「台風19号の影響で断水になった神奈川県山北町で、陸上自衛隊の給水車が災害派遣要請に備えて到着したものの、県が要請をしなかったため引き返していたことが16日、町や県などへの取材で分かった。関係機関の連携不足で、給水支援が生かされなかった形だ。」
折角早めの自衛隊出動で町民救援をしようとしていたのに、神奈川県の役人が自衛隊給水を頑として認めなかったのはかなり問題だろう。
新聞では「関係機関の連携不足」と抽象的にまとめられてしまったが、恐らく神奈川県の担当役人と山北町の担当(町長も)との間では、喧嘩腰の押し問答があっただろうことが想像できる。
もう少しその事情を見てみる。
「12日夜、台風19号は神奈川県を直撃し、山北町で断水が起きた。町は、約20キロ離れた駒門駐屯地(静岡県御殿場市)の陸上自衛隊に「翌日(13日)、給水車を要請するかもしれない」旨連絡していた。陸自は要請があった場合にすぐ対応できるよう、部隊長の判断で給水車(水約3トン)を自主的に派遣。
13日朝4時に、自衛隊から「県知事から防衛相に自衛隊の派遣要請をする必要があります。町は県に依頼してほしい。自衛隊としては、給水車3台を午前6時に出発させます」と連絡があった。
早速、町の防災課が県に依頼すると、マニュアルを盾に難色を示した。県のマニュアルによれば、自衛隊の派遣要請は、どうしようもなくなった時の最終手段だが、山北町の状況は該当しないというのだ。
給水車3台は午前7時少し前に町に到着。県と町で押し問答が続いたが、県は最後まで首をタテに振らず、自衛隊は派遣要請がなかったため引き返した。現場に水を求めて待っていた住民もいたという。
給水車3台の貴重な水は捨てられた。結局、県が別途手配した給水車は2台で、到着も13日の午後と遅れた。」
関係者の証言。
「自衛隊とは日頃からおつきあいしており、すぐに支援に来てもらったのに、申し訳ないと謝りました。災害派遣要請の手順があることは分かるが、せっかく来てもらったので、住民に水を配ってもらえたら良かった。県には手順とかメンツがあったのかもしれませんが、もっと柔軟に対応して欲しかった。」(山北町長)
「県にも給水車がある。日本水道協会にもお願いしたのかと町に確認し、まずは県や協会に要請しましょうと町には伝えた。それで足りなければ自衛隊に要請するのが手順。県としては自衛隊が町に到着していたことは知らなかった。」(神奈川県災対本部の担当者)
陸自駒門駐屯地の広報担当者は、給水車3台が活動できないまま撤収した事実関係は認めたが、「この件に関してはコメントを差し控えたい」している。
自衛隊の災害派遣要請を判断する基準として、「緊急性」「非代替性」「公共性」の3つの原則があり、今回はこの内「非代替性」に当てはまらなかったから、自衛隊派遣を拒否したと黒岩知事は説明している。つまりマニュアルを厳しく守ったんだと。
新聞にも
「自衛隊の災害派遣については、文民統制(シビリアンコントロール)を守る観点や、市区町村でバラバラに求めて混乱するのを避けるため、都道府県知事が要請することになっている。現場の独断専行を許さないためにも、このルールは徹底されている。」
と書いている通りルールを守ることは大事なことだ。
しかし、何だか神奈川県の説明は嘘くさいのである。本音は違うところにあるように感ずるのだ。
まず県の災対本部担当者の「県としては自衛隊が町に到着していたことは知らなかった。」は、嘘だろう。
町は自衛隊派遣要請を県に依頼し、県の担当者と押し問答している内容は、もう自衛隊が早期派遣で町まで来て、待機していると伝えことを巡ってのはずだ。
県も企業庁の給水車を派遣することが可能だとは言っているが、即応できないことはわかっているはずだ。災害では迅速性が求められるのだから、県が自衛隊派遣のゴーサインを出すだけでよかったのだ。
それなのに、県はなぜ自衛隊の給水車を断ったのか。
当然災対本部の幹部と町長はこの件でやり合ったに違いない。災対本部は当然黒岩知事にお伺いを立てる。黒岩は山北町に自衛隊派遣を要請する権限なぞないのに、何を勝手なことをするのか、と激怒したはずだ。
災対本部は、自衛隊給水車はもう町に到着しているので、県から自衛隊派遣要請さえすれば給水できることを説明したはずだ。(この辺は私の想定)
しかし、頭に血が上った黒岩知事は、山北町の出過ぎた真似もさることながら、自衛隊(これは第一師団と思われる)へも怒りの矛先が向かった。つまり、陸自の早期対応が気に入らなかったのだ。
黒岩知事の弁明書は嘘に満ちているのだ。
弁明書に次のように書く。
「また、県から要請がない中で、自衛隊の給水車が町に到着したことになりますが、その事実を知った自衛隊から、撤退の指示が出されたと承知しています。」
嘘つくなよ。
黒岩はテレビニュースでのお詫び会見で「師団長からすぐ帰れと言う命令が給水部隊に出ました」とわざわざ言っている。これは、恐らく黒岩知事自ら自衛隊第1師団長を叱りつけたことを表していると思われる。
自衛隊は派遣要請がない中で、早期対応のために県からの要請を待っていたのだ。それを黒岩が師団長を叱りつけたから、撤退したのだ。
つまり、給水車撤退の責任は自衛隊の勝手な行動にあるのであり、神奈川県には責任はないと逃げているのだ。
一番の責任は黒岩知事本人にあると言わざるを得ない。
速やかな給水により住民を助けるというより、神奈川県のメンツいや知事のメンツを最優先に判断したのである。この給水車撤退により死者が出たということはなかったが、けが人の搬送等の任務で自衛隊撤退により死者が出たとすれば大問題となろう。
マスコミ出身の黒岩知事は猛反省すべき事案と言える
しかしこの黒岩知事は、あいちトリエンナーレの反日展示でとても良いことを言っているのだ。
「愛知県の国際芸術祭で「表現の不自由」をテーマに慰安婦問題を象徴する少女像などを展示した企画が中止された問題で、神奈川県の黒岩知事は「展示は政治的なメッセージで表現の自由を逸脱しており、仮に県内で同じことがあれば絶対に開催は認めない」と発言しました。
…表現の自由は大変重要だとしつつ、「展示は明確な政治的メッセージで表現の自由から逸脱している。仮に神奈川県内で同じことがあれば絶対に開催を認めない」という考えを示しました。
また少女像については「事実をわい曲した形での政治的メッセージで、公金を使って支援することはありえない」と強調しました。」
神奈川県内では芸術作品の名を騙る公費使った反日展示は黒岩知事がいる限り出来ないことになったのは、とてもよいことだ。しかし、山北町の問題ではミソを付けたような気がして残念である。
神奈川県知事による弁明書
台風19号の被害に伴う山北町の給水支援について
2019年10月16日
台風19号の被害に伴う山北町の給水支援についてご説明します。
まず、自衛隊の給水車が到着していた中で、柔軟に、給水をお願いするなどの対応ができず、速やかな給水ができませんでした。被災された町民の皆様には心よりお詫び申し上げます。
この経緯についてですが、
10月13日の午前1時ごろ、山北町から「今後、断水のおそれがあり、自衛隊の給水支援要請を県に行うことになるかもしれない」との連絡が、県(災害対策本部の統制部)にありました。
その後、午前6時過ぎに、町から県に対して、自衛隊の派遣要請についてファックスで依頼がありました。
一方、自衛隊の災害派遣要請を判断する基準として、「緊急性」「非代替性」「公共性」の3つの原則があります。県は、今回の台風を迎えるにあたり、県企業庁の給水車の準備を行っていました。
そのため、自衛隊災害派遣の3原則に照らし、他に取りえる手段がないという、「非代替性」の条件を満たさないため、すでに準備を整えていた県の給水車を優先させる、との判断をしたものです。
また、県から要請がない中で、自衛隊の給水車が町に到着したことになりますが、その事実を知った自衛隊から、撤退の指示が出されたと承知しています。
事実として、自衛隊の給水車が到着していた中で、柔軟に、給水をお願いするなどの対応ができませんでした。速やかな給水ができなかったことは真摯に受け止めたいと思います。
令和元年10月16日
神奈川県知事 黒岩 祐治