日本人の優秀さを示すのに、お釣りを日本人は引き算で計算できるが、外国人は足し算でする。日本人は難しい引き算が簡単にできるから優秀だと言いたいらしい。
最近は電卓もあり、レジではお釣りの計算は機械がやるから引き算をする機会が減った。日本の大学生も引き算ができなくなったらしいが。
でもこれって外国人をバカにする日本人の思い上がりじゃないのか。この計算方法、よく考えれば日本人のほうがアホであり、外国人のほうが知恵があるんとちゃうやろか。だって引き算より足し算のほうが断然簡単だから。
プレジデントOnlineに「子どもに教えたい 便利なおつり暗算術」という記事があった。
塾の先生が書いているのだが、いかにも日本式で便利といいながら、全然便利じゃない。
子どもに教えたい 便利な"おつり暗算術"
志進ゼミナール 塾長 小杉 拓也 プレジデントOnline
・759円の買い物で「1000円」出すと、お釣りは?
足し算に比べて、引き算は苦手意識を持つ人が多い。特に繰り下がりのある引き算は、私が教えている小学生もつまずきやすい計算のひとつである。大人も同じで、親御さんも自分の子どもに、繰り下がりのある引き算をうまく説明できないようだ。
例題で考えてみよう。「コンビニで759円の買い物をして、1000円札を出したときのおつりはいくらか?」
小学算数では、「1000−759」を筆算で解く。まず759の一の位の9を引くために、1000の千の位から順に繰り下げなければいけない。百の位も十の位も0だからだ。「74−38=?」のような2ケタ同士の式だと、1回の繰り下がりなので、たいていの子どもは理解できる。
しかし、このように繰り下がりが連続する場合、子どもはつまずきやすい。
この筆算の仕組みを子どもに説明するときは、1000を1000円と見立てて、100円玉9枚、10円玉9枚、1円玉10枚に分解(両替)して考えるとわかりやすい。そこから、100円玉7枚、10円玉5枚、1円玉9枚を引いていくと考えれば、「9−7=2」「9−5=4」「10−9=1」で「241」の答えが瞬時に出る。この仕組みを知っていると、お子さんがいる場合も、わかりやすく説明できるはずだ。
そして、この仕組みを応用したものが、図に示した「おつり暗算術」である。2つのパターンがあって、(1)がいま述べた考え方に基づくものだ。十の位以上はすべて9から引き、一の位だけ10から引く。その計算手順は先に示した通りである。
・繰り下がりが多い計算でも、パッと計算できる
(2)も根本的には同じ考え方で、両替した先ほどの1000円分の硬貨から、1円玉を1枚外して「999−759」の形にして、繰り下がりのないようにする。そして、出てきた答えに外しておいた1を足せばよい。一言でいうと「1000から引く」ことは、「999から引いて1を足す」ことと同じである。「1000−759」=「999−759+1」=「240+1」で、やはり答えは「241」となる。
(引用終り)
この塾の先生の計算方法は、引き算をいかに易しくするかの工夫をしたのだが、答えは出るかもしれないが、頭の中で一旦翻訳しないといけないから、結構面倒になる。
この先生のダメなところは、最後まで引き算をさせようとしていることだ。
ここで外国人の足し算方式の出番となる。前にも書いたが、引き算より足し算のほうが断然簡単なのだから、引き算を足し算にしてしまえばいいのだ。
この足し算方式で例題「1000−759」を計算してみよう。
引く数の上の桁が全て9になるように足してみる。
そして最後の桁だけ10になるように足す。これで終了。
7+2=9 5+4=9 9+1=10 答えは241だ。
最後が10になるように足せば、繰り上がって2桁目以降の9も順次繰り上がっていく。
もう一つ例題。
1,000,000-328,116=
7桁-6桁だ。引き算なら難しそうだ。
しかし、足し算方式ならあっという間に答えが出る。
上から順に9になるように足す。67188だ。
最後の桁だけ10になるように足す。4だ。
つまり答えは671,884
どうですか。あっという間の計算、簡単でしょう。
しかし、よく考えると筆算でないとき、私たちは引き算を一々引かずに足し算を無意識にしているのです。
例えば記事に書かれている
「「1000から引く」ことは「999から引いて1を足す」ことと同じである。
「1000−759」=「999−759+1」=「240+1」で、やはり答えは「241」となる。」
のなかで、999−759の計算は暗算をする場合は、100の位でえーと9から7を引くと、なんてやって答えを出していない。
一瞬の内に7に2を足して9だから、2としてしまう。
つまり足し算のほうが楽なことが頭が自然と分かっているからだ。
それを引き算だから、引き算しかやっちゃいけないと頑固に考える日本人。
外国人はそれを足し算でやってしまうのです。だから、頭のいいのは日本人ではなく、外国人なのです。
日本人は何故か劣等感の裏返しとして、外国人に優越感を持ちたがる。
その発現として、日本人は難しい引き算をできるから優秀で、外国人は引き算ができない、足し算しかできないバカな国民だと思いたいのです。
よく考えれば、計算を楽に効率的にできるようにした文化のほうが賢明なはずだ。引き算を足し算で済ますことをするほうが優秀なのです。
外国人は日本人のようにわざわざ自慢しないだけなのです。
それよりも度し難いのは、難しいことをやり遂げることが優秀だという固定観念に日本人は凝り固まりすぎているということだ。戦前から続く精神主義がなせるわざだろうか。
難しいことを易しくする。これはビジネスの根本です。QC活動もその一つですし、マニュアル化もその考え方です。
マニュアル化は画一的だと言われるが、必ずしもそうではない。正しいマニュアルというものは、サービスの質を一定にし、会社利益を最適化するベテランの最適経験・技術を誰でも遂行できるようにしたものが、マニュアルというものです。
ということで、いつまでも引き算のできる日本人を自慢していても進歩はないということです。
因みに、引き算は足し算(9になるように足し、最後は0にする)だということを教えてくれたのは、45年前、私が会社に入って現場訓練をした時の先輩でした。
お客の料金支払いの仕事についたとき、これならすぐにお釣りが計算できると先輩が教えてくれたお釣りの計算方法です。
その後、引き算ができる日本人、できない外国人の話を聞いた時、それちょっと違うんじゃないのと思わせてくれた経験でした。