昨年だったか、臨床心理士による心理療法にこの国の政府の健康保険が適用されるようになった。医者が心理療法を承認すると健康保険指定の臨床心理士のカウンセリングが6回まで、医者が延長を認めた場合はさらに6回の合計12回まで、保険でカバーされる。そこで、今、この国では即行で効果があるといわれるCBT(Cognitive Behavioural Therapy、認知行動療法)が大流行である。
CBTというのは、大雑把にいうと、気分が悪くなるのは物事を必要以上に悪く考える(=認知がゆがんでいる)からで、その認知のゆがみを正せば気分はよくなるという思想に基づく療法で、物事を必要以上に悪く考えないためのテクニックをいろいろ教えてくれる。自習サイトもいろいろあって、オーストラリア国立大学のムード・ジム(リンクはこちら )や、西オーストラリア州政府保健省のインフォパックス(リンクはこちら )はとくに有名である。
私もかれこれ2年前、まさに死にそうだったころに試そうとしたことがあるのだけれど、この療法には思わぬ欠点があった。まず、この療法は、物事に対する考え方を変えようというものなので、物が考えられる状態でないとチャレンジのしようがない。うつがほんとうにひどい時には「考える」などという大仕事はできるわけもなく、私が会った何人かの医者は口を揃えて、「CBTはうつがよくなってからやってみましょう」と言ったのである。さらにCBTは、認知のゆがみが認められない場合、つまり事実、物事が最低最悪の状態にあるために最低最悪に思われる場合には、打つ手がない。私は専門柄、物事がどの程度難しい状況にあるかは臨床心理士を含めた一般の人より正確jに理解できてしまう。そこで、私が「これを認知のゆがみだなんて言う人がいたら、その人の認知のほうがゆがんでいる」というと、CBTはほぼ確実に打ち切りになる。実際になった、、、。
そんなわけで、CBTは私には使えなかったのである。CBTがだめな私に、臨床心理士が試そうといったのはACT(アクセプタンス・コミットメント・セラピー。日本語訳は見たことがない)だった。しかし、これはシャレにしかならなかった、という話はまたの機会に。