逃げたい。
何も考えず、ただただこの現実から逃げ出したい。
逃げたって、現実は何も変わらないと、知ってるくせに。

重い。
胸が重い。呼吸が難しい。
肩が重い。荷物が多すぎる。

目を閉じると、その山ほどある、やらなければならないことが、
浮かんできて、消えない。

昨夜も、またよく眠れなかった。

この夏は冷夏だと言われ、去年みたいな寝苦しい夜はほとんどないのに、
例の「蚊事件」以来、夜寝るのが怖くなってきた。
眠いはずであっても、眠れない。

昼間になると、うとうとしてたりして、
気づいたら、寝ている。
そのせいもあって、夜はさらに眠れなくなる。
こんな悪循環、いつが限なのだろうか。

きれいなことをずっと自分に言い続けてきたが、
今回のレポートの書き直しは、実はショックだったかもしれない。
が、それはまだまだ延々に続く。

昨日の先生の返事に対して、ついに返事するのをやめた。
何を書けばいいかわからなかった。
夏休み中の書き直し、承知した。頑張る。
といったん書いたが、消した。
そんなのはバカみたい。
もうこのまま、その自分の運命を決めると言ってもいいぐらいのメールを、
待つだけでいいかもしれない。

そもそも、先生は返事なんか、要らない。


何もない時間があっても、何もしたくもない。
ただただうとうとしてたり、ボーっとしてたりするだけ。
そして、逃げたいと妄想し続ける。

どこまで逃げたって、論文一つも出来上がるわけがない。


が、これは自分が選んだ道。
論文だって、自分で選んだのだ。

これは苦しい道だと、言いたい。
もうきれいな言葉で、自分を騙し続けたくない。

けど、一つの目標(仮にそれが目標だとして)を達成するためには、
苦しい道を歩まなければならないのだ。

これは、誰よりも、わかっている。
そして、その後味の甘さも、誰よりもわかっているはずなのだ。


ドラマを見るのが好き。
料理をするのが楽しい。
寝るのもいい。

そのすべては現実逃避だ。
少しの間だけでも、重荷から自分を解放したい。

ドラマは永遠に終わらないでほしい。
料理もずっと煮込む状態であってほしい。
寝て、できれば、目覚めたくない。

そのすべてが逃避なのだ。


目が覚めた瞬間、
目の前に何もなく、ただ荷物が重なっていくだけ。


私だって、勉強なんか好きじゃない。
本を読むなんて、つらい。
こんな無意味なことを一生懸命やって、楽しんでるなんて、バカみたい。

けど、これは私が悩みに悩んで、選んだ道なのだ。
どんなに苦しくたって、一歩一歩歩んでいかなければならないのだ。



先週の日曜日が、姉の30歳の誕生日だった。
電話したら、birthday songがすぐに聞こえてきた。
そして、話している間、ずっと鳴っていた。
「音楽蝋燭」というものらしい。

何歳の姉だって、私の目には、輝かしい。
姉には、私が持っていないものを、たくさん持っている。
そして、姉が持っているもの、私はすべてない。

30歳の女。
旦那と子供と、幸せな家庭。
そこそこ地位のある、仕事。
車も家も。

それが普通なのかもしれない。
わからない。

ただ、私には、その一つもない。
家庭も仕事も家も車も何もない。
スタイルもセンスも、いい頭も、料理の腕も、何もない。

姉と比べるのがいけないかもしれない。
小さいときから、背の高くてスタイルのいい、さらに頭もいい姉とは、
比べようがないと、はっきりとわかっていた。
そして、どこに行っても、姉は私の自慢だった。
お母さんに拾われてきたでしょって、冗談で言われても、私は平気だった。

滑稽なことに、その冗談は子供時代、ずっと言われてきた。そこに行っても。
何度か、私は本当にどこかのゴミ箱から拾われてきたんじゃないかって、信じちゃいそうだった。

幸い、姉とは目が似ている、ってよく言われている。

そんな姉が、私は大好きなのだ。
姉の幸福をずっと祈っている。

が、いつの間にか、私たち、いつかあんなに近い二人が、
完全に違う二つの世界に、生きているようになって、しまった。

いや、そもそも二つの世界にいた二人だったかもしれない。
いつになっても、この家の4人がばらばらであるように。


後3年。
姉と同じとしになるのは。

今持っていないものも、そのとき、持っていない気がする。
その代わりに、失うものが増えていく気もする。

姉のようになるのは、私の夢ではないはず。
私には、私なりの夢、そして現実や将来があるはず。

いつか、姉が憧れでなくなったときに、
私は本当の幸せ、本当の自分の人生を、手にしている、のかもしれない。


が、誰だろうと、私は決して人が羨ましくない。
嫉妬、それが人間をどんどん堕落させる、悪魔なのだから。



勇気を出して、現実に直面して、
本当の自分の人生、自分にしかないものを、
見つけていこう。