「踏切の遮断機をのこぎりで切断したとして、千葉県警船橋署は13日、器物損壊容疑で、同県市川市大町、自営業中野勝徳容疑者(53)を逮捕した。容疑を認め、「仕事があるのに、渋滞して車が動かず腹が立ってやった」と供述しているという。」
 

遮断機2本ものこぎりで切り落とすとは、やり過ぎで衝撃的なんだが、ネットの声として

・流石に30分も遮断器降りたままとか、それは問題だろ。そらキレるわ

・電車の通過もないのに、遮断機下ろす必要なかったんだろ

など、必ずしも遮断機をのこぎりで切り落とした者に非難ばかりはしておらず同情の声も多い。

 

人身事故で長時間運転停止が見込まれるなら、京成電鉄もそれなりの対応をすべきだろう。横断者のことが全く無視されているのは鉄道会社の片方の公益事業の責任を果たしていないといえるのではないか。

公益性は運輸事業ばかりでなく、街の横断歩行者や車両への配慮も含まれるのは当然のはずだ。

 

その切断映像が面白かったのか、テレビ局各局が早速開かずの踏切についてレポートをしていた。

川崎市のJR東日本の平間駅の開かずの踏切をレポートしていたが、ひどいときは1時間に延べ40分も遮断機が下りているという。遮断機が上がっても78秒ですぐに下りてくるから、横断者は下りてもドンドン渡る。危険を顧みず急いで渡る。いま渡っておかないと次は何分後になるかわからないからだ。

ついには警官も出て、無理やり横断者をとっ捕まえて警告書を出す始末。自転車横断者は危険往来罪で逮捕?だ。

レポーターはこの状況を「無法状態」「無法地帯」と表現する。

 

 しかし、その表現に大いに違和感を覚えた。

朝の通勤時間帯、列車の本数が多いのは乗るものにとってはありがたいが、踏切横断する者にとって、開かずの踏切こそ「列車の無法地帯」といえるのではないか。余りにもJRが運行本数を多くしたが故の歩行者・通行車両の生活権の侵害となっていやしないのか。

 

そもそも開かずの踏切は何十年も前から問題になってきて、なかなか解決しないのが相場となっているが、開かずの踏切の権利は鉄道会社にどこまで許されているのだろうか。

無限に開けなくても問題はないのか。極端に言って、事故などではなく、例えば3時間踏切を連続踏切を空けずに鉄道を運行しても許されるのか。或いは10時間も踏切を通センボにしても許されるのか。

そんなことはないはずだ。誰か教えてほしいものだ。

 

日本人は大人しいから、ただただ我慢するか、無理やり通り抜けるかぐらいかしない。警官に怒られても無理に通った自分が悪いという意識があるから、警官に食って掛かることはしない。

つまり、無理やりわたる側のこの負い目が、鉄道会社の怠慢を引き起こしている。

当然鉄道会社は金がないというのだろうが、公害と同じで、金がないから住民に迷惑をかけていいということにはならない。

 

しかし、公害は被害者意識がきちんとあるから企業に要求できるし、企業側も加害者意識があるから何とかしようと最大限考えるが、開かずの踏切問題は、被害者側に負い目がある、日本的な糞真面目さが幸いして鉄道会社は改善しないことにあぐらをかく。

 

そんな怠慢に体を張ったのが、遮断機をのこぎりで切り落としたおじさんではなかったか。

これからは大量移民社会であり、多文化共生社会となる。開かずの踏切をのんびり待つ、いやのんびり待つのでなくいらいらして待っているのだが、他国の文化なら、体を張ってつまり暴力で抗議するものが数多く出てくるに違いない。そうなると鉄道会社も「おもてなし」と称して開かずの踏切解消対策でもするのだろうか。

 

さて、このJR平間駅の開かずの踏切にたいして、抗議する県会議員がいた。想定どうり共産党議員だ。まさにどぶ板活動だが、こういうものは昔は自民党議員がやっていたのではないか。共産党は嫌いだが、こういう活動をきちんとしているのには頭が下がる思いだ。

 

神奈川県会議員君嶋ちか子議員のホームページ活動日誌をみると、「開かずの平間駅踏切、JR東日本に申し入れ」(20181122日)がある。

「平間駅に隣接する踏切は、朝本当に開きません。

私は月に2回平間駅の宣伝を行っています。8時に終え、踏切を渡ろうとするのですが、最高で20分近く待ったことがあります。その間に、自転車も人もどんどん遮断機の下を潜り抜け、渡っていきます。時に遮断機が引っ掛かり、それがさらにはね返り、人に当たるなど、危ない場面も珍しくありません。

また、人が潜り抜けるのが常態化しているので、もし何かのタイミングが違って大事故になったら、とひやひやしています。

このような場面が生じるのは、下り電車がホームに差し掛かるかなり前の時間から遮断機が下りるからです。ホームに来る電車を待ち、乗降が済んで発車し、踏切を通り過ぎるまでの時間が何と長いことか(この間にしびれを切らした人が渡ります)。やっと行ったと思ったら、上り電車が来ます。この繰り返しで20分となる訳です。

この状態を何とかしなければと、地域の方、はたの君枝議員、市古次郎市議予定候補とともに、JR東日本横浜支社に申し入れに行きました。

(中略)

いずれも精査して後日回答という事になりましたが、朝のストレスを少しでも改善しつつ、安全な踏切をめざしたいものです。

武蔵小杉駅改善に続いて、このような取り組みができることはうれしいものです。「おかしい」とか「困る」とかを放置しないで、行動に移せるという事が貴重です。」

 

鉄道会社は金がかかるからやる気がないなら、政治がもっと介入して市民の利便性を確保すべきなのである。一つの案は、開かずの踏切は法律で規制し、例えば20分も開かない踏切は是正措置を取らせ、罰するとか。つまり、運行本数を減らさせるのだ。運行本数が減るということは鉄道会社に痛みが生ずる。そのとき初めて開かずの踏切対策に鉄道会社は本腰を入れるようになるのではないか。

 

テレビ局もバカみたいに無法地帯だと叫ぶだけでなく、少しは知恵を出せよといいたい。無理だろうけど。