それは哀しい夢だった。
イメージは白い海で、
海と私の間にはあなたが立っているの。と彼女は言う。
海は幾度となく打ち寄せるけれど、
あなたの足を濡らすことはないの。
あなたは小さな蟹を見付けて、
それをつまみあげようとするんだけど、
それはあまりに可哀想だから、
私はあなたを止めるしかない。
段々と海の向こうが見えてくるの。
船や、ヨットや、民家があって、
だけどそこにはだぁれもいない。
だから私はそこに行くんだけど、
君が来るとそれらに近付くことができないから、
私は一人で海にいかなきゃいけないの。
…彼女は歌うようにそんなことを言う。
哀しい笑顔で彼女は語り、
僕は静かに、笑ってそれを聞いている。
座っていた彼女が立ち上がる。
もう行くの?と聞こうとして、
声が出ないことに気付く。
彼女は笑って、
慌てない、慌てない。
それだけを言って笑顔になる。
最後に一度握手をした。
そして彼女は店を出ていく。
彼女は僕の夢を見て、
僕は彼女の夢を見れない。
そして僕はぬるくなったコーラをすすって、
そこで、今日は目が覚めた。
彼女がどんな人だったのか、
僕とどんな関係にあったのか、
現実の僕には、検討も付かなくて、
もう一度会いたいと願っても、
それはきっと、叶わぬ夢で。
ただ一つ、
最後の手のぬくもりだけを忘れずに。
今日は今日を歩いていく。
そんな今日の、夢物語。