安倍首相の突然の辞任で、反アベ活動家の声が「アベ辞めろ」から「アベ逃げるな」となったようだが、文句をぶつけたい壁がなくなって拍子抜けしたのは確かだ。

 

別に死んだわけでもないのに、安倍首相を偲んでの安倍政権評価ははしゃぎ過ぎだ。支持率はウナギ登りで、JNNTBS系)で安倍内閣支持率は62.4%、読売新聞社は52%、朝日新聞調査ですら、「評価する」の合計が71%となった。

 

あれだけ叩いていたマスコミも安倍政権の政策をべた褒めし、ネットもその傾向が多い。

しかし、三橋貴明氏その他データに基づき冷静に評価しようとしている人達も多い。

三橋氏は安倍政権の8年を以下のように広い分野で厳しく評価している。

マスコミも少しは見習ってほしいものだ。

 

(「新経世済民」2020.8.31より)

「安倍総理のレガシー(業績)について、考えているのですが、業績というならば、「国民のためになった」政策でなければならないはずです。2013年以降の、安倍政権の「政策」について、振り返ってみましょう。

・緊縮財政系:
プライマリーバランス(PB)黒字化目標。

(⇒三橋氏はPB黒字化は国民赤字化つまり国民貧困化と非難しています)
新規国債発行減額。(⇒アベノミクス二本目の矢違反)

二度の消費税増税。(需要の大幅減)

「公共投資、地方交付税交付金、科学技術予算、教育支出、防衛費、防災費、診療報酬、介護報酬」の抑制あるいは削減。

公共病院統廃合と、病床(ベッド)の削減。
国民の社会保障負担の引き上げ(高齢者の窓口負担引き上げなど)。

・規制緩和系:
労働規制の緩和(派遣拡大、高度プロフェッショナル制度(残業代ゼロ制度)等)

コーポレートガバナンス改革。
混合診療(患者申し出療養)拡大。
水道など公共サービスの民営化。

グリホサートの安全基準引き上げ。
種子法廃止、農協改革、農地法や農業委員会法の改訂、漁業法改訂。
国家戦略特区、電力自由化。
民泊拡大や白タク解禁の検討。
シェアリング・エコノミー推進。

IR法(カジノ解禁)、法人税減税(法人税減税は「企業への徴税という規制の緩和」という意味で、規制緩和の一部を成す)。

・自由貿易系:
TPPや日米FTA、日欧EPAなどの自由貿易協定。出入国管理法改訂による移民受け入れ拡大。観光業のインバウンド(外国人観光客)依存推進のためのビザ緩和。外国人の土地購入推進。

 

緊縮財政、規制緩和、そして自由貿易、グローバリズムのトリニティをここまで推進した政権はありません。小泉政権以上です。結果的に、東京一極集中と実質賃金の低下が進み、少子化がひたすら進行。日本の2019年の出生数は、2012年と比較し、何と17%も減少。2013年以降、日本では一年間に生まれてくる赤ちゃんの数が、17%も減ってしまったのです。亡国の内閣。以外の感想が出てきません。

第二次安倍政権発足以降に、出生数が急減したのは、もちろん「実質賃金下落」と「東京一極集中」という少子化の真因を放置するどころか、加速させたためです。

もっとも、現在のグローバリズム路線が続く限り、誰が政権を担おうが、出生数の減少は終わらないでしょう。つまりは、将来的には日本人消滅確定です。

 

東京一極集中を解消し、日本国民の所得を、安定的に、継続的に拡大する。これが、日本人が存続する唯一の道なのです。

具体的には、財政拡大、消費税廃止、地方へのインフラ整備拡大、地方交付税交付金の増額、移民受入禁止、国内の安全保障関連(農業含む)産業の徹底的な保護、労働規制の強化、などになります。

地方への投資を拡大し、同時に経営者(私もですが)を、「人手不足を解消するためには、投資を拡大し、生産性を向上。高い給与で「日本人」を呼び込むしかない」状況に追い込むのです。

つまりは、安倍政権の過去七年間の政策の「真逆」をやればいいわけでございます。」

(引用終り)

 

確かに安倍首相は外交等ではこれまでの首相と比べ格段の成果を残したと思われる。しかし、肝心な日本国民にとっては外交より大事な、国民生活、国民経済を豊かなものにすることに完全に失敗している。

マスコミが安倍首相辞任、しかも病気辞任ということで8年の政権時代を叩くのを控えめにすることはわかるが、安倍政権の経済政策については、マスコミはそもそも新自由主義的でグローバリズム賛成で緊縮財政賛成、消費税増税大賛成だから、批判する視点など全く持っていないのである。

 

辞任直前まで、マスコミも含めて「アベガー」「アベ辞めろ」と騒いでいたのは、単にモリカケ、桜のみのバカげた項目だけだった。だから本音ではマスコミは安倍政権の政策、憲法と中国・韓国政策は除き、特に経済政策については、100点満点をあげていたのである。

こんな体たらくだから、経済政策が国民の為に全くなっていなくても、マスコミは非難しないので安倍政権としてはやりたい放題だったのである。その結果日本の貧困化の促進だった。

 

ネットに冗談だけれども、安倍首相が言ったとか言わないとか。

「辞めてストレスが減少したら、体調がよくなった。そして安倍政権がこんなに評価されているなら、辞めなきゃかった」

そうそういう見方も冗談ではないかもしれない、ということが書かれていた。

中国及び経済評論家の宮崎正弘氏である。

 

主人(あるじ)が病気療養中は「番頭」が取り仕切る 安倍晋三、三度目の復活を視野に入れての辞任ではないのか?(「宮崎正弘の国際情勢解題」2020.9.6

 桂太郎は三回、政権を担った。長州の武士出身で、軍人としても活躍し、安倍晋三が記録を更新するまで歴代最長の内閣だった。伊藤博文は四回、政権を担った。ふたりとも長州という出身地が強運をもたらしたが、安倍首相も、その長州(山口県)が選挙区である。
 戦後も吉田茂は退任後、また返り咲いて、安倍晋三の先例となった。吉田への毀誉褒貶も多いが、GHQを相手にしたたかな粘りの政治だった。外交官時代に国際感覚を磨いたのだろう。吉田は土佐っぽ、明治維新の原動力とはなり得なかったが、薩長土肥といわれたように、ある意味では佐賀鍋島藩のエリートを出し抜いた。しかし武市瑞山、坂本龍馬、中岡慎太郎ら先達の犠牲があった。
 だとすれば、安倍晋三が三度目の復活をねらって、しばし表舞台から身を引いても、捲土重来の可能性は大いにあるだろう。
 主人(あるじ)が病気療養中は「番頭」が取り仕切るのは常識であり、安倍晋三首相、唐突な辞任表明のあと、自民党内はいきなり五派閥が「とりあえずは、管でいいか」となって管を支持した。あまりにも早い決断なので、つい裏読みしたくなるのである。
 意表を突くほどのスピーディな、しかも短時日で次期後継が決まるというミステリーをみていると、三度目の復活を視野に入れての辞任ではないのか?」

(引用終り)

 

菅にほぼすんなり決まり過ぎたことが疑惑を呼んでいるということか。なるほどねえ。

「三度目の復活を視野に入れての辞任」の可能性はある。

しかし、蓋然性はどうだろうか。30%ぐらいか。もし本当に三度目の復活しようとしたら、やはりその時はマスコミは総動員で反対の音頭をとることだろう。世論もそんなに甘くはないはずだ。

 

まあ復活の可能性はないのだが、小泉純一郎が首相の時にやったトンデモナイことを総括しなかったから日本の進路変更ができなかった。今回も安倍政権の正しい総括がなければ、安倍晋三の復活があろうがなかろうが、更に日本が亡国の道を突っ走ることは間違いない。