さてさて、
明日からは
恒例のニョッキ湯での週末だ。
朝も早よから、カッチン、コッチンに
凍ったニョッキたちが
全国のあちらこらちに散在する
「ニョッキ茹で会場」 へと集まってくる。
会場では、ニョッキ茹での準備に
今日からすでに 大わらわだ。
ニョッキは、決まった時刻に解凍させ、
決まった時間で茹で上げて、
決まった時刻に、鍋から取り出さねば
アルデンテ にはならない。
そこで、全国のニョッキ茹で会場では
おんなじ時間に、おんなじ手法で
ニョッキを茹でる。
この週末に茹で上げるニョッキの数は
56万個になるそうだ。
まさに ニョッキ茹での国と化す週末だ。
恒例のことだが、ニョッキ茹でには、
ニョッキ茹で職人がいて、
いろんなタイミングを
秒針付きの時計できちんと測って
適度にニョッキを茹でなければならない。
そのために
たくさんの呪文を、規則正しく繰り返す。
毎日、4~5回、呪文を繰り返して
ひたすらおんなじ作業の繰り返しだ。
念のために言っておくが、
これはPCRではない。
相手は、生身のニョッキである。
たいていのニョッキは
紺色をしているが
灰色ニョッキや
黒ニョッキもいる。
なかには、カラフルなニョッキもいて
赤ニョッキや、
茶色の帽子をかぶったニョッキもいて
鮮やかだ。
でも、見た目は違っても
みんな、カッチン、コッチンなものだから、
うまく呪文をかけて
その緊張を解きほぐしてあげなければならない。
年々、呪文は増えるばかりで、
「携帯電話は切りましたか?」 などという
呪文が加わって、すでに久しい。
近頃のニョッキたちには、
「スマホとアイパッドの電源も切ってください。」 と
言わなければならないだろう。
だが、呪文の最後の言葉は、
昔から変わらず、おんなじだ。
「解凍はじめ」 で茹で始め
「解凍やめ」 で茹で上がる。
ニョッキ茹で職人は、
仕事柄、
なんとも ぶっちょう面をしているが
内心では、こう思っている。
ニョッキたちよ、
君たちが、明日の日本を背負う日が いずれ来る。
今は同じように見えるニョッキたちだが、
いつか自分色のニョッキにたくましく育ってほしい。
そのときに向かって、
「羽ばたけ、ニョッキたち」 。
さてさて、明日も呪文を唱える
「解凍はじめ」 で茹で始め
「解凍やめ」 で茹で上がる。
あ、ガンダムは机のうえにおかないでください。
え? 巨人? そ、それもダメです。
はい、女型でもです・・・