若きドイツの哲学者マルクス・ガブリエルと言ったってほとんどの人は知らないだろう。

今日の読売新聞「あすへの考 世界の未来 日本の未来」という新企画が始まり、第一回目としてデカデカと一面全てを使って、哲学者マルクス・ガブリエルへのインタビューを紹介していた。

 

マルクス・ガブリエルは、2009年に29歳の若さでボン大学の哲学科教授に就任したポスト構造主義(ポストモダニズム)以降の「新実在論(new realism)」の旗手として、今、世界で最も注目されている「哲学界のロックスター」であると紹介されている。

そして、NHKプロデューサー丸山俊一が少し前に「欲望の資本主義」という番組を制作し、そこにマルクス・ガブリエルその他が登場し、その番組が何冊かの本になって出版されている。

 

NHKプロデューサー丸山俊一は「ニッポンのジレンマ」その他文化的な番組を制作しているが、前にもこのブログ記事に書いたように、私は好きではない。最新の哲学や経済学を装ったり、奇を衒ったりして視聴者を煙に巻くのが得意らしいが、全く先端的でなく、世界の動きを鋭く捉えてもいず、既成世界を擁護するような傾向を感ずるからだ。そんな一人としてマルクス・ガブリエルはいる。

 

マルクス・ガブリエルは哲学者として『なぜ世界は存在しないのか』という小難しい本を出しているようで、手に負えないし、恐らく大したことは言っていないと勝手に思っている。

ネットでのこの著作への言及は次の通りだ。ほとんど何言っているかわからない。読む必要はありません。

 

「ここで、ガブリエルの『なぜ世界は存在しないのか』で言うところの「世界は存在しない」の意味が明らかになる。「世界」とは、実在のすべてを包括する最大の集合を意味するのだとすれば、実在的視点は際限なく増加するから、そのような包括はできないということである。

ガブリエルの新実在論は、「存在する」ということを「意味の場に現象する」ことととらえているという意味で、新しい実在論ということができる。他方で、こうした無限の意味の場をすべて包摂する意味の場(世界)は存在しないという意味で、無世界観を唱えているのである。

見方は様々だという相対主義だけならまだ「認識論(epistemology)」の内側にとどまるが、ガブリエルはこのように、「存在論(ontology)」にまで相対化を徹底しているのである。こうしてガブリエルは、特定の意味の場を特権化し、自然科学こそが唯一実在にアクセス可能だとする、世の中で広く支持されている科学主義の立場にNOを突きつける。非科学的な実在性も、ファンタジー的な実在性もあるというのである。」

 

これを読むと「ほう、さすが天才哲学者だ」と中身も分からずに驚きと称賛をするしかない。

これを利用したのが今日読売新聞で特集された「あすへの考 世界の未来 日本の未来」だ。

つまりハロー効果。東大クイズ王みたいなものか。大したこと言っていないのに、天才哲学者が言っているんだから、納得しろ、信じろと言うのだ。引っかかる人は多いに違いない。これが読売新聞の狙いだ。

天才哲学者マルクス・ガブリエルは、世界の政治的経済的動きについては全く鋭くないのである。陳腐なのである。既成事実と体制を容認しているだけ。この程度なのかとビックリするのである。

 

トランプのアメリカを、普遍的価値体系を攻撃するとして否定するのである。なぜトランプがそう言うのかに全く言及せずに。普遍的価値体系が脅かされると危惧するのである。EUを普遍的価値体系の側に位置づけるが、近年のEUは危機を克服しつつあるという。ブレグジットでEUは逆に結束しているし、右翼ポピュリズムは抑え込んでいると。

なんだかとても楽観的で、この天才哲学者には現実が全く見えていないようだ。EUの危機はもっともっと深化しているのではないのか。

 

もっと楽観的というか何も分かっていないようなのは、「希望の光があります」といって、あのグレタを持ち上げるのだ。

「温暖化対策を訴える示威行動「未来のための金曜日」は欧州に広がり、ドイツでは140万人が毎週金曜日デモ行進するようになりました。子供たちが地球規模の問題に関心を持つようになったのです。」

 

もうずっこけるしかない。これが天才哲学者の言うことだろうか。こんな頭のおかしいエコファシスト・グレタに希望の光がある、なんてバカじゃないのか。つまり天才哲学者マルクス・ガブリエルは名前マルクスにもあるとおり、左翼思想家に過ぎないのだ。だから、左翼的傾向の動向にはみんなイエスであり、右翼的なものはノーというだけなのだ。

 

だから、ドイツの政治状況について驚くべき評価をする。あきれるしかない。

「ドイツで環境政党・緑の党の支持率は27%に達し、中道右派の主要政党・キリスト教民主同盟と初めて肩を並べました。中高生世代の7割が環境派であることを考えると、将来、ドイツは緑の党が第一党に躍進して、政権運営を主導することになるでしょう。地球温暖化対策は普遍的価値体系に基づくものです。次世代のドイツは自己本位なナショナリズムを克服しているのではないか。」

 

これを読むと、ドイツは環境政策に熱心で、相当な先進国だ。それに比べ日本は後進国。我々もグレタを見習って行動しなくちゃ、と思った人も多いかもしれない。読売新聞はそれを狙って新企画をこのガブリエルを使って載せたんだ。

本当に読売新聞はバカで罪深いことをしたものだ。

 

今のドイツが緑の党により滅茶苦茶になっていくことを知らないのか。

ドイツ在住の川口マーン恵美氏は言う。

「…この国連でのグレタのスピーチの3日前の920日、ドイツ政府は初の温暖化防止法案を公表した。中身は、パリ協定で決めた温室効果ガスの削減目標値(2030年までに1990年比で55%、2050年までに少なくとも80%)を守るために何をすべきかということ。

この「我が国の何十年にもわたる将来の方向を決定する」という重要な法案の骨子が決ったのである。これによれば、

1)化石燃料(灯油、液化ガス、天然ガス、石炭、ガソリン、ディーゼルなど)の販売への課金が始まる。すでに存在するCO2の排出権取引制度を、さらにドイツ国内で重ねて行うと思えば良い。

課金は、2021年はCO21トンにつき10ユーロだが、25年までに段階的に35ユーロまで上がる。これにより、ガソリンやディーゼルは確実に値上がりするし、他の製品価格もじわじわと上がるだろう。

2)ドイツは寒い国なので、多くの家屋はセントラルヒーティングだが、電気、ガス、オイル、どの燃料も値上がりする。とくにオイルはCO2の排出が多いため、値上げ幅が大きい。しかも、オイルによる暖房設備の販売自体が、2026年から禁止となる。

3)石炭火力発電所は2038年までに全廃することになっているが、それら炭鉱地域にはこれといった代替産業がないため、火力発電所がなくなったあと、失業者が溢れることがないように、この地域に400800億ユーロを投資する。

それが、何らかの産業構造改革に役立てば結構な話だが、下手をすると、他地域の税金が同地の失業者の生活保護に移転されるだけになる恐れもある。

4)電気自動車を2030年までに7001000万台に増やす。100万ヵ所の充電スタンドも作る。ドイツ政府は前々から自動車メーカーに電気自動車の推進を迫っていたが、問題は、値段が高く、これまで国民が敬遠していたことだ。しかし、今回の法案では、ガソリンやディーゼルが高くなるらしく、国民も早晩、電気自動車への乗り換えを強制されそうな勢いだ。

 

 

そのほかにも、公共交通の料金を下げ、その代わりに国内線の航空チケットを割高にするなど、様々な案が含まれるが、驚くのはそのコストだ。2023年までの4年間で、温暖化防止のために少なくとも540億ユーロ(7兆円)が掛かる。財源はこれからひねり出すという。

しかし、ドイツのCO2排出量は世界全体の2%にも達していないので、これだけお金を使って排出を減らしても、全体量にはたいして影響はない。それに、CO2を減らせば本当に温暖化が止まるのかどうかも分からない。」(引用終り)

 

このドイツの姿は下手をすると明日の日本である。こんな環境政策がセクシーなんだろうか。地獄への一歩、つまり文明を捨て、無意味な耐乏生活をとてつもない金を使ってするということだ。ドイツには大いに実験台になってほしい。天才哲学者マルクス・ガブリエルもこれが望みなんだろうから。

 

更に川口マーン氏は続ける。

ところがドイツ国民は、そんなことなぞどこ吹く風。この法案が発表された途端、「こんな生ぬるい規制では、温暖化は止められない!」といきり立った。

経済成長だけが幸せではない。自然と動物と人間が調和をとって暮らせる世界が理想である。現在の混迷からその理想の世界に戻れるなら、「不景気も、いとおかし」。「我々が生活習慣を変えさえすれば、温暖化は防げる」と、彼らは本気で思っている。

 

その1週間後、第2テレビの恒例の世論調査では、緑の党がついに、メルケル首相のCDU(キリスト教民主同盟)と並んで首位に立った。緑の党の伸長は、気候温暖化問題の盛り上がりと綺麗に重なる。

 

温暖化の危機を煽りながら、緑の党は子供デモFridays for futureも強力に支援してきた。子供たちは18歳になったら、皆、緑の党に投票するだろうから、応援のし甲斐は十分にある。

そして、それに脅威を感じた与党が、なりふり構わず「惑星の救済」に参入。彼らが救済したいのは惑星ではなく、おそらく自分たちの政治生命だろうが、今や挙国一致のCO2削減作戦が大々的に展開されている。

CSU(キリスト教社会同盟)の党首が、「大規模な抗議活動で私たち政治家の目を覚まさせてくれた国民にありがとうと言いたい」と言ったのは、さすがに薄気味悪かった。

それに、物理学者のメルケル首相が、人間の力で本当に地球の温度を下げられると考えているとも思えない。

それにしても、あのグレタ・トゥンベリ氏の「大人への憎悪」はいったい何なのか。

ドイツのギムナジウム(小学校5年から高校3年までの学校)では、70年代、「ナチのやっていることを知りながら、知らない振りをしていた大人」を攻撃する風潮が、嵐のように高まった時代があった。今、起こっているFridays for future運動も、いわゆる世代間闘争の一種なのか。

それとも、環境版の文化大革命?

ただ、子供たちは環境運動のつもりでも、応援している人々の頭の中には、まったく違ったものがあるように思える。メルケル首相は、気候法案の発表の際、「私たちは、ここで何かイデオロギー的なことをしているわけではありません」とわざわざ言った。

しかし、このままでは、市場経済や自由競争がじわじわと崩れ、国民の交通手段も、市場に出回る商品も、価格も、次第に国家が統制するようになっていくのではないか。」(引用終り)

 

緑の党が政権を握れば更に激しい環境政策の名の元に国家統制が進むのではないかと川口マーン氏は危惧する。

環境ファシズム国家の成立である。天才哲学者マルクス・ガブリエルはこれをして「希望の光」と呼ぶ。

つまり、国家統制が希望なのだ。ナチスの時代に逆戻りだ。読売新聞も無意識にそう思っているのだろうか。

 

最後に天才哲学者マルクス・ガブリエルによる日本への提言。

「人口減少はゆゆしい問題ですが、日本は移民受け入れに及び腰です。言葉や美意識、社会制度などつまり文化が分厚い壁になっている。20年後を見据えて、日本語に習熟できるような若い外国人を100万人単位で受け入れて、訓練することを想像してみてはどうでしょうか。」

 

はい、想像してみました。20年後と言わず移民拡大により、日本文化は破壊され、日本の共同体はそれでなくても壊れかけているのに、更に破壊され、日本が日本で無くなるだろうと想像できます。

 

こんなバカげた提言するなよ、それでも天才哲学者なのか、マルクス・ガブリエルよ。大バカ野郎じゃないのか。哲学の枠を出て何もしらない、分からないことを偉そうに言うなよ。迷惑だ。

読売新聞もこの移民拡大をガブリエルに言わせたかったのか。ふざけるな、もう読売新聞の購読は止めだ。