西郷という人 | 超高速なエブリディ!

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作家・土橋(どばし)章宏のブログです。
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大河ドラマ「西郷どん」を毎週楽しみに見てるんですが、このところ急に西郷さんの性格が変わってしまったので、びっくり! フォースの暗黒面に落ちた? 最初は「民のため」と琉球に同情したり、戦を嫌ってたはずなのに……。そりゃ信吾くん(のちの従道)もびっくりするわなぁと。

どうも徳川慶喜がフランスに日本の一部(鹿児島?)を渡そうとしたからっぽいけど、それにしてもあの変わりようは……。

 

まあ、慶喜もかわなり豹変しましたけどね(笑) ひー様のころは気風のいい男前だったのに、命を狙われたと思ったとたん、小心者に。まあこっちは机上の空論インテリが現実に触れて豹変というパターンなら理解できるけども……。(私の大好きな新撰組を見捨てて江戸に逃げたのは許せませんが(笑)) 

 

かつては「慶喜が水戸家出身であり、勤皇だったから恭順した」という話が多かったですけど、最近の解釈は「内戦につけ入られてフランスに国を割譲されそうになったから」というのが多いようですね。ここらへんドラマどおりのようです。

ただ、慶喜も水戸に逃げてから打ち明けるんだったら、大阪にいた時から「フランスが割譲たくらんでてヤバイねん。戦はやめようや」と西郷に書状を送ればよかったのでは……。やっぱプライドが邪魔したんでしょうか。

西郷も篤姫(北川景子さんが美しすぎた)に勇ましいこと言った割には、そのあとすぐあっさり許しちゃいました。ひそかにナンノに鉄のヨーヨーでも食らったんでしょうか。

 

ともかく西郷っていったいどういう人なのかと気になって、読んでみました、「跳ぶが如く」。

 

しかし、この本、進みが遅い(笑) 司馬先生が取材能力と博識をフルに発揮していて途中から学術論文レベルになってる。「余談ながら」と話の腰を折ったかと思ったら、「さらに余談ながら」ともっと話をそらしたり、その上、「これを書いている途中で○○さんのご子孫から電話があり……」とか、貴重なデータなんだけど、西郷の話にちっとも行きつかない(笑)

時間貧乏の人にはつらい構成です。10巻になってるのも納得。

余談ながら私も学生時代はこってり読書好きで「本は厚さこそ正義」と思っていたフシがありました。ドストエフスキーとかトルストイとかどっさり太くてよかったですねぇ。今は忙しくて短編を読むことが多いです。。

 

客観的事実で西郷さんを分析してみると、やはりワイルドな部分が勝っているのではないかと。つまり戦に奔走する西郷がどうも本質に近い感じのような。斉彬の秘蔵っ子が維新に向かって爆走してる感じがします。でも人心掌握術はすごかったみたいですね。なんでも「西郷に会ってみないとわからない、会うと魅入られ、もうどうしようもなく助けたくなる」そうで、読書だけではわかりません。読んだ意味がなかったような(笑) でもまあヤクザの大親分というか宗教の教祖みたいな感じだったんでしょうか。人望は満点なようです。

 

ところが維新後は急にトーンダウン。スクラップ&ビルトでいうと、スクラップは得意だけど、ビルトは不得手だったのかも。ビルトはむしろ大久保がやります。ここらへんの国づくりの話がすごく面白いですね。みんな洋行してイギリスやラフランス、ドイツの政治を見て日本にコピーします。民が民主政治を作ったのではなく、官が民主政治を押しつけたんですね。ルソーとかに感動して。

 

余談ですが、先日ハワイに行ったら、バイクはノーヘルOKでした。びっくりして現地の人に聞いたら「ヘルメット義務化を言われたけど、全員で反対して拒否した」とのこと。これが民主主義です。日本も昔はノーヘルでOKだったんですが、「ヘルメット義務化せよ」と言われたら誰も反対することなく義務化決定になりました。これが根っからの民主主義と与えられた民主主義の差ですね。

今でも日本は官の支配する民主主義風味の国だと思います。それが意外にうまくいっている面もあり。ユングが「日本人は世界で最も内向的」と喝破したように、リーダーについていく、お上の言うことを聞く、というのが得意な人種のようです。

 

ハワイのバイク事故で死んでる人はたいていノーヘルだそうで、どっちが正しいかはわかりません。こういう場合、個人が好きなほうを選ぶほうがいいと思います。グローバル化ってそういうことなんじゃ。

さらに余談ながら、学校教育でも、学力の差があって問題になるけど、もう義務教育の時から「この学校はできるやつはどんどん教える」とか「この学校は全員がわかるまでやる」みたいに分けて選択可能にすればいいのではないかと。

 

話を戻すと、維新において急激な民主化をすると同時に、薩長が省庁の利益を独占したので、無私の人・西郷さんはがっかりしたのかも。このあとは猟師に変身して犬を飼うおなじみのスタイルになります。釣りや投網もやってたそうで、ご本人はもう隠居のつもりだったのかも。私だって仕事うっちゃって毎日釣りしたいです(笑)

あとドラマで征韓論をやるのかどうかわからないけど、自国を防ぐために防波堤の国を作るというのは軍事地政学上でわりとポピュラーな選択のようです。ここが一般には理解されにくいけども、日本がアメリカの不沈空母であるのを見ればわかりやすいかも。もっとも最近では長距離ミサイルがあるので、その理論も崩れてきてるかな。

 

ただあのときの朝鮮にしてみれば日本が「維新を起こせ」といってもよけいなお世話だったでしょうね(笑) イギリスなどは日本に対して国土が欲しいというよりもむしろ貿易相手としたかったようですし。ただロシアは西郷の言うように南下政策だったので、そういう情勢とかもドラマで触れてくれると面白そうですが。

 

あと私の好きな「花神」の大村益次郎さんが出てきて満足。0.5秒くらい湯豆腐食べてたようなシーンがあったけど、ファンへの配慮でしょうか。「峠」の河合継之助はガトリング砲の名前のみで登場。ここらへんは来年の映画「峠」でいろいろ語られそうです。

 

司馬遼太郎の名著「峠」映画化! 役所広司、松たか子、仲代達矢ら豪華キャスト結集

 

役所さんキター。

ただ、「河井の生涯を通じて“「サムライ」=日本人の生き方”“リーダーとしてのあるべき姿”を問いかける」そうですが、河合継之助といえば、大村と同じく変わり者の印象が強いんだけども。やたら女好きで奥さんすら芸者遊びに呼んでしまうというシーンとかあるのかな(笑)

 

 

 

西南戦争がどう描かれるかも興味ありますね。田原坂とかやるんでしょうか。それよりもたぶん、人間模様かなぁ。

大久保との確執とかやるんでしょうか。川路ともいろいろあるし。

年末に向けて、楽しみですね。

 

・あっ、そうそう、今、「蘇える鬼平犯科帳」が文庫になって書店に並んでいます。錚々たるメンバーに加えていただいてるのでよかったら、ぜひ!