最近ネットで斬新な中国情報を提供してくれているYouTube「妙佛中国語講座 DEEP MAXというのを見つけてよく見ているのだが、この中で「三峡ダムは中国共産党が生み出した制御不能のモンスター!下流域の住民は利権の人質」という題のものを見た。

(妙佛氏の分析は若いのに一流のものである)

また他にも三峡ダム関連のYouTubeが幾つかあった。

 

ダムの決壊といえば、ブラジルの鉱山ダムが今年起きているし、昨年は韓国が作ったラオスのダムが決壊して、大規模な被害を出している。三峡ダムについては、昔から問題を起こすだろうと言われていたのは知っていたが、関心は薄れていた。

 

なぜ今三峡(揚子江)ダムなのか、理由は二つだ。

一つは、著名な中国の水利専門家で黄万里清華大学教授が、昔から地質、環境、生態などの観点から三峡ダムの建設に反対し、中国政府に対して幾度となく意見書を提出したが一切無視されたにも関わらず、建設が強行され、竣工(2009)した時、「もしダムを強硬に建設したら、10年もたないだろう」と警告したときから、今年がちょうど10年目に当たるのであった。

もう一つは、グーグルアースでみると、三峡ダムの何百メートルにも亘る堤が歪んでしまっているというものだ。但し、光学的な歪み(蜃気楼等)やマッピング時の歪みではないかという意見もあるからはっきりしない。

 

ブログ「戦後体制の超克」も「中国三峡ダム決壊寸前!」という記事を昨日書いていた。写真入りでなかなかよく分かる記事となっている。

 

 グーグルアースによる写真から三峡ダムの堤が歪んでいるからといって、事実がそうとは限らないから即決壊とはならないだろうが、中国当局のこの世界最大のダムの謳い文句がドンドントーンダウンしているのを見ると、「10年もたない」という教授の警告も無視できない。

 建設当初のうたい文句は1万年に一度の大洪水をも防ぎ止めることが可能な三峡ダム」だったものが、その後「1000年は持つ」となり、数年して「100年は持つ」とダウンしており、その後のダム調査で、地盤の変形などが合計5286カ所見つかり、大きなひずみが生じていることが判明。ダムの構造物や防水壁には約1万カ所の亀裂が見つかり、補修に奔走したとのこと。

今では「三峡ダムの“蓄洪能力(洪水防止のための貯水能力)”には限りがあり、希望の全てをダムに託すな」となってしまったそうな。当局すら現実をみて自信喪失の体である。

そうなると「10年もたない」という教授の警告も合わせ、ダム決壊も現実味を帯びてくる。

 

 元々このダムは洪水防止と発電が主な目的だった。発電の方は全中国の1割を供給しているそうだから、それなりに役立っているのだが、洪水防止の方は、

現実の三峡ダムは建設当初の最大目的であったはずの洪水防止機能を全く果たしていないのである。長江の中・下流域に大雨が降れば、中流域に所在する三峡ダムは満水により水門を開けて放水することを余儀なくされる。下流域はただでさえも大雨による増水で氾濫直前にあるのに、三峡ダムから排出された膨大な水量が加わることで、長江沿いの地域に甚大な洪水被害をもたらしているのだ。一方、長江の下流が干ばつに襲われて水を必要とする時期には、三峡ダムは一定の水量を貯水しておく必要性から放水を行っておらず、下流域の水不足を知りながら見殺しにしているのが実情である。

ということだ。

しかも

「三峡ダムにとって、さらに深刻な事態がもちあがっている。長江上流から流れて来る砂礫で、ダムがほぼ機能不全に陥り、危機的状況にあることだ。

怒涛のように押し寄せる大量の砂礫で貯水池が埋まり、アオコが発生してヘドロ状態になっている。ヘドロは雑草や発泡スチロールなどのゴミと一体になり、ダムの水門を詰まらせた。ゴミの堆積物は5万平方メートル、高さ60センチに達し、水面にたまったゴミの上を歩ける場所があるほどだという。地元では環境団体などが毎日3000トンのゴミを掻き出しているが、お手上げ状態だとされる。

重慶市でも、押し寄せる砂礫で長江の水深が浅くなった。水底から取り除いた砂礫は50メートルも積みあがった。重慶大橋付近の川幅はもともと420メートルあったが、橋脚が砂礫に埋もれて砂州となり、今では川幅が約半分の240メートルに狭まっている。大型船舶の航行にも著しい支障をきたしている。」(譚璐美氏)

 

その他にもこのダムが、濃霧、長雨、豪雨、干ばつなど気候変動や地震を引き起こしているのではないかと言われている。

つまり万里の長城の如く役立たずの無用のダムに成り下がっているのだ。

そんなところにダムが決壊するかもという恐れが迫っている。

 

この巨大ダムが決壊するとどういう被害が想定されるのか。

「万一、ダムが決壊するようなことがあれば、長江流域の広大な土地が洪水に見舞われ、穀倉地帯は壊滅して、数千万人の犠牲者が出るだろう。長江の河口部にある上海では都市機能が完全に麻痺し、市民の飲み水すら枯渇してしまう。」(譚璐美氏

という想定被害すら中国的な未曾有のものになると想定されている。それは日本の九州にも津波として襲ってくるかもしれないという人すらあるようで他人事ではなさそうだ。

 

そんな大惨事が想定される三峡ダムだが、中国政府はどう思っているのだろうか。苫小牧CCSと地震の関係のように、決壊など想定していないかもしれない。

というより、そもそも三峡ダムは利権そのものだった。それは建設のみならずメンテにすら利権構造が付いてくる美味しい商売なのだった。

「建設中から数々の難題が生じた。まず「汚職の温床」と化した。総工費2000億元(約32000億円)のうち34億元が汚職や賄賂に消えた。」(譚璐美氏)

とのことだが、李鵬と江沢民の利権として発生し、今は習近平が横取りしようとしているとのこと。

そしてダムメンテ費用として毎年巨額の費用が注ぎ込まれているので、そこからも莫大な利益が生まれる。

つまり中国人民にとっては一つもいいことがない三峡ダムも中国共産党幹部にとってはなくてはならない美味しい存在となっている。

巨大な災害に対する防止策は別の誰かがやればいいといったところだろうか。

 

中国は巨大でかつ無駄なものを作る性癖があるようだが、大躍進運動でバカバカしい農業政策、無意味な土法高炉など中国国内で大混乱を招き、人類史上最多の大飢饉と産業・インフラ・環境の大破壊と数千万の餓死者をひき起こしたことをしでかしても中国共産党は生き残ったのである。

だから三峡ダムの決壊による惨事などは、中国の歴史からすれば何ほどのこともないという恐ろしい国なのである。