最初この記事を読んで目を疑った。ケフィアその他の投資詐欺の宣伝文句とそっくりじゃないか、と。

(日経新聞2019..4

「金融庁は3日、人生100年時代を見据えた資産形成を促す報告書をまとめた。
長寿化によって会社を定年退職した後の人生が延びるため、95歳まで生きるには夫婦で約2千万円
の金融資産の取り崩しが必要になるとの試算を示した。

公的年金制度に頼った生活設計だけでは資金不足に陥る可能性に触れ、長期・分散型の資産運用の重要性を強調した。」
 

年金制度云々した訳ではない。厚労省の報告書ではなく、金融庁の報告書であるところが肝である。

株価を何とか上げたいばっかりに、年金制度をダシに使って、国民に株や投資信託への投資を促そうと意図したものだ。

 

 それにしても、安倍政権も貧すれば鈍するとはこのことだ。こんな報告書をまとめた識者とやらもバカばかりといえる。

 要はこの報告書、信託銀行、証券会社の営業支援資料そのものなんである。下手をすれば投資詐欺師がうまく使うことは間違いない。下手しなくても詐欺師の重宝な営業資料になっている。

 

詐欺師がささやく。

「金融庁が報告書を出したのをご存知ですか。公的年金制度に頼った生活設計だけでは資金不足に陥るといっています。95歳まで生きるには夫婦で約2千万円の金融資産が必要なんです。そのために早くから資産運用が必須だと。

そこでわが社の投資の話を聞いて下さい。今100万円投資していただくと、利子は毎月3割と高額です。2000万円の資産形成なんてあっという間ですよ。ぜひ投資してくださいな。」

 

投資詐欺のポイントは将来の不安と高リターンを組み合わせることだ。しかし、何回か利子を受け取って安心していると、突然リターンが滞り、電話をしてもつながらない、ドロンしてしまっているというのが投資詐欺の相場だ。

投資詐欺にご用心という言葉はこの報告書には出てこない。つまり、財務省金融庁は個々の家庭のことなんぞどうでもいいということである。

普通に真面目に株に投資しても、素人に利益が得られることは滅多にない。大体損をする。アパート投資なぞは家賃保証しますなんて嘘ばかりで、「かぼちゃの馬車」事件のようにスッテンテンになるのがオチだ。

 

しかし、多くの真面目な国民は、金融庁のいい加減な報告書をまともに受け取り、投資を早めにやらなくちゃと思うだろう。

金融庁は国民の将来の不安を煽り、詐欺の片棒を担ぎ、国民個々の資産のリスクなんて何の責任も取る気はないのだ。

 

 この報告書に立憲民主党の辻元が反応した。しかし、相変わらず頓珍漢でどうしようもない。

2千万円貯金問題」を野党追及  金融庁報告に「責任放棄」と批判
 野党は5日、参院選をにらみ、終盤国会で年金問題を巡り安倍政権を追及する考えを示した。

95歳まで生きるには夫婦で2千万円の蓄えが必要と試算した金融庁金融審議会の報告書について「人生100年時代に国民一人一人が勝手にやれという責任放棄宣言だ」(立憲民主党の辻元清美国対委員長)と批判した。
 辻元氏は報告書に関し「衝撃的だ。全く根拠が分からない。国民年金だけで生活している人もいる。いきなり国民に2千万円貯金しろと言う国は聞いたことがない」と記者団に述べた。」

 

この報告書、「人生100年時代に国民一人一人が勝手にやれという責任放棄宣言」をしているわけではない。勝手にやれ、ではなく、もっと悪い、悪の道に引き込もうとしているのだ。そこを批判してくれよ。

普通の日本国民は、株に投資なぞはしない。株で儲けることに慣れていない。せいぜい宝くじだ。

 

危ないことに手を出せば、やけどをするということを日本の普通の人はよく知っている。ケフイアやよくある詐欺師に数千万円取られましたと被害者づらしてテレビで文句を言っているのは、強欲人間だったにすぎないのであり、普通の人はそういう甘い話には、そもそも乗らないのである。苦労して貯めたお金は有効に使うのである。投資なんぞに興味はないのだ。

 

そういう人々を悪の道に引きずり込もうとしているのが、今回の金融庁の報告書なんだ。そういうところを辻元は指摘すべきなんだ。

「責任放棄宣言」よりもっと悪質なんだということを追及すべきなんだ。

 

もうひとつ、辻元に無いものねだりだが、年金制度が破綻するかもと追及するのでなく、そもそも何で日本だけ景気が悪いままなのか、米中摩擦で不景気ということなく、なぜ日本だけGDPがこの10年全く伸びなかったのかを追及せよ。海外の先進国はみんな1.5倍ほども増えているんだぜ。

経済が成長していれば、年金や医療問題は簡単に解決するんだ。そういう大きなことを追及しないで、チマチマしたことを追及したって、参院選で勝てるわけがないんだぜ。