壁が一枚ここにある。
壁と言っても硬くはなくて、すり抜けられる透明な壁だ。
分厚い水で作られたようなそれは、
ゆっくりと僕の周りを囲んでそして、
のろりのろりと迫り来る。

対する僕はその重みに潰されないために、
随分昔に、壁抜けを始めた。
幸いにして、僕は息を止めていられて、今も死なずに生きているけど、
水の壁には終わりがなくて、
ひたすらもがくこの僕を、
あざ笑うように囲い込む。

周囲には見えない、冷たい壁が、
しかし確かに存在していて、
僕の温度を奪い去る。

あなたはどこまでも冷たくて、
僕はどこまでも冷えていく。

冷めているのは体か、心か。
僕と壁、体と心、2つの温度のその差異が、
僕の全てを揺さぶりかける。

出来ることならこの身の全て、
消してくれたら苦しくないのに。

息苦しい水の壁。
それが僕の見る世界の全て。