「貴乃花親方が理事選落選!わずか2票」とかなんとか言って、あたかも残念だというふうに報道されているが、それでは昨日の一門の集会後の参加親方衆のご機嫌な態度の説明ができない。

勝つためにみんなで頑張ろう、なんて部活の気勢を上げる会じゃあるまいし、もう少し深読みしたほうがいい。

 貴乃花がはっきり言っている。

「みなさんぜひ阿武松親方に入れてください。自分は1票でもいきます」

 

スポーツ紙はこれを「自力で当選への道を探る意思を示したという」とコメントしているが、他の一門の若手親方の反逆を期待したとしたら、それは甘すぎる。

つまり、そんな票は貴乃花は全く当てにしていない。つまり、落選することに決めたということの表明だろう。

 

 あの執念深い貴乃花が理事になることを諦めたって?いや諦めるわけがない。必ずや遠からず理事長になるだろう。そのための戦略的後退なんだと思う。

 

「孫子の兵法」の「形篇」にはこうある。

≪昔の善く守る者は、九地の下に蔵(かく)れ、九天の上を動く。故に、能(よ)く自らを保ちて、勝ちを全うするなり≫

(昔の防御が上手な将軍は、まるで地に深く潜っているように自分の力を隠してタイミングを図り、攻撃に転じるときには空の上からすべてを見ているように動いた。だから味方を安全にして、しかも完全な勝利を遂げることができたのだ。)

あるいはまた「孫子の兵法」の「三十六計逃げるに如かず」ということだ。

 

 なぜ今貴乃花は後退又は逃げようとするのか。

貴乃花は理事になれる十分な票数は持っている。だから普通に考えれば理事選に出て理事になるのは確実だ。

しかし、ここでひとつのリスクが頭に浮かぶ。評議員会議長の池坊保子氏の言葉だ。

先月の臨時評議員会で、

「公益法人の役員としておおよそ考えられない行為」と貴乃花親方の行動を断罪した上で、「上司であり先輩でもある八角理事長が何度も携帯電話に電話してもまったく応答がなく折り返しの電話もしなかった。著しく礼を欠いていた」とその貴乃花親方の協会に対する態度や対応を解任理由に付け加えて、解任決議を全会一致で承認した。

 そして、次期の理事として貴乃花が選ばれたら評議員会はどうするのかという問いに対して、

「いまのところ、そのようなことをみんなで話し合っていないし、それについて考えていない。理事候補として挙がってきたならば、またお話の過程をへて、評議員会で真摯に厳粛に粛々と決めさせていただきます。」

と答えた。

 

 普通なら理事選挙で選ばれた者は、当然評議員会は問題なく追認する。しかし、今回は違う。貴乃花を処分してわずか1~2か月で評議員会がすんなりと承認することにはならない可能性がある。

つまり1~2か月という時間というものが問題になってくるのだ。貴乃花はその後評議員会に恭順を示していない。いつまでも改革を唱え、マスコミを味方に付けて、相撲協会と敵対姿勢を示している。

評議員会としての威厳を示すためにも理事選結果の自動追認はしないだろう。

 

…と貴乃花は考えたと想定できる。もしかするとすんなりと承認してくれるかもしれないが、承認しないリスクもかなりある、と。

つまり、貴乃花が理事になれないとなると、最悪貴乃花一派を代表する者が誰もいなくなる。そこで考えたのが、戦略的後退だ。貴乃花一派を代表する理事を確保しつつ、貴乃花の理事への意欲を内外に示しておく。

「昔の防御が上手な将軍は、まるで地に深く潜っているように自分の力を隠してタイミングを図り、攻撃に転じるときには空の上からすべてを見ているように動いた」

と孫子の兵法にあるように、まだ若い貴乃花は次の2年後の理事選を狙ったものと思われる。この2年間で仲間作りに専念できるのである。

 つまりは、2年後の理事選に、阿武松親方と貴乃花と2人の理事の椅子の確保の可能性に賭けたのである。

 

 これが、昨日の一門の集会後の参加親方衆のご機嫌な態度の理由である。

阿武松は貴乃花の代理理事だ。そしてこの集会は将来は貴乃花一門が相撲協会を牛耳って行くんだという誓いの会だったのである。赤穂四十七士の討ち入り前の蕎麦屋での会合のようなものだろう。

 

 因みに貴公俊の十両昇進の記者会見で見せた貴乃花の気味の悪い笑顔は何だったのか。なぜ貴景勝の小結昇進の記者会見にはなぜ出てこなかったのか。

 私のうがった見方を披露しよう。

それは、あの記者会見はマスコミのためにしたのではなく、龍神総宮社の辻村公俊教祖に向けたものだったと考えられる。

つまり大事な名前を頂いた貴公俊がこんなに強くなって、十両に昇進しましたよ、これも全て辻村公俊教祖のお蔭です、と辻村公俊教祖に向けてのお披露目の意味があったものと思われる。だから、あんなに異常なほど笑顔と饒舌に語ったのである。

 

そしてこの会見を見たマスコミはみんなホッとして、もっと前からこんな感じでざっくばらんにマスコミに接してくれたらよかったのにと思ったはずだ。貴乃花も普通の人じゃないかと安堵した。

しかし、考えようによっては、このことこそが貴乃花の異常性を示しているのである。この後理事選関連ではまた貴乃花はぶっきらぼうな沈黙に戻ってしまったのをみれば、あのはしゃぎようが異常なんである

 そして当然龍神総宮社に関わりのない貴景勝の昇進会見には、出てマスコミに媚など売る必要がなかったのだ。可哀そうだけど。口で言うほど弟子思いじゃないということだね。

 

 ついでに、貴乃花の頭の悪さを示す記者会見でのできごと。

貴源治、貴公俊の双子力士はすばらしいですねと記者がよいしょすると、貴乃花が「彼ら素性がいいからだ」と。このとき、貴乃花は「そせい」と発音。テレビのテロップは「素性」と表記。

これを見ていて、「なんだ「そせい」って。「素性」?この漢字なら「すじょう」だろう。こんな時はふつうは「素質」がいいとか優れているというんじゃないか」と思った。

 

 因みに、「素性」を「そせい」と読むこともあるらしい。だから一概に読み方として間違いじゃない。しかし、「素性」は「生まれ。育ち」を意味するのであり、この記者の質問の文脈及び貴乃花の回答では、貴公俊の素性、生まれ、育ちがいいとは変な回答になってしまう。

 貴乃花は教祖の教えもあってか、身に付いていない難しい言葉を使う癖がある。世界観とか。こういうのは逆に知性がないことの表れになるから止めたほうがいい。