10万円給付が貯金に回ったと麻生財務大臣が発言したのは1024日、福岡市で開いた自身の政治資金パーティーでの講演だった。

「(個人の)現金がなくなって大変だということで、この夏、110万円給付というのがコロナ対策の一環としてなされた。(給付金の効果として)当然、貯金は減ると思ったらとんでもない。その分だけ貯金は増えました。」
「お金に困っている方の数は少ない。ゼロじゃありませんよ。困っておられる方もいらっしゃいますから。しかし、現実問題として、預金、貯金は増えたのです。」

 

この発言は総スカンを食った。

落語家の立川談四楼。

「あんまり腹が立ったので1日置いたが、まだ怒りが収まらない。麻生さんの『10万円給付分だけ貯金が増えた』発言だ。10万円は通り過ぎただけで、羽が生えたように飛んでった現実を知らなさ過ぎる。毎月寄越せという人々の本音に想像すら及ばないのだ。それに施しをしてやったかの口吻はいい加減にしろ」

 経済ジャーナリストの萩原博子さん。

 

「ボーナスは出ない、雇用は厳しい。先行きへの不安が山のようにあるから、みんな貯金に回さざるを得ないのよ。年収500万円の世帯は税金と社会保障で毎年150万円払っている。それだけ納めているのに、給付されたのは10万円。それで威張るなと言いたい。麻生氏は『カネを与えたのに貯金に回すとは何事だ』と言いたいかもしれないが、上から目線のトンデモない話。原資は税金で、麻生氏の財布からではありません。」

 

10万円を消費しようが貯蓄しようが、大きなお世話! 財務大臣のポケットマネーを頂戴したわけでもないし、何でそこまで言われなきゃいけないのか。そもそも全国民に給付すると決めたのは自公による与党でしょ。それを今さらグダグダと男らしくないよ。そんなに税金渡すのが口惜しいか。本当に腹が立つ!」

 

「次を出したくないから、こう発言して世の中を『あの10万円は無駄だった...』的な空気に持っていきたいのかな...? と感じた。その分だけ貯蓄が増えた... はないでしょ? だって使った人も絶対いるわけだから。麻生氏に庶民の苦労や気持ちがわかるわけがない。国のお金をご自身のもの、財務省のものだと思っているのかしら。個人的には、とにかく辞めて欲しい。」

 

麻生大臣の言いたいことは、12兆円支給してもデータを見れば確かに貯蓄額は増加してるじゃないか。総体としては消費に回らず貯蓄したんだ。これはデータだから嘘じゃない。だから、次の給付金は景気効果はないからやれないな、ということだろう。

 

確かに統計数値では、20204-6月期の家計貯蓄は同年1-3月期から急増して80.1兆円、貯蓄率では23.1%と、1-3月期からそれぞれ+55.5兆円、+15.3ポイント増えている。

しかし、自民参議院議員西田昌司氏やMMT解説YouTubeの怪獣カリンゴン氏は、データは全く正しいが、麻生大臣の発言はマクロ経済の仕組みがわかっていない発言だと指摘する。

 

また麻生大臣の発言に怒り狂う市民も立川談四楼の「まだ怒りが収まらない。麻生さんの『10万円給付分だけ貯金が増えた』発言だ。10万円は通り過ぎただけで、羽が生えたように飛んでった現実を知らなさ過ぎる。」も麻生と同様の間違いを犯して批判している。

経済評論家ですらマクロの見方を知らないで間違えているからしようがないとも言えるが。

因みに経済ジャーナリストの萩原博子氏のいう「(給付金つまり1.2億人×10万円=12兆円の支給の)「原資は税金」というのは、そうではなく、国債発行による調達だと思うが。

 

例えば中部圏社会経済研究所研究部長の島澤諭氏が経済学者の立場から麻生大臣を批判する。

「…確かに、内閣府経済社会総合研究所「家計可処分所得・家計貯蓄率四半期別速報(参考系列)」を見ると、20204-6月期の家計貯蓄は同年1-3月期から急増して80.1兆円、貯蓄率では23.1%と、1-3月期からそれぞれ+55.5兆円、+15.3ポイント増えています。

この点、麻生財務大臣のご発言には誤りはありません。

ところで、なにが貯蓄を急増させたのでしょうか?

4-6月期の貯蓄急増を要因分解してみると、麻生財務大臣がご指摘のように、貯蓄の増加額55.5兆円のうち、確かに、特別定額給付金、持続化給付金、家賃支援給付金などが含まれる「その他の経常移転(純)」が+39.1兆円と大きく寄与しています。

しかし、一方で、家計がロックダウン中、消費らしい消費もできず、また、将来の先不透明な中、消費を切り詰めるなどした結果、「家計最終消費支出」(の削減)が+24.9兆円と貯蓄を押し上げています。

さらに、所得が減少すれば、消費水準を維持するために貯蓄に回せるおカネも減ることから、「雇用者報酬」(の減少)が▼11.6兆円、貯蓄を押し下げていることもわかります。

つまり、貯蓄の増加は、特別定額給付金等の影響もあったわけですが、消費の切りつめによる影響も一定程度あったと指摘しなければバランスを欠くでしょう。

しかも、貯蓄をする余裕のある人は何のために貯蓄を行うかといえば、それは将来の万が一の事態(失業など)に備えてなのですから、新型コロナ禍で冬のボーナスの減少が確実視され、今後の所得も減らされることはあってもしばらくは増えないことなどを勘案すると、一人当たり10万円の特別定額給付金をゲットしたからといって、即座にそのおカネを使うことは考えられないでしょう。

特別定額給付金10万円を天から降ってきたボーナスのように、何のためらいもなく使えるのは、年金が比較的多めに貰える(かつて高給取りだった)高齢者や資産家だけなのではないでしょうか?

(中略)

今年の4-6月期といえば、政策的に経済をロックダウンしていた時期ですから、特別定額給付金の10万円をもらっても消費らしい消費もできず、また、将来の先行き不透明な中、消費を切り詰める人も多いので、貯蓄が増えるのは当然です。

したがって、今の時点で多くが貯蓄に回ったからといって特別定額給付金に意味はなかったと判断するのは時期尚早であり、今後、所得が減るなかで消費を下支えするために、特別定額給付金が貯蓄から消費に回されることはほぼ確実であろうと考えます。 (後略)

(引用終り)

 

この経済評論家は、貯蓄の増生活に苦しい家庭の消費の切り詰め又は裕福な家庭による貯蓄の結果と考えている。つまり、家計でものごとを考えている。一見正しいようにみえるが、マクロで見るときは家計でみてはいけない。国家財政も家計の例えで考えるから間違える。それと同じだ。

一般市民や談四楼が家計でみるのはしようがないが、それではいつまでたっても財務省の騙しを覆すことはできない。普通の市民もマクロ的見方を勉強すべきだ。

 

その正しいマクロ的見方を、MMTを提唱する西田参院議員や怪獣カリンゴンが解説する。

西田昌司ビデオレター

「給付金は意味がない?大間違いだ麻生大臣!!

https://www.youtube.com/watch?v=ES8Xrm34p3o&app=desktop

カリンゴンの怪獣でもわかる経済のお話

「麻生大臣の「給付金は意味がない」発言は意味がない(187)」

https://www.youtube.com/watch?v=jhwEjliPcHc&app=desktop

 

この二つのYouTubeをじっくり見てもらえれば、麻生大臣の間違いがよくわかるはずだ。

簡単に言うと、民間の預金残高は消費の多寡を示す指標ではない。民間の預金残高の増加をもって特別定額給付金10万円(12兆円国債発行)という景気対策の効果はなかったというデータではない。消費は民間の預金残高では測れない、ということだ。

ではなぜ民間の預金残高は増えたのか。家計でいう貯蓄のことではないのである。家計でいう貯蓄とは消費しなかった結果であるが、マクロでいう民間の預金残高とは、消費してもマクロの預金残高は増加するということなんである。

 

カリンゴンが言う。

「そもそも政府が国債を発行して財政出動したんだから、国民の預金が増えるのが当たり前なんだ。

国民全体の預金は「10万円×人数分」増えた状態になり、簡単には消えないんだ。

簡単にはというのは、国民全員がその10万円を何かに使ったとしても、国民全体の預金額は増えたままで、無くならないんだ。

山田君が10万円でパソコンを買ってもその10万円はパソコン店の預金口座に移動するだけだ。

山下君が10万円で旅行してもその10万円は旅行会社の預金口座に移動するだけだ。

木下君が10万円でキャバクラで…。

とりあえずはレジに入れても、いずれは銀行に持って行くだろう?

日本全体の銀行預金の総額が減るのは、

①誰かが銀行に多額の返済をしたか

②税金を払うのに使ったか

③大量の現金を銀行から引き出して、タンスの中に移したか

④河原で燃やしたか

このうちのどれかしかあり得ないんだ。

麻生大臣は国民全体の預金総額が増えたと言われた。このことは、つまり多くの国民は①~④までを行った訳ではないということを言っただけだ、ということなんだ。

言い換えれば、預金が増えたのは当たり前で、そのことが10万円を使わなかった人が多かったことを示してはいないということなんだ。

世界第3位の経済大国の財務大臣がこんなことを言われるようでは全くお先真っ暗としか言いようがないんだ。(後略)」

 

どうですか。こんな簡単な説明で麻生大臣の間違い、そしてマクロのお金の動きが分かってしまうなんて、怪獣カリンゴンさんのYouTube解説はすごいと思いませんか。

三橋貴明氏がいつも言っているようにマクロ的にはお金は消えないんだ。家計で見れば、消費したら家計のお金は消えて無くなるが、お金自体が消えたわけではなく、売り手の売り上げとして移っただけだ。

つまり、マクロではお金は無くなっていない。

 

給付金の原資として国債を発行した。これは貨幣を世の中に生み出したのと同じだ。だから、この発行分の金額は世の中の預貯金を同額分増加させていることになる。

だから、給付金12兆円分は預貯金額を増加させたのは当たり前なんだ。その12兆円が使われたか貯金されたかに関わらず預金額は増加をするんだ。

それを麻生大臣はマクロの金の動きを理解していないから(財務官僚も知らないのかも)、家計の見方で預金額の増加を捉えて、「これは消費せずに貯金に回してしまったんだ。だから給付という景気対策は効果がないんだ」と短絡的に考えてしまった。マクロを知らないから。

談四楼も萩原博子も島澤諭もみんな家計の見方で預金額の増加を見てしまったのだから、みんな間違いなのである。

 

さて、給付金の支給は必要な人は大いに使って、需要を押し上げるが、裕福な人は給付金を消費に回さないかもしれない。そんな曖昧な景気効果では困ると麻生大臣がいうなら、最も効果的な景気対策があるのである。

それがアベノミクスの第二の矢、財政の積極出動ではなかったか。これなら完全に需要に直結するのだ。アベノミクスの失敗は一番大事な財政の積極出動を無視した。一番効果的な対策を無視したのである。財政健全化というバカげた思想のために。

 

国債を発行したら預金額が増加することが誰の目にも分かったのが、この給付金の支給だった。これは国債を発行したからだ。つまり国債の発行こそが国民の預金額を増加させるのである。国債を発行して、財政出動すれば、需要が増加し、景気は良くなり、預金額は増加するのである。

 

この辺のところは、ぜひカリンゴンの怪獣でもわかる経済のお話YouTubeで勉強してほしい。

とっても分かりやすく、経済の仕組みが解説されていて、勇気が出ること請け合いである。

私もこのカリンゴン氏にお世話になっている。