クロは、まだ子猫であった。。一体こんな山奥で何をしているのであろうか?
親とはぐれたか?飼い主に捨てられたのか?
クロは、無邪気にも私の服の皺を叩いて遊ぶ。
「心を許せるのは、お前のようなヤツだけだな・・」
私は、優しくクロの頭を撫でた。
クロの喉が鳴る。
私は微笑み、その目を遠くへ流す。。金色(こんじき)の光が山々に映え美しく輝いている。
クロの毛も、夕日に茶色く輝いている。
私は、このまま、こうしていたいと思った。。が、そろそろ行かねばならない。
このままでは情が残って、返って別れが辛くなる。
連れて帰りたいが、下界には、様々な危険も待っている。。ひとり寂しくとも、山奥で暮らしていた方がクロにとっては幸いかもしれない。
それに、クロの丸っこい体から、食物には不自由していないことが窺われた。
生き物にとって、生きている「今」が一番幸せなのかもしれない。。自然界であってみれば、尚のこと。
(続く。。)
