我が家はたまごは専門店で買います。愛妻が買ってきます。
ある日、疑問に思って「なんで専門店で買うの?」と聞いてみました。そうしたら、ブチギレられました。
どうも、それは私が言い始めた事らしいのです。
認知症の母と14年同居していました。認知症患者と同居するという生活は、色々つらいことがありますが、私が一番つらかったのはぐっすり眠れないという事です。認知症患者は目が覚めた時が朝ですから、夜中でも動き出します。深夜に問題を起こして、飛び起きて対応しなければなりません。
デイサービスの施設を利用する手続きをしてる時、施設の方に「今一番何がしたいですか?」と聞かれて、「寝たいです」と答えたのを覚えています。
寝不足が極限までくると、寝ぼけます。人は寝ぼけている間の記憶がないことがあります。
どうやら、私は寝ぼけて、愛妻にこんな事を言ったらしいのです。
「いいですか? たまごは専門店で買わないといけないんです。鮮度と味が、断然違うんです! スーパーマーケットで買ってはいけません」
いいですか? 私の親もいつもスーパーでたまごを買っていました。専門店で買ったことはないんです。それどころか、私は、たまごの専門店に行ったことさえないのです。
愛妻は寝ぼけた私に説得されたそうです。我が家はこういう経緯で、たまごを専門店で買っています。母は他界しましたが、いまだに我が家はたまごは専門店で買っています。
人間の脳や夢を研究した本はたくさんありますが、寝ぼけを研究した本を見たことはありません。まだ研究の余地があるようです。
専門店のたまごの味ですか? まぁ、美味しいですよ。でも、わざわざ買いに行くほどかな?
夢のお告げは神秘的ですが、寝ぼけのお告げは、わざわざ聞くほどのものではありません。
イラスト by Urelzita



