習近平の中国はこれまでの中国と異なり、激しく世界を支配しようとして多くの失敗を仕出かしているものの、更に習近平のなりふり構わない権力維持とトランプのアメリカに対抗して破滅の方へ突っ走っているように見えます。
習近平は、これまでの中国のうまいやり方(才能を隠して、内に力を蓄えるという韜光養晦(とうこうようかい)という方針)はかなぐり捨てて、衣の下の鎧ならぬ、もろに鎧を見せて動き回り、世界の顰蹙を買う始末です。
中国内の権力闘争は熾烈であり、可もなく不可もなしで選ばれた習近平が思わぬ牙を剥きだして、長老や他の実力者たちをうまく追い落とした。江沢民派や共青団派はもはや既に壊滅状態で、習一強体制が完成したといわれています。
習近平独裁は完成したように見えるのですが、それでも今でも長老らが集まる夏の北戴河会議の動向が話題になる。北戴河会議とは長老らによる現政権への口頭試問のようなものでしょう。
独裁といいながら、政策を長老らにチェックされる。これは中国的ではあるものの、政治プロセスからすればとても好ましいものといえないでしょうか。
反対派は皆銃殺してしまう北朝鮮の金正恩の独裁は本当の独裁ですが、韓国文在寅の三権を掌握した独裁は、全くチェックの効かないぶん、独裁度が極めて高くて、危険です。安倍政権は自民一強と言われながら、安倍に権力があるとは到底思えず、二階が相当部分の権力を握っており、そのチェックを誰も出来ないという、権力が隠されている黒幕独裁。
そういうふうに見てくると、圧倒的な独裁権力を持つ習近平に文句を言えるシステムとは不思議で且つ好ましいと思えるのです。
今日のブログ「農と島のありんくりん」に北戴河会議について書かれていました。
「去年はまだ朱鎔基ら長老組が習にこぞって「10の質問書」をつきつけました」と書かれていますが、本当でしょうか。その会議は最高機密であるはずなのに、そんな情報が流出するんでしょうかねえ。
まあ、本当のこととしてみてみると、この「10の質問書」なんて素晴らしいものです。日本の安倍首相にも真剣に「10の質問書」を突きつけて、本音の議論を戦わせてくれたらもっと日本はよくなるでしょうに。
「今年の北戴河会議、長老から匙を投げられた習」(2020.8.13)
…去年はまだ朱鎔基ら長老組が習にこぞって「10の質問書」をつきつけました。いまになって見るとなかなか渋いものではあります。
●2019年の北戴河会議における長老組の「10の質問」
① 香港問題は最終的にどういう決着をつけるのか?
② 中国経済はこのまま下降していくのか。中国共産党は来年もあるのか?
③ 高圧的な統治のやり方で、中国社会を、中国共産党は来年も支えることができるのか?
④ 米中関係がこのままで、中国共産党は来年まで乗り切れるのか?
⑤ もし、新疆やチベットの少数民族の人民が、突然全員でデモを起こしたら、中共は再度、鎮圧できるのか?どのように解決するつもりか?全員捕まえるつもりか?
⑥ 中国共産党内部の人々は誰もが自分の身の危険を感じている。党内でネガティブな意見を引き起こし、海外勢力の影響もうけたとき、中国でもし、内部性の動乱や暴乱が起きたらどのように解決するのか?
⑦ 中国共産党はこのままインターネットやソーシャルメディアをコントロールできるのか?
⑧ 中国の財政赤字と外債が、もしダブルではじけたら、どういう結果になるのか?
⑨ 米国をリーダーとした西側社会が、もし中国に対して海外に所有する国家資産を違法資産と見なして、封鎖したら、どう対応すべきなのか?
⑩ 中国共産党の現在の国家安全委員会制度が、実質、政治局や政治局常務委員を排除するものだとしたら、このモデル(集団指導体制)は継続していくのか?
この「10の質問」は、長老たちが「来年はまだ共産党体制は続いているのか?来年、北戴河会議でまた我々は会えるのか?」と習近平に詰め寄ったものでした。
もうすでに答えが出ていますね。対応して見ていきます。
(ここに書かれた評価は農と島のありんくりん氏のものですよね。)
①香港問題対応は強権的に国安法を強硬成立させて、早速民主活動家の根こそぎ逮捕を開始しています。まさに強権支配。
②政治的孤立をする中国にとって唯一の頼みは経済のはずですが、これも失速は明らかです。米国の制裁と新型コロナが相乗して、おそらく大幅なマイナス成長に陥るはずです。
③国際社会の声に一切耳を貸さず、香港市民の自由を強奪したツケは大きいはずです。
④米中関係は戦争前夜です。米国は中国を敵国指定しました。いつ何どき戦端が開かれてもおかしくはありません。
⑤ウィグルの強制収容所が西側に曝露されて、国際社会は香港と一体のものとして認識し始めました。
⑥新型コロナにおいて、中国各地に暴動が発生しました。これで景気が悪化すれば民衆暴動はいっそう再燃することでしょう。
⑦中国が狙ったファーウェイによる世界のネット支配が裏目に出て、中国流ネット管理が不可能になりました。
⑧一帯一路でカードローンよろしく借りさせたアフリカ諸国への負債が、一斉に新型コロナで焼けつき巨額の不良債権化しています。
⑨米国による海外試算凍結は、すでに一部米国で実施されており、今後全面的な資産凍結に進むと思われます。
⑩すでに集団指導体制という建前を習は放棄しており、永世国家主席となるつもりです。
このように習近平のITと一帯一路戦略、そして海洋大国をめざした南シナ支配は、ことごとく壁にぶつかり、ガラガラと音をたてて崩壊しようとしています。そして新型コロナの隠蔽も世界に知れ渡ってしまい、いまや世界一の嫌われ者、いや自由主義世界共通の敵とみなされるまでになってしまいました。
これは胡錦濤や朱鎔基ら旧執行部がとった米国との平和共存路線とは根本的に相容れないもので、それ故彼ら長老たちは去年の北戴河会議で必死に諫めたのですが、習は聞く耳をもちませんでした。
というわけで、集団指導体制の名残のような北戴河会議なんぞ、主催者である習も形骸化したとみており、長老組もまたばかばかしくってやってられんわ、勝手に潰れさらせ、と考え始めたようです。
一方現役執行部のほうもしらけきっていて、政治局常務委員7人全員が揃ったのは8日のたった一日だけだっのようですから、長老・現役双方共もう意見のすり合わせには関心がなくなってしまったようです。
(中略)
習からすればうるさい長老どもが来なくてセーセーした、一応やったことだけにして秋の党中央委員会爽快を乗りきるぞ、というところでしょう。ですから、習から見れば、「権力基盤は揺るがない」ともいえるわけです。
江沢民派にしろ共青団派にしろ、もはや既に壊滅状態で、党内パワーバランスはすでに崩れており、習一強体制が完成したから、もう誰もなんとも言わないという見方です。
その見方にも一理ありますが、長老組は、誰が考えても米国と正面衝突するに決まっている香港国安法の強行採決などはしてほしくはなかったことでしょう。
しかしそれを言い出す元気もなく、そもそも習と話し合ったところで言うことをハイそうですか、と聞くタマじゃないことはとことんわかってきています。
ならば、あえて渦中の栗を拾うようなまねはせずに、共産党支配全体が危なくなってトバッチリを食うようなら顔を出そうか、といったところが真相じゃないでしょうか。
米政府系ラジオRFA( ラジオ・フリー・アジア)はこう伝えたそうです。
「RFAの取材によると、中国の体制内知識人の中には、こんな見方もある。
過去一年、思いもやらない事件が相次ぎ発生した。数か月前は、米中貿易交渉がまだ存在していた。突然ポンペオが盟友とともに民主固化連盟を結成して共同で中国に対抗すると言い出した。みんな北戴河会議で、中共の権力に改変が起きることを期待していた。
北戴河会議で、党内各派閥は、工場の倒産や失業問題、経済衰退などの責任をとうて、最高指導部の人事入れ変えを求めていた。
北戴河会議の進行は非常に厳格化に管理されるようになり、参加者は非常に慎重になり、発言を自主規制するようになっている。ほとんどだれも発言しなくなり、盛り上がりに欠ける会議になった。もちろん、内心に思うところは多々あるが、もはや北戴河会議に(人事や体制改変などを起こす)パワーはなく、そういった可能性は低い」
通常はこの北戴河会議で、党中央委員会総会をにらんで次の執行部人事を決めねばならないのですが、党内は無風。米中戦争すら予想される状況で、好んでチャイナ7なんぞになって泥を被りたくはない、というところではないでしょうか。
いずれにしても、習は急速に「裸の王様」化しているようです。」
(引用終り)
後半の農と島のありんくりん氏の見方は、習近平の支配力が増し、北戴河会議が形骸化し、習は急速に「裸の王様」化していると嘆いているようですが、中国の権力闘争はそんな甘っちょろいものではないでしょう。
恐らく、江沢民派も共青団(胡錦濤)派も習近平が経済、外交、軍事等ことごとく政策に失敗して、高転びに転ぶことを待っているのだと思われます。
強い対抗派閥があることは政治を元に戻すには大事な要素です。今中国の覇権を押しとどめようとしているのは、トランプ一人ですが、中国国内の対抗派閥にも大いに期待できるのではないかと思っています。
といっても、民主主義に転換するわけは全くないのですが、少しは世界の中の中国を考える勢力が出て来る可能性があるのではないかと思っているだけです。