持病が辛かったにも関わらず、総理大臣としての大役を長期に成し遂げたことは戦後の首相としてはトップクラスと評価したい。まずはご苦労様でした、といっても明日直ぐに辞めるわけではないけれど。

 

悪夢の民主党政権から奪還した安倍首相には大きな期待が寄せられたし、その時の選挙への熱狂はすごかった。様々な課題を安倍首相が解決してくれると多くの国民が期待した。

そして当初は期待通りの政治をしてくれて満足だったから、いくつかの国政選挙に自民党は圧勝し続けた。アベノミクスに象徴される政策が文字通り行われれば、日本は必ず回復するだろうと期待した。

 

「大胆な金融政策」「機動的な財政政策」「投資を喚起する成長戦略」のアベノミクス三つの矢のうち、一番大事な「機動的な財政政策」は初年だけでその後は全く省みられることなく、財務省のいいなりの緊縮財政と消費税増税に邁進したため、デフレ脱却なんぞ全く不可能となってしまった。実質賃金は落ち込み、需要は減少し、しかも緊縮財政という日本経済を落ち込ませる政策ばかりで、アベノミクスの一番大事な部分を捨ててしまった。

 

それを誤魔化すために、株価を上げることに血道を上げ、需要減を支えるため観光立国という中国人訪日誘致という害毒をまき散らした。そしてTPPやグローバリズム政策、移民拡大、新自由主義政策という日本を破壊する政策が、あの日本国民の期待を担って浮かび上がった安倍首相によって堂々と行われたのである。

 

緊縮財政と消費税増税の組み合わせは誰が見ても需要を落ち込ませ、不況を招来することが分かり切っているのに、強行してしまった。その結果全く世界で日本だけが極端に成長がストップしてしまった。

しかし、安倍首相としては、経済政策の成功を訴えなくてはならないから、株価がこんなにも上昇したじゃないかと経済政策の失敗を認めることができなくなった。現実を見る目を失ったのである。

 

「大胆な金融政策」はいくらやっても実需に効いてこないから、日銀頼みで異次元緩和をしても意味がなかった。デフレは貨幣現象だ、という誤った理論を安倍首相は信奉してしまい、経済政策の方向を誤った。

デフレは金融政策で変えられると信じてしまい、デフレが金融政策で変えられるならば、財政は緊縮だろうが構わないという財務省が泣いて喜ぶ政策を進めたのである。

 

経済評論家三橋貴明氏は、安倍晋三氏が首相になる前の一議員の時、デフレがなぜ起きてどのように脱却するか、積極財政の必要性を直接何度も説明したという。

しかし、本当は全く理解していなかったのだ。これではだめだ。安倍首相は、財務官僚に騙されたのではなく、経済の仕組みを理解する能力に欠けていたのだ。頭はわるくないはずなのに、なぜ?

 

三橋貴明氏がネットで以下のように書いている。

「…結果、2013年6月に、骨太の方針2013において「プライマリーバランス(基礎的財政収支)黒字化目標」が閣議決定され、我が国は消費税増税、介護報酬・診療報酬・公共投資削減という緊縮財政の道を歩み始めました。総需要が不足するデフレの国において、橋本政権同様に総需要を減らす政策を安倍政権は強行したのです。

当たり前の話として、2016年以降、我が国は再デフレ化してしまいます。

反対側で、日本銀行は320兆円を超す日本円(主に日銀当座預金)を発行しましたが、2016年のインフレ率はマイナスの海に沈みました。

日本銀行が市中銀行から国債を買い取り、日銀当座預金の残高を増やしたところで、モノやサービスが購入されているわけではありません。モノやサービスが購入されなければ、消費・投資という需要は拡大しないため、インフレ率が上昇するはずがないのです。

そんな当たり前のことを政治家が理解せず、「デフレは貨幣現象」という出鱈目に騙され、元々は「デフレ脱却のためには財政出動が必要」と主張していた政治家が、次々にひっくり返っていきました。

財務省が、「デフレは貨幣現象」といういわゆるリフレ派理論を、緊縮財政推進のために利用したのは疑いありません。」

 (引用終り)

 

安倍首相のこの経済政策への無理解を、政権の経済ブレーンのせいだと言い訳することはできない。内閣官房参与には積極財政を勧める藤井聡京大教授や本田悦朗氏(大蔵省出身だが積極財政派)がいたのに全く見向きもしないで、アホのリフレ派経済ブレーンのことばかり聞く安倍首相に問題があったのである。

だから、経済政策の失敗は、正しい選択肢があって、それを選ぶことができる権限を持っていても、そうしようとしなかった、つまり経済の理解力に欠けていた安倍首相に多大な責任があるのだ。

 

それ以外でも中国に対しては、経団連や二階などの媚中派に安倍首相は寄り添いすぎた。習近平国賓招待のような恥ずかしいことが避けられたのはただコロナ禍のお蔭であった。もし、香港問題やトランプの対中国政策を無視するような習近平を国賓として招待したら、米国との関係はかなり悪化したことだろう。

 

日本人にとっては、外交政策よりも国内の経済のほうが大事だ。それを消費税増税の強行といつまでも緊縮財政を実施し続けて、日本を貧困化したのは安倍首相の失政の責任である。

今名の出ている首相候補者たちは全て緊縮財政派のようなので、日本のデフレ脱却、貧困化脱却は全くの望み薄といえる。

 

だからこそ、安倍首相が、当初少しは理解を示していた積極財政をそのまま進めていたら日本は本当に復活していたはずなのに、それを裏切ったのは安倍首相を経済政策面で全く評価できない理由なのである。

 

是非とも一議員となった時、もう一度虚心に経済政策を勉強してほしい。三橋貴明、中野剛志、藤井聡氏等からもう一度正しい経済理論、特にMMTの講義を受けてほしい。

そして、懺悔してほしい。「ああ私の経済理解は小学生以下だった」と。

 

そして自由な立場から財務省の間違いを正し、今自民党内のデフレ脱却を目指す若手議員たち(「日本の未来を考える勉強会」代表の安藤裕衆議院議員)の仲間に入ってやり直してほしい。これが安倍晋三の日本国民への罪滅ぼしになるはずなのである。