3月に問題の多い日本のドラマ・映画が2本、上映・放映されるようだ。

ひとつは佐藤浩市、渡辺謙主演のFukushima 50

福島第一原発事故発生時に発電所に留まって対応業務に従事した吉田所長と約50名の作業員たち通称「フクシマ50」の闘いを描いたもので、感動大作のようだが、私は吉田所長が神話化されたことに違和感を覚えている。これについて昔別ブログで記事を書いたことがあるので、別途紹介するつもりである。

 

もう一つは、表題に掲げたwowowオペレーションZ~日本破滅、待ったなし~」(3月15日第一話無料)という「ホラー映画」だ。財務省監修作品である。

wowowホームページによる紹介。

明日にも起こり得る日本の危機、国家破綻。破滅を回避するただひとつの道は国の歳出を半減すること草刈正雄主演で贈る未曽有の超大型政治経済エンターテインメントドラマ」

 

原作は真山仁「オペレーションZ」(2017)だ。

この小説のamazon解説

「国の借金は千兆円を超え、基礎的財政収支は赤字が続く。国債が市場で吸収されなくなった時、ヘッジファンドが国債を売り浴びせた時、国家破綻は現実となる。総理は「オペレーションZ」の発動を決断し、密命を帯びたチームOZは「歳出半減」という不可能なミッションに挑む。官僚の抵抗、世論の反発、メディアの攻撃、内部の裏切り者―。日本の未来に不可欠な大手術は成功するのか? 明日にも起こる危機。未曾有の超大型エンターテインメント!

 

Wowowamazonの紹介をみて、のけぞった。

「明日にも起こり得る日本の危機、国家破綻。破滅を回避するただひとつの道は国の歳出を半減すること」

いくらなんでもこれはひどすぎる。

「破滅を回避するただひとつの道は国の歳出を半減すること」が如何に馬鹿げたものであるかは、10年前ならいざ知らず、国民は日本のデフレ、経済停滞、実質賃金減、消費税増税について、かなり勉強しているし、ここ1年でMMTが紹介され、その衝撃的内容に国会でも取り上げられたりと一般国民はかなり勉強していて、借金1000兆円という財務省のプロパガンダにそうそうビックリもしなくなったのである。

 

そういうときに、未だ子供だましみたいな超緊縮が日本を救う、なんてバカげたストーリーでドラマを作るなんて、国民をバカにするのもいい加減にしろよ、財務省!というもんだ。

日本の未来に不可欠な大手術は成功するのか?」ってか。やめてくれ、死ぬよ! 

まだ放映していないから見ていないが、これは三流ホラー映画というしかない。

有料wowowでよかったよ。NHKで税金(受信料)払って、こんな財務省プロパガンダを見せられたらたまったもんじゃない。

 

真山仁の原作「オペレーションZ」がデタラメということだ。

Amazon書評を掲げるが、まずはこんなひどい話に感動してしまった人の書評から。

 (どんなことが書いてあるか少しわかる)

「心地好いぬるま湯は、哀しい予感に溢れているのだ。Zの意味を知る時を思え。

未来の世代のために「いま」われわれがなすべきことは何か。
何度も噂されては政府・財務省の敏腕によって事なきを得てきた国債危機。だが担い手が多様化したことで、従来の回避策は通用しなくなってきている。いまや1000兆円を超える国債のデフォルト、すなわち日本の破滅を防ぐため、総理大臣直轄のImpossible Mission Force、オペレーションZが創設された。
本書は、デフォルトに陥った日本の惨状を描く大物小説家の作品「デフォルトピア」の片鱗を覗かせつつ、財務省の若きキャリアの歳出半減ミッションを中軸に、「あるべき国家観」を深く考えさせてくれる内容となっている。
・第四章、チームOZと厚生労働省との第一回折衝は胸に重くのしかかる。「年金、医療、介護保険給付費をゼロ」(p136)にする。日本を破滅から救う財政健全化のために、国民皆医療制度を犠牲にする。これを本気でやれと明言する総理大臣の決意は良いが、国民の命を預かる厚生省の反論は正当だ。「生活保護を除く社会保障関係費ゼロとなった場合、想定される事態」(p152)何をもって正しいと判断しうるのか。そも、崖っぷちに立たされると、正しさの定義すら怪しくなってくるのか。
・ワーキングプア、増加する下流老人、疲弊する地方経済、これらをすべて「切り捨て」る決断。日本は民主国家ではない。大蔵貴族と揶揄される高級官僚の思いは正鵠を得ている。
・アルゼンチンや韓国のような小国へのIMFの介入の例はあるものの、これでは世界第三位の経済大国、日本は救えないのか。
・第六章は市町村「地方自治体の存在意義」を真正面から問う。著者の見解は明快だ。無駄な地方公務員の存在、行政のきれいごと、すべてを御破算にすべし。ところで、無神経かつ失礼千万な准教授、宮城のキャラクターは気に入ったぞ。

・日本国民の選択。最終章は勇気に彩られつつも、哀しい予感に溢れている。そして心地好いぬるま湯は、エピローグが吹き飛ばしてくれる。
「社会の中で、困った人を可視化するために必要なのは、金でもITでもない。近所や学校、企業内でのコミュニケーションじゃないのか」(p355) 周防の言葉はまったく正しい。仮に国家窮乏の事態に陥ったとしても、近隣との助け合い精神があれば、何とか生きて行ける……と僕も思っていた。
この日本を何とかしなければ、との著者の思いが紙面から強く伝わってくる。
カネがなくなると何が起こるのか。「Z」の意味を知る時、行動しないのは罪だと理解し、書を閉じた。」

 

以上は財務省とマスコミに長年洗脳された集大成の人の書評ですね。

つぎは、もう少しまともな人の書評。

 

「経済ど素人が専門家ぶって書いた経済音痴小説

ヘッジファンドが国債を売ったら国債が暴落して日本が終わるとw
何故終わるの?そのメカニズムが何も語られていない。経済素人なら、うわー怖い、と騙されるだろうが、経済を少しでもかじっているものからしたら、アホらしいの一言。
ヘッジファンドが国債を売る。どうぞどうぞ、日銀の度重なる買いオペで市場では国債は品薄だ。買いたい人はいくらでもいる。中国なんかも買いたくて仕方がないらしい。よしんば、もし、買い手がなかったら日銀がさらに買い増せばいいだけであるw
この人、事あるごとに、ギリシャだ、アルゼンチンだと、持ち出してくるが、かの国と日本とでは、基本的に経済構造が違うということを意図的なのか無知なのか、完全スルー。
最近は、韓国映画「国家が破産する日」のパンフレットに一文を寄せて、22年前の韓国と今の日本は似ていると語っている。彼に言わせると、今の日本の方が危ないそうだ。何故なら、当時の韓国の債務の23倍の債務を日本が抱えているからだと。おいおい、嘘を言うなよ、と言いたいw
この人、当時の韓国の「対外債務」と日本の国債残高を単純に比較しているだけだ。そんな比較に何の意味があるのかと問いたい。日本は対外収支で言えば、債権国だ。つまり、外国に金を貸している方。当時の韓国は対外債務国。つまり外国から借りている方。政府当局も知らないうちに、対外債務が雪だるましきに膨れ上がり、デフォルト寸前まで行ったわけだ。それで大騒ぎになりIMFの支援下に入ったわけだ。日本が置かれている状況とは根本的に違うのだ。

日本の経済も楽観は許されず、将来には不安も多く抱えている。しかし、97年のアジア通貨危機を持ち出して、今の日本の経済問題を語るのは、いかにもあざとい。何か特定の意図があるのか、単なる無知なのか、どっちなのかはわからないが。」

(引用終り)

 

今必要なのは「財政赤字」であり、緊縮財政では全くない。ましてや借金1000兆円など何の問題もない。今その半分は日銀が国債を買い入れているから、実質的な借金は約500兆円。といっても500兆円だから安心と言っている訳ではない。政府の借金はそもそも返済する必要がない。企業や家計と違うんだから。そして財政破綻はそもそもありえないのである。

 

そういう話は、MMTで解説されるのだが、まず子供でもわかる財政半減、歳出半減の意味だ。

今はデフレである。景気が悪いのである。何故か。誰も買わないからだ。需要がないのである。何故か。

賃金が上昇しないから買わない、買わないから企業は投資をしない。だから消費需要も投資需要も貧弱なままなのである。そして最後の手段の政府も緊縮。これが不景気及びデフレの原因だ。

 

さて、オペレーションZで歳出を半減したとしよう。今予算は100兆円だから、半減させると歳出50兆円。50兆円の歳出を抑えたおかげで、財政は健全化された。意味ないが。

 

しかし、歳出減の50兆円とは何か。政府支出の50兆円減である。

ただでも消費需要も投資需要も貧弱ななかで、政府支出50兆円減したらどうなるのか。50兆円の需要の消失だ。もう恐慌へ突入だろう。

1930年のアメリカ大不況の再来だ。会社の倒産、株価の大幅下落、失業者の増大、福祉の崩壊、自殺者の増大等々。コロナウイルス禍どころの騒ぎではなくなる。

こんなことは今や中学生でも分かる理屈だ真山仁という作家はよほど経済に疎いというか経済について何も知らないに違いない。もしそうでなければ、詐欺師の類いだろう。

 

しかし、達成されたものが二つある。財政の健全化だ。全く意味ないけど。本当は税収も減するのだが、消費税への依存度が高ければ、ドンドン消費税を上げればいい、と財務省はバカだからそう思っている。

もう一つは、経済大ショックにより、今後の政治は財務省の思うままになるということである。

ショックから立ち直るためには、構造改革と増税だ。移民増だ等々。なんでもござれとなる。好き勝手なことができる。

要は、日本を破壊し、財務省の言いなりにさせるのが、「オペレーションZ」ということだろう。

 

なぜ「Z」なのか。A、B、C…Zは、政策の優先順位としたらどうなるか。つまり上策はAとかBなのだ。それが「Z」ということは、最低・最悪の政策だということを自ら証明しているのである。

だから「オペレーションZ」なのである。

 

財務省よ、バカな冗談はやめてくれ。そしてこんな下らないドラマを手に汗握って見るなんぞ、絶対にしないでおくれ。考えさせられた、なんてバカ丸出しのことを言わないでおくれ。これはひどいと思ったら、MMTを勉強しておくれ。