広い荒野に

ポツリと歌う

一人の好好爺


手には花を

手に手を取って笑う人は

彼に見向きもせず


一人歌い歩く彼の足は

既に棒よりも曲がらず

上げては下げてを繰り返す


彼の声は

街の騒音に掻き消され


彼の顔には

それでも遠くを眺める

澄み切った双眸が輝く


渇ききった喉からは

静かに小さな歌が流れて

周囲に自然に溶けていく


誰も気付かない彼は

今も旅をして

野に咲く薔薇のように


当たり前のように幸せを振り撒く