国内清涼飲料市場の勢力図が変化の兆しをみせている。市場が低迷する中で、昨年はアサヒ飲料の大幅な販売増が目立った。市場シェアはキリンビバレッジを抜いて業界4位に浮上した。今年はシェア10%到達を目指し、3位伊藤園を射程にとらえる。シェア3割を占める日本コカ・コーラグループ、サントリー食品インターナショナルの2強の牙城を揺るがせるか。
「各社とのちょっとした差をどのように価値に結びつけられるかが重要だ」。アサヒ飲料の菊地史朗社長は、市場全体が伸びない中で、昨年の販売量が前年比8.7%増と好調だった背景について、華々しいヒット商品や大規模な投資などが理由ではなかったと説明する。
同社の主力商品は、炭酸飲料「三ツ矢サイダー」、ブレンド茶「十六茶」、缶コーヒー「ワンダ」の3本柱。コカ・コーラやサントリー食品の「ペプシ」など世界的にブランド力の高い商品には及ばない。100万台近くの自動販売機を持つコカ・コーラグループのような圧倒的な販売網もない。
それでも、基幹商品の販売底上げを目指し、販促活動に工夫を凝らした。十六茶については、朝購入した商品を職場で長い時間をかけて飲むニーズがあることを受け、昨年2月に常温での味を改善するなどリニューアルし、前年を1割超上回る販売増だった。ワンダは昨年、CMキャラクターに人気アイドルグループの「AKB48」を起用。缶コーヒーの主な購買層である30~40代の男性だけでなく、幅広い層に訴求し、やはり1割近く販売を伸ばした。
販売現場でも地道な努力を積み重ねた。東日本大震災後、買いだめや供給網の混乱で、取引先から「商品をまわしてほしい」という要望が殺到。菊地社長は社員に向けて、「丁寧に、丁寧に、丁寧に対応してくれ」と繰り返した。
工場が兵庫県や静岡県にあって難を逃れたことや、2010年に買収したブランド「六甲のおいしい水」の在庫を震災直前の2月に増やしていたことも幸いし、需給調整が比較的順調に推移した。
激烈なシェア争い さらなる再編も
この結果、昨年のアサヒ飲料の販売量は1億7275万ケースと、1億7024万ケース(前年比1%減)のキリンビバレッジを初めて上回った。それでも、菊地社長は「12年はまたゼロからのスタート」と気を引き締める。
アサヒ飲料は00~02年に3期連続の最終赤字になるなど不振を極めたが、03年からの荻田伍(ひとし)社長時代に、基幹ブランドに経営資源を集中させるといった改革を進めて赤字体質からの脱却に成功し、昨年まで9年連続販売増となった。
ただ、もともと競争の激しい業界だけに、前年の好調を続けられるかは未知数。飲料業界のシェアは首位の日本コカ・コーラが3割程度、これを追うサントリー食品が約2割。伊藤園、キリン、アサヒが1割前後で3位集団を形成し競っている。
アサヒ飲料の今年の販売計画は未公表だが、引き続き増加を見込むのは確実。ただ、アサヒに抜かれたキリンビバレッジも黙ってはいない。同社の前田仁社長は16日の会見で、昨年の劣勢について「値引き販売などで数量を追いかけないようにしている。ただ、シェアにお客の支持が反映されることを思えば、営業や販売活動の努力不足だった」と振り返った上で、今年は新商品投入や販促活動の強化で9%増の大幅な数量増を目指すとしている。市場全体の大幅な伸びが見込めない中で、必然的にシェア争いは激烈を極める。
業界再編もくすぶる。アサヒがハウス食品から水事業を買収したのに続き、昨年はサッポロホールディングスがポッカコーポレーションを買収するなど再編が加速した。アサヒが今年もシェアを伸ばせば、ライバルを刺激し、さらなる再編を誘発する可能性もある。
出典:SankeiBiz