「新型コロナウイルス感染症拡大により生活に多大な影響を受けた品川区民に対し、外出自粛要請等に伴う負担の軽減と、区全体の活力を取り戻すことを目的に、令和2年度一般会計補正予算案(第3号)として、「(仮称)しながわ活力応援給付金」予算1355,000万円625日区議会第二回定例会に提案する。

【給付対象者】品川区民約406,000。(中学生以下は約5万人)

【給付額】区民1人当たり3万円。中学生以下には、1人につき2万円を加算し1人当たり5万円。」

 

政府の10万円の特別給付金に上乗せだから、かなりの収入になる。私の隣の家族は小学生以下3人と夫婦の5人家族だから、もし品川区民だったら、政府から50万、区から21万の合計71万円の臨時収入になる計算だ。結構大きな金額だ。

 

私は今回の政府の一律10万円給付については、半分賛成で半分反対だ。

当初の自民党案の「現金給付」は、「要件(新型コロナウイルス感染症の影響で、収入が一定の指標を下回っている)を満たした『世帯』に対して、一律で30万円の給付を行う」というものたった。

これだと収入が一定の指標を下回っている家族は救われるが、基準ギリギリ満たしていない家族は全く給付金はもらえないとか、要件を検討する基準が「世帯主の月収」とされたため、共働きの妻のパート収入がゼロになっても、世帯主の夫の収入状況が要件を満たさなければ、支給対象にはならない(後に世帯主以外の収入を考慮するという修正が加えられた)等いろいろ問題点があったため、一律個人に10万円というのは公平感が出たが、独身者で非正規切りに会った人やシングルマザー・ファーザーで解雇された人にはむしろ支給額が大きく低下してしまった。

だから、一律10万円給付については、諸手を挙げて賛成にはならなかった。むしろ、一律10万円給付と、生活困窮者に30万円給付を二本立てにすれば一番良かったのではないかと思っている。

 

今回の品川区独自の特別給付金もいいように見えて、知恵がやや足りないように思うのである。

政府も含めて、そもそも特別給付金の目的は何なのか。

①コロナ禍による生活難に陥った住民への補助

②景気浮揚

 

政府の一律10万円給付の目的は、①+②だろう。①のみなら、30万円給付等もっときめ細かく手厚くしないといけない。

品川区の特別給付金の目的は、とりあえず①のみと考えられる。もし景気浮揚あるいは地元対策なら、品川区に金が落ちる工夫がないといけない。そういうもの限定はないから「区全体の活力を取り戻す」といっても、品川の商店街への恩恵は限定的だ。

 

総額にしても約136億円だからわずかなものだ。この程度では町の活性化には不十分であり、生活難に陥った家族への支給としては、一律にばら撒きすぎて、効果が薄い。

 

やはり地域密着の区が給付するのだからもっと知恵を出してほしかった。一番に給付金を求めている市民に給付すべきだったのである。

 

コロナ禍によって職を失くしたり、職はあるが仕事がなくて収入が大幅減となった人びとが沢山いる。特に文化的活動をしているフリーの人々など。例を挙げることができないが、突然のコロナ禍で生活が一変してしまった様々な人がいるはずである。

こういう人々に手を差し伸べることができるのは、地元の自治体ではないのか。

 

品川区が独自の給付金を交付すると考えたのは、非常にいいことであり、称賛に値する。ならば尚更きめ細かい知恵を出してほしかったのである。

中学生以下の子供に5万円というのは、余りにも安易な発想だ。少子化時代だから子供といえばみんな喜ぶと考えるのは大間違いだ。特に今回のようなコロナ禍という何時にない非常時には特に一般的理由(少子化対策のような)はなじまない。

 

しかし、なぜこんな安易な発想に走ってしまうのか。

それは、給付金対象の選定の難しさに関係してくるのではないか。

例えば、音楽、演劇等の活動が全くできなくなり、生活が困窮してしまった市民をどのようにグルーピングできるか。想像するだけでも難しい。ある人を選んだら、私はなぜその中に入らないの等の不満が必ず出てくる。つまり属性でグルーピングしようとしたとき、デジタル的に切れればよいが、グレーゾーンがダラダラと続く場合は境界を決めることができない。

 

自治体としては、きめ細かい対処をしたくても、いいことをしようとして揉め事になるくらいなら、やらないほうがマシということになる。

そのために、無難な区民全員とか中学生以下の子供世帯は優遇するという当り障りのない基準を作ってしまうのである。そして本当に給付金を必要な区民にはわずかしか回ってこなくなってしまうのだ。

 

私は品川区民を羨ましいとは全く思わない。でも大事な税金は生かして使ってほしい。他の自治体ももし余裕があるなら、品川区のような給付金をきめ細かさに知恵を出して、独自な給付金モデルを案出してほしいものである。