だ」なんてバカ言っちゃいけない。「顧客の正当な訴えとの線引きが難しいこと」なんて全くない。
企業は正当な顧客の訴えと悪質クレーマーの線引きは簡単にできるし、やっている。なぜなら、その道何十年というクレーマー経験はどの企業でも持っているからだ。こういうことをしたり顔で言うから、社説子は何もわかっていないで言うんだろうとバカにされる、いや私がバカにしているんだが。
「線引きに十分な対応が取られてこなかったのが実情だ」なんてのは大嘘で、頭のおかしいクレーマー等にのみ十分な対応が取られてこなかったのが実情なんだ。
「悪質クレームが、対応した従業員らの心を深く傷つけていることを軽視」している企業なんてまともな会社ならありえない。如何に悪質クレームから従業員を守るか、日々考えているのが実情だ。軽視なんてするわけがないのだ。
「現場の担当者任せにせず、社内に相談窓口を整備して、対応を一元化することが大切だ。顧客との会話の録音・録画や、複数での接客も有効だろう。」
企業によっては現場の担当者任せにしているところもあるかもしれないが、現場を大事にする企業なら常に対策を考えている。社内に相談窓口も当然整備しているし、問題が大きくなりそうなら対応を一元化するのが普通だ。
私のいた会社では、警察官のOBを何人も顧問として雇っていたし、悪質クレーマー対応には、別室にOB警官を必ず待機させていた。
「顧客との会話の録音・録画や、複数での接客も有効だろう」って、こういうところが、この社説子のバカが露呈するのだ。今の世の中、クレーマー対応で会話の録音・録画をしない奴はおらんやろう。
以上指摘してきたように、この社説子、問題意識はあるがおざなりな考えしかないから、何の役にも立たないことを言っているのである。一つ有益な情報は「厚生労働省は来年度、企業向けの対応マニュアルをまとめる予定だ。」ということだ。
もちろん、国がマニュアルを作ったからといってクレーマー問題が解決するわけじゃない。しかし、国が本気になれば、問題解決の為に警察や弁護士、企業やコンサルタントが知恵を出していくだろうことが期待できるのである。
さて、私の提言を次に掲げる。
これは私が少し前にある人に書いた文章なのだが、そのまま転載したい。
「クレーマー対応策の提案です。
クレーム対応コンサルタントの援川聡さんと知り合いになったのは、今から12~3年前、会社で開かれたクレーム対応の講演会で講師をされたとき、質問をしてその後も少し話をしたからでした。私は当時、〇〇の地域子会社である〇〇サービス東海の社長をしていたのですが、いくつかのお店を運営しており、クレーム対応は喫緊の課題でした。
援川さんの講演の具体的内容は忘れてしまいましたが、強く印象に残ったのは、会場でのロールプレイングでした。「今から私がクレーマーをやりますから、店長さん対応して下さい」とおとなしい声で言った直後、「こらぁ、どうなっとるじゃぁ」と声も態度も豹変してド迫力で迫ってくるのでした。答えるべき店長はびびりまくりで、一言も発することができません。そこで援川さん、また急に元に戻って、「怖いでしょう」と言いながら、そういう時どうするのかと話を進めていったのでした。
援川さんは刑事を辞めてから個人企業のクレーム対応者として、多くのトンデモクレーマーを経験してノウハウを蓄積したようです。いくら脅されても元刑事ですから何とも思わなかったそうですが。
(注)援川さんは今もクレーマー対応コンサルタントとして活躍されています。著作も多くだされています。
さて、私も仕事柄若いときにクレーマーとか恐喝者、やくざと対応したことがあります。(わずかな経験ですが)そんなときに思ったことは、彼・彼女らは素晴らしい心理学者であることです。今ならメンタリストというのかも。つまり、脅される側の心理をよく見抜いているのですね。
因みに、クレーマーにも4種類あって、
①「善意のクレーマー」
②「恐喝者としての(利益のための)クレーマー」
③「精神の病としてのクレーマー」そして
④「正論爺さん、屁理屈・偏屈爺さん」
です。
ここで問題にしているのは、「恐喝者としてのクレーマー」です。
彼らは、サービス提供者の弱みにつけ込んで何か得ようとします。サービス提供者の弱みにもやはりいくつかの種類があって、そもそもクレームの発端である何等かの手違いがあるわけですが、それ以外に、下手に反論すると更にこんがらがる、面倒は早く終わらせたいとか大きな話にしたくない、できればこの場で収めたいとかいろいろです。わずかならお金で解決してもいい等々。そういう気持ちの動きは全てクレーマーにとっては織り込み済みなので、そこを突いてくるわけです。
しかし、私の経験からすると、クレーマーが脅しに使うある言葉が出ると逆にホッとするのです。それは、「出るところに出よう!」「弁護士に訴えるぞ!」です。「行列のできる相談所」が流行らせた「訴えてやる!」です。
この言葉は恐喝者にとっては効き目のある脅し文句と捉えているようです。恐らくこれで成功したことが多かったのではないかと思われます。
しかし、実はこの言葉が出れば、初めてお店側は反撃に出ることができるのです。
「そうですか、わかりました。已むを得ませんね。弁護士さんにお願いしましょうか」と。
クレーマーは言いがかりをつけているだけですから、弁護士に訴えたら負けるに決まっているのです。
だから、「訴えるぞ」単なる脅し文句に過ぎない。
しかし、現実面では中小企業等のサービス提供者らは弁護士に関する知識もないので二の足を踏んでしまいます。もし本当に弁護士が出てきたらと(出てくることは100%ないのですが)ビビってしまうのです。
私のクレーマー対策案とはこのことに関係しています。つまり、ある程度謝罪すべきは謝罪し、ある一定時間過ぎても何ら進展が見られない場合、クレーマーは解決策として金品を要求するのですが(もちろん自分からは絶対に要求しない)、この問題は埒が開かないから「出るところに出よう」という言葉を逆手にとるのです。つまり、客観的第三者に判断してもらうことをこちらから積極的に提案するのです。
つまり、「出るところに出よう」ということの制度化です。
裁判に訴えるとして、大企業なら顧問弁護士がいますが、中小企業では弁護士にすぐに相談する仕組みを取っているところは少ないでしょう。大企業でも現場の問題を即顧問弁護士に訴えることはなかなか出来そうもありません。
要は、今のままでは弁護士はうまく使えないのです。それでは現場のクレーマー対策になりません。
そこで、簡易にクレーム処理をする仕組みを考えてみます。
紛争解決センター、又は苦情処理センターのような組織の設置提案です。国民生活センター、消費相談窓口のようなもののクレーマー特化型機関ですね。
独立性を担保するために、内閣府の管轄とさせ、費用負担はクレーマーに困っている企業やサービス業などを参加企業とし、協賛金を集め、これで組織を運用するのです。委員は弁護士、学者、警察、役人等とし、中立性を保つため、企業の関係者は入れない。
こういう組織が各地にあれば、クレーム問題が起きたらここに持ち込み、審議してもらい、企業に瑕疵があれば潔く服すればよい。そして、審決に不服なら、初めて裁判に持ち込めばいいのです。
これが円滑に運用されれば、お店等はクレーマーに嫌がらせされたら、「この件は紛争解決センターに持ち込みたい」といえば一発解決です。
現場にとって一番の悩みは、クレーマーに業務を妨害されること、長時間居座られて、精神的に参ってしまうことです。クレーマーはこのお店側の弱点をよく知っているため、必ず長時間交渉に持ち込みます。何度も小さな瑕疵を責め、言葉尻を捉えてねちねちと責めます。それに負けるとお店としては、金品を支払ってもこの場を逃れたいという気分になってしまうのです。
クレーマーのほうに問題があってもお店はそれを指摘することができません。もしそんなことをしたら火に油を注ぐようなもので、上司を出せ、社長を出せと要求をエスカレートし、もしクレーム対応をしたことのない上司が出てくれば、即金品解決しますから、それこそクレーマーの思う壺となります。
お店にとって反撃したくても反撃するきっかけがなかなか見当たらないのです。
もし、紛争解決センターというものがあれば、「お客さんのいうことはわかりますが、お店としては納得できません。当事者でない第三者に解決を委ねたいと思います。その措置を取らせていただきます。」と言って反撃に出られるのです。
しかし、恐喝クレーマーは金品を得ることが目的なので、紛争解決センターなんぞに行く気があるわけはありません。頭のいいクレーマーなら紛争解決センターに掛けられる前に「今度だけは許してやる。今度やったら承知せんぞ」と捨て台詞を残して去っていくことでしょう。
もし、紛争解決センターに行こうじゃねえか、と言ったとしても、現場にとっては、クレームはここでほぼ99%解決したことになるでしょう。
紛争解決センターは恐喝クレーマーだけでなく、精神の病のクレーマーに対しても適用できます。
クレーマーは日本の社会を大きく動かす害虫ですが、社会的対応をしてこないことをいいことにのさばっているのです。個々の企業や個人対応では限界があるので、私の提案のような組織的対応が必要だといつも思っているのですが。
(引用終り)
どうでしょうか、読売新聞の社説子より具体策が提案されているのではないでしょうか。
厚生労働省がこの提案に乗ってもらえれば、強力な悪質クレーマー対策になると思っています。