今日フジテレビ(とくダネ!とみんなのニュース)でリクライニング論争を扱っていた。

 

 「論争のきっかけは、お笑い芸人小藪千豊さんのTwitterだった。新幹線でリクライニングシートをいっぱいまで倒した小藪さん。すると、後ろの席の人から「倒し過ぎ」と言われたという。これに対し「JRはどう思ってるんやろ」とつぶやいたところ大きな反響があったのだ。

(中略)

そこで、リクライニング問題についてJR東日本に質問してみると、こんな答えが返ってきた。

   

JR「角度につきましてはお客様同士の譲り合いや お声掛けなどでご利用いただくよう、ご協力をお願いしています」

  

 倒す倒さないで言い争ったりして不快な旅にならないようにするには、見知らぬ人と席をめぐって譲り合う。それも楽しみの一つと割り切って、お互いに寛容な心でコミュニケーションをとることが大事なようだ。」(とくダネ!公式ブログより)

 

   誰でもが旅行時に感ずることだが、小藪のようにリクライニングシートをいっぱいまで倒してきたら、後ろの席の人はずっと不愉快な思いをして旅をするに違いない。たまにはわざと前の座席を蹴ってみたりして…。

 

  倒す側の言い分は、倒すことは権利だというもの。不愉快な側の言い分は「少しは後ろの人のことも考えろ」というもの。

  ここでなぜ「権利」という大げさな言葉が出てくるのか。それは物理的にリクライニングシートをいっぱいまで倒すことができるからだ。

  そもそも倒せるように作られているのは倒してもいいと鉄道会社が認めたもの。だから「権利」だという主張だ。


  ここには、「とくダネ!公式ブログ」氏が書く「見知らぬ人と席をめぐって譲り合う。それも楽しみの一つと割り切って」などという余裕など全くない。権利に寛容な心など求めても相手は受け入れるわけがない。

 

  だから双方の主張を言い合ってもこのままでは解決策などありはしない。

 

  ここで一番のワルは鉄道会社だ。JRも民鉄もどこもみんないい加減なのだ。

   

  JRの主張

角度につきましてはお客様同士の譲り合いや お声掛けなどでご利用いただくよう、ご協力をお願いしています」

が全く許せないのは、鉄道というサービスを提供しておきながら、「我、関せず」という態度が見え見えだからだ。

 要するに、乗客同士、勝手に喧嘩するなり、気を使うなり、ご自由に。オラには関係ないことだから、というのが鉄道会社の態度。

 

 サービスをしきりに強調する割にこれに関してはリクライニングをする側のサービスのみ重んじて、それにより迷惑する乗客は我慢せよ、もしくは「あんたもリクライニング、倒せばいいじゃん」ということだろう。なんだか両者のいがみ合いを楽しんでいるような感じがうかがえる。

 鉄道会社はトータルなサービス満足、つまり満足の最大化を目的としなければいけないのに、部分最適で誤魔化している。

 

 禁煙車がなぜこれまで普及したのか考えて見たことがあるのか。

 タバコを車内で吸うのが昔は権利だった。肘掛けには灰皿がついているじゃないか。だから、車両ではダバコを吸うのが当然で、タバコが嫌いな乗客は我慢することしかできなかった。

 しかし、時代がそれを許さず、タバコを吸う方が特別な扱いにされ、禁煙がふつうになった。副流煙の害の問題もあるが、それよりなによりタバコの煙やにおいが嫌いという乗客の声が多くなったから、基本禁煙車になったことと思う。


 リクライニングも同じことだ。リクライニングもタバコと同様に単純な権利でなく、特別な扱いにしなくてはいけないのだ。権利ではなく、要望して初めて与えられるサービスにするのだ。

  

 そのためには、まず全席リクライニングの効かないシートに作り直すことだ

そして、タバコも同じようにリクライニングして休みたい客はリクライニング専用車両に行くべきなのである。

(特に有料にする必要はない。新幹線なら3両程度リクライニング車両にすればいい。)

 リクライニング専用車両なら、リクライニングを倒されても後ろの乗客は文句を言わなくなるだろう。まさにお互いさまだから。

  

 こういうことを一切検討せずに、乗客同士がトラブルを起こしたり、不快な旅行になったりしているのを鉄道会社が知らんぷりかニヤニヤして「客様同士の譲り合いや お声掛けなどでご利用いただくよう」なんぞと馬鹿げたことを言うのは、全くの鉄道会社の怠慢なのである。


 そして、そもそもこの問題を惹起させているのは鉄道会社のサービスに対する感度の低さが原因であり、一番のワルは鉄道会社なのだということに鉄道会社自身が気がつかないといけないのだ。

 

 テレビ局もその位のことに気がついてほしいものだ。