新春恒例、経営トップの今年の景気見通しが新聞やテレビで報道される。

読売新聞は経営トップ30人の景気アンケート結果を伝えており、NHKは今日の7時のニュースで経済団体主催の祝賀パーティに参加した企業経営者に、景気についてインタビューしている。

 

毎年思うことだが、みんな楽観的な答えしかしない。本気で考えているのだろうか、アホじやないだろうかとも思うが、好意的に見れば、みなポジショントークにすぎないようだ。

要は日本の経営者に「サムライ」がいなくなって、サラリーマン経営者ばかりになったから、財界や財務省に睨まれないよう忖度して、それらが喜びそうな回答をするだけだ。つまり自由のない中国や北朝鮮のような共産党支配下での発言と相成るのである。

 

考えているのだけれど、「言えない!」のなら、まだ脈がある。しかし、考えたことを言ってはいけない、が習い性になっているうちに、考えることを忘れてしまって新聞記事に書いてあることをオウム返しにしても気が付かなくなったのではないのか。そのほうが楽だから。そして新聞記事が頭に張り付いて、さも自分が考えているような気分になって恥もなく滔々と新聞記事に従って述べてしまう。

 

ポジショントークを承知の上ではあるが、読売新聞のアンケートでは、「景気は穏やかに回復する」が半数もいるし、個人消費の回復がその要因と指摘するのは、その内の3割にも達する。「悪化する」はわずか1割だ。

しかも財政健全化に向けて更なる消費税増税が必要だとする経営者が3割にも上っているとは驚きだ。

消費税増税が日本を滅ぼすことについて何の疑問も持たず、バカの一つ覚えのように財政健全化を唱えるんだな。財政健全化がそんなに大事なら、消費税増税でなく、法人税の増税を率先して唱えたらどうなのか。ひとの財布ばかりあてにするなよ。身銭を切れ!

 

NHKインタビューでは、景気回復については、ほぼ全員がそうなると答えていた。

ANA HD片野坂真哉社長

「景気上向く インバウンド消費に期待、景気は年の前半よりも五輪後に上向いていく」

サントリーHD新浪剛史社長

13兆円の経済対策 GDP押し上げる」 

すかいらーくHD谷真会長

「景気は悪くなると考える経営者も多いが、きっとそれに対して対応策を打ち出しているはずだ。景気は『気』からなので、大会で選手がメダルを取れば国民も気持ちが消費に向かうと思う。景気は、さらに上向いていく」

オリックス宮内義彦シニア・チェアマン

「大会が終わってすぐに不況になるようなことにはならないと思うし、景気は上向く」

西武HD後藤高志社長

「景気はやや下向きになる。ホテルの予約 五輪後はげ落ちる」 

東京海上HD小宮暁社長

「雇用や所得環境が堅調なことに加え、さまざまな景気対策も打たれている。リスクあるが基本的には堅調に成長」 

森トラスト伊達美和子社長

「景気について去年と比べてややよくなる。五輪前の状況を維持できればよい」 

 

西武の後藤高志社長を除いてほとんどの経営者は今年の景気は好調、上向くと楽観的だ。テレビだから余計に悲観的な推測はできないのであろうが、すかいらーくの社長のように、景気は『気』からと本気で考えているバカ経営者もいるようで、消費税増税で景気が落ちることを心配する財務省幹部はこれを聞いて小躍りして喜んでいることだろう。

こんなアホな答えばかりでは、なんだかテレビに映る経営者の顔はみなアホばかりに見える。

 

彼ら経営トップはマクロ経済に関心がないのである。業界という狭い範囲しか関心がないのである。だからマクロ経済や財政問題については、新聞記事(財務省の提灯記事)しか知らないのである。だから新聞が、消費税増税の影響はわずかだと書けば簡単に信じ込むのである。

実質賃金の落ち込みや緊縮財政について経営者は何の関心もないのである。もし関心がある、心配しているのなら、新春インタビューであれほど能天気な回答、今年は景気回復するなんていわないだろうに。

 

三橋貴明氏はブログで以下のように述べる。

「ところで、実質消費が14年4月を上回る落ち込みになったことは触れましたが、ちょっと(いや、かなり)凄まじいことになっています。

 21世紀に入って以降、日本の実質消費は漸減が続いていました。消費税という「消費に対する罰金」が存在していた以上、当然ですが、14年3月に跳ね上がり(駆け込み消費)、14年4月に大きく落ち込みました。
 その後、政府は「V字回復する」と寝言をほざいていましたが、我々は「L字型低迷に陥る」と警鐘を鳴らしました。どちらが正しかったか、分からない人は目玉を取り換えて下さい。
 2019年9月、やはり多少の駆け込み消費があり、10月に駆け込み消費分を上回る落ち込みに。(2020年7月1日に、ポイント還元がなくなり、再増税なので、もう一度同じ軌跡を描くと予想) 注目点は2019年10月の実質消費指数の水準は、2014年4月を「下回ってしまった!」という点です。2019年10月、我々は2014年4月以上に消費できなかったのです。さすがは、”三冠王”安倍総理大臣、見事なものです。」

 

「『11月の工作機械受注1137% 19年の最低水準

 日本工作機械工業会が10日発表した11月の受注額(速報値)は、前年同月比37.9%減の817億円だった。14カ月連続のマイナスとなり、2019年に入って最低水準を更新した。業界で好不況の目安とされる「1千億円」も4カ月連続で下回った。(後略)』

 37.9%減・・・・。想像を絶する落ち込みです。しかも10月ではなく11月なのです。もっとも、10月の工作機械受注額にしても、前年比37.減だったため、四割近い減少が二か月連続で続いたことになります。このままでは、日本の工作機械産業は「壊滅」してしまうのではないでしょうか。正直、懸念というよりは恐怖を覚えます。
 景気動向指数からもわかる通り、日本経済は17年秋に山を打ち、そこからなだらか「景気後退」に陥っていたのでしょう。理由は、消費税増税(14年)のダメージと、米中覇権戦争に端を発する外需縮小です。ただでさえ落ち込んでいる状況で、消費税増税を強行した。結果、日本経済はショックというよりは「クラッシュ」した可能性が高いのです。」

 

97年、14年の消費税増税は、景気拡大期の増税でした。増税の結果、増税直前が「景気の山」となる景気後退に突入した。

 ところが、今回は景気後退期の増税なのですこれは史上初めてのことです。需要縮小対策をそれなりに打ったにも関わらず、14年増税時よりも指標が悪化したのは「景気後退期の増税」であるためなのです。11月になっても、経済指標は回復していません。

 景気動向指数と合わせてみると、分かりやすい。日本は、今年は景気後退に陥っていたのです。ただし、ペースが緩やかだったため、あまり目立たなかった。とはいえ、景気後退のタイミングで消費税増税を強行したため、アベショックが早期に顕在化した。これが、事実です。

 鉱工業生産がどれほど恐ろしいことになっているのかといえば、何と19年11月の水準は、13年4月と同じなのです。つまりは、アベノミクス(とやら)開始前に戻ってしまったのでございます。
  当然、2014年4月増税時よりも悪化しています。

 鉱工業生産に限りません。総務省が12月27日に発表した「「サービス産業動向調査」 2019年(令和元年)10月分(速報)」によると、サービス産業の10月の月間売上高は、30.9兆円で、前年同月比2.5%の減少。製造業、サービス業共に「アベショック」に突入したのですが、恐ろしいのはこの状況で安倍政権は「台風のせいだ」と逃げを打ち、増税の悪影響を認めようとしない点です。(後略)」

 

どうだろうか。三橋貴明氏のマクロ分析を読んでもなお、先の経営トップのような能天気なというかアホな景気判断ができるのだろうか。

 

経営者にとって売上高アップは大事なはずだ。売上とは何なのか。景気の「気」?消費者が五輪で浮かれ気分になれば売り上げが上がる?

そんな程度でよく社長がやってられるもんです。新聞や証券会社の経済アナリストの話ばかり聞かずに三橋氏その他のまともな経済分析を少しは学んだらどうなんだろうか。

MMTの勉強もして下さいよ。