秋田県湯沢市では菅新総理大臣就任を祝って提灯行列が行われ、横浜の商店街では紅白まんじゅうが配られたとか。

でも皆さん、「叩き上げの苦労人」といわれる菅新総理に騙されちゃいけませんぜ。

もうこのブログでも菅氏の経済政策批判を三橋貴明氏からの引用等で行いましたが、そもそもアベノミクスの継承ということでアウト、その他本人の権力志向丸出しでもアウトの首相なのです。

 

菅は、観光立国(インバウンドで更に中国ヨイショ)、カジノ立国(横浜で無理やり導入)、最低賃金強制引き上げと中小企業淘汰(韓国文在寅の失敗を再演)、中小企業基本法の改悪(中小企業は潰す)という間違った経済政策を推し進めようとするだけでなく、三橋貴明氏が

本日、菅内閣が発足することになります。結果的に、少なくとも「短期」では日本が没落、衰退、解体の方向に向かうのは避けられないでしょう。理由は、三つ。

1.緊縮財政が継続する

2.これまで以上に構造改革が進む(特に、中小企業改革)

3.国家観なき政策が、内閣人事局を活用し、強引に推進される

 の三つでございます。」

 

と述べている。最後の「内閣人事局を活用し、強引に推進される」とは、最近言われ始めた気に入らない役人は左遷するということのようです。

 

三橋氏が続けます。

「 すでに、菅総理は政策に反対する官僚は「異動(=左遷)」すると明言しています。
官僚「政策反対なら異動」 菅官房長官
 自民党総裁選で優位に立つ菅義偉官房長官は13日のフジテレビ番組で、政府が政策を決めた後も反対する官僚は異動させる方針を示した。「私ども(政治家は)選挙で選ばれている。何をやるという方向を決定したのに、反対するのであれば異動してもらう」と述べた。
 内閣人事局の在り方について、菅氏は見直す考えが「ない」と明言。同局は、中央省庁の幹部人事を一元的に扱い、政治主導の象徴とされる一方、官僚の忖度につながっているとの指摘もある。(後略)』

 2015年から本格化した「日本の食料安全保障を破壊する」農協改革・農業改革は、菅官房長官(当時)主導でした。「日本の食料安全保障を破壊する」農協改革に、多くの農水官僚は反対をしていました(当たり前ですが)。
 すると、菅官房長官は農水省において、「農業が産業化し、農水省が要らなくなることが理想だ」と、頭のおかしいことを言っていた小さな政府主義者(要は新自由主義者)、傍流の「奥原正明」を強引に事務次官に据えたのです。
 農水省というか「国家の関与」を無くし、農業を「市場」に任せ、いかにして「食料安全保障」を守るというのでしょうか。モンサント(現バイエル)のようなメジャー企業が、日本人の生命の根幹を握ることになるに決まっています。食料安全保障が、完全に「独占的ビジネス化」する。素晴らしい未来ですね。というわけで、奥原は農水省では出世コースから外れ、2015年に同期の本川一善氏が事務次官に就任。慣例に従えば、奥原は退官するはずでした。

 ところが、そこに内閣人事局の権力を振りかざし、菅官房長官が介入。本川氏は一年も絶たずに退任させられ、後任に奥原が就任。しかも、普通は一年任期のはずの事務次官を、奥原は二年も務め、日本の農業破壊に多大なる貢献を果たしたのです。農水省内で、奥原に逆らった農水官僚たちが左遷されていったのは言うまでもありません。」

(引用終り)

 

日本では役人、特に中央の官僚は悪人とされていますから、というかマスコミがそういう論調を作ってきたのですが、菅新総理が「政策反対なら異動」つまり左遷、というのは、官僚の反対に抵抗する強い新首相としてマスコミは「頼もしい」と持ち上げるのです。当然野党立民党も中央役人はダメだと考えていますから、この点では菅を応援することでしょう。

 

確かに、前川元文科省事務次官のようなデタラメ官僚もいれば、財務官僚のように増税することが出世の近道と考える売国役人もいます。しかし、全ての役人がバカで抵抗勢力というわけではない。日本という国家のためを思って仕事をしている役人も沢山いるのです。

三橋氏があげた農水省の例は余り知りませんでしたが、これをみると、菅氏は人事介入だけでなく、農業思想、食糧安保といった国家観に欠けている、むしろ米国企業が喜ぶことに反対する役人を粛清しているようです。

 

三橋氏はもう一つの役人左遷の事例を挙げています。

さらに、総務省の「ふるさと納税」。

 多くの日本国民が理解していないように思えますが、ふるさと納税は「緊縮財政」の一環です。緊縮財政により、日本政府は地方交付税交付金を減らし続け、地方行政が財政難に陥った。それを受け、ふるさと納税の制度が創設され、「政府はもはや地方自治体の面倒は見ない。ふるさと納税で、地方自治体は国民の税金を奪い合え」という残酷な政策なのです。

 まさに、地方財政に「自由競争」の原理を導入したわけですが、結果的に、「元々、強い自治体は高額返礼品でより多額の税金を獲得し、弱い自治体は税金を十分に確保できない」事態に陥るのは当然です。地方自治体間の、格差拡大ですね。

 さらに、自治体間の返礼品競争が激化することは、制度発足時から誰にでも予想がつきました(実際に、激化しました)。その上、そもそもふるさと納税は、税制の「受益者負担の原則」にも反しています

 というわけで、地方自治を担当する総務省では、ほぼ全ての官僚がふるさと納税の拡充に反対しました。ところが、2014年、総務省で自治税務局長を務めていた平嶋彰英氏が、菅官房長官に対し直接、制度上の問題点を指摘したところ、翌年7月に自治大学に異動になってしまったのです。元々、平嶋氏は総務省の事務次官候補でしたが、省外に追い出されてしまった。
菅官房長官に意見を上申すると、それがどれだけ正しくても、報復人事を受ける。霞が関の官僚たちは、震え上がります。」

(引用終り)

 

この件は全く知りませんでしたが、強く抵抗して左遷された総務省で自治税務局長を務めていた平嶋彰英氏は、文春オンラインでその間の事情についてインタビューで詳しく答えています。

その中で、菅官房長官にいくら問題点を指摘しても全く聞く耳を持ってくれなかったと。

 

まあ、ふるさと納税の是非は横に置いておくにしても、一般の企業でトップと議論をして、反対する幹部を、気に入らないからと言ってすぐに左遷するでしょうか。

オーナー企業ならやるでしょう。その結果は全てオーナーが負えばいいのですから。普通の企業では反対されたからといって、即左遷はしないでしょう。もしするとしたらそんな会社は衰えていくはずです。半沢直樹の銀行はどうだったのでしょうか。よく知りませんが。

 

この菅氏の手法は、強いリーダーシップとして称賛されるべきでしょうか。

私は第一には、強さよりも中身が大事だと思っています。

例えば、国益を大事にしようと、菅氏が主張するときに、役人が「否、米国(又は中国)の意向に従うべきだ」と主張して対立したとき、強いリーダーシップを取ってはいけないでしょうか。反対を押しても自分の信念を貫くべきでしょう。

 

しかし、どちらの主張が正しいのか、それは簡単にはわからない。だから、長い時間をかけても論議が必要だし、反対したからといって左遷はよくない、恐怖による操縦はだれも言わなくなるのは当然です。

 

ここで、唐の太宗の「諌議大夫」を思い出します

私の大嫌いな出口治明が「座右の書『貞観政要』 中国古典に学ぶ「世界最高のリーダー論」」(角川新書) という本を書いています。この本は当然読んでないけど、山本七平の「帝王学 「貞観政要」の読み方」 (日経ビジネス人文庫)は読みました。

 

『貞観政要』には、君主にとって耳に心地よくないことも直言してくれる「諌議大夫」を置いて、太宗自ら様々な課題について、諌議大夫に意見を聞いています。

そして、太宗は結構、諌議大夫の意見を取り入れているのですね。素晴らしい皇帝ではありませんか。気に入らないこと、怒りを催すことも言われたことでしょう。でも、君主が権力に溺れたり、国を傾けたりすることを阻止できると諫議太夫を制度化したのです。

 

私も現役時代に経験があります。部下のある課長が私の意見に反対するのです。しかし、よく聞いていると、単に反発して意見を言うのでなく、諫議太夫の役を意図的にしているなという風が覗えるのです。恐らく、この課長、といっても私より年下なのですが、もしかすると「貞観政要」のことを知っていたのかもしれません。

 

しかし、ふつうトップ又はリーダーは反対されることを好まない。誰も諫言など聞きたくないし、鬱陶しいわけです。そんな諫言を聞くことが出来るのは、恐らく、幅広い経験と能力と深い知恵と自信があるリーダーつまりある意味、余裕があるリーダーだろうと思われます。

逆に言うなら、反対されたら、左遷するようなトップは、余程心が狭く、自信がないトップと言わざるをえません。強権でしか自分の力を示せないなんて余裕がない、能力がない証明です。つまり菅新総理のことですな。

 

三橋氏の続きです。

「さて、上記のような実績を誇り、さらには、「日本国民を分断する、アイヌ新法」を、「先住民族に興味を持ってもらい、そのことを発信する。国際親善、国際観光に大きな役割を果たせる(菅官房長官)」 というノリで推進した。

 国家観がなく、国家の官僚制度に対する理解もなく、ナショナリズムを破壊する政策を「インバウンド」とやらのために平気で推進する(推進した)人物が、我が国の内閣総理大臣に就任するのです。

 

三橋氏は最後に「実に、心温まる未来が待ち構えて良そうです。ワクワクします。何とかしなきゃね。」と皮肉っぽく指摘します。

そして「とりあえず、支持率を引き下げるのです。そのためには、本エントリーに書かれたような「事実」を国民が知らなければなりません。皆様、「事実」の拡散にご協力ください。

この政権を長続きさせてはなりません。」と。

 

これが結論です。新首相誕生だからといって浮かれてて、いいのですか、と。

新聞やテレビでは菅新首相の考え方は絶対に伝わってきません。自分で調べて真実を知る努力をしなければなりません。

 

あ、そうそう。なんでこんな男が安倍首相の後継に、あれよあれよとなってしまったんでしょうか。

派閥の思惑と石破の排除等々。様々な力学の結果、最良ではなくとも、最悪を避けて菅氏が押し出されたわけですが、余りに日本国家の次期リーダーが払底している証拠だといえます。

 

これって中国の習近平が胡錦濤の後継に選ばれた理由に少し似ているとは思いませんか。

中国では、胡錦濤の共青団派、江沢民派、習近平の太子党派が凄い権力闘争をしていて、なかなか胡錦濤の後継が決まらなかった。そこで、共青団派と江沢民派が手を打って、一番無難な何もしないであろうボーっとした習近平に一旦主席をさせてみようじゃないかということになったのです。

つまり、習近平は菅氏のようにダークホース的存在だった。

 

しかし、豈(あに)図らんや、習近平は腐敗・汚職撲滅運動を大々的に行い、共青団派、江沢民派の主なリーダーや解放軍のトップを排除して、習近平自派の力を拡大していった。そして長期政権になろうとしているわけです。

その例で言うなら、菅新首相は、安倍晋三のピンチヒッターどころではなく、派閥均衡をうまく操作して、長期政権になる可能性があるのではないでしょうか。

もしそうなれば、三橋氏の怖れるごとく、日本が更に衰亡していくことは間違いない。

もう一度言います。

「浮かれている場合じゃありませんぜ」